第13話「策士とその後の展開」
ドラゴン管理局の応接室で、ザイド・シャドウは大げさなため息をついていた。窓の外では、いつもと変わらない風竜の影が街並みの上を悠々と滑っている。
「まぁ、こんな展開になるとは」
机の上には、新たな契約書が広げられていた。ドラゴン管理局特別研究員としての辞令。そして、借金返済の新たな条件。
「これでいいんですね?」リリア・クレメンスが確認を求める。「原竜の研究データと引き換えに、借金の80%を免除。残りは、研究員としての給与から分割で」
「ええ」ザイドは軽い調子で返す。「随分と良心的な条件です。本当にいいんですか?」
「当然です」リリアの声は厳格さを保ちながらも、どこか安堵の色を帯びていた。「原初の力と守護竜の加護を融合させる技術。これは、新時代への重要な一歩になる」
バルド・アイアンは、黙って窓の外を見つめている。戦槌「断罪」は、もはや以前のような不穏な振動を放つことはなかった。
「それで、薬屋は?」
バルドの質問に、メイベル・アポセカリーが答える。「再建することになったわ。今度は、ドラゴン管理局公認の研究施設として」
彼女の手には、父の研究を引き継ぐ決意が込められた新しい実験ノートが握られていた。
「相変わらず面倒な展開ですね」ザイドは椅子から立ち上がる。「さて、これからは賞金稼ぎの仕事と研究員の仕事、両方になるわけですか」
「ええ」リリアが頷く。「あなたたちのコンビは、この新しい時代に必要な存在です」
窓の外で、地竜の群れが風竜の導きに従うように飛行していた。原初の力は、もはや脅威ではなく、新たな可能性として受け入れられつつあった。
「バルドさん」ザイドが相棒に向き直る。「これからも、面倒をかけることになりそうです」
「......うるせぇ」
しかし、その返事には確かな信頼が込められていた。
夕暮れの街並みを見下ろしながら、ザイドは静かに計算を始めていた。これからの展開、新たな研究、そしてまだ見ぬ冒険。
全ては、また新しい物語の始まりなのかもしれない。
窓の外で、風竜の影が夕陽に溶けていく。その翼の下で、新たな時代がゆっくりと動き出そうとしていた。
(了)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます