第8話 我はやはり人気者!

 早速スターの作ってくれたお面を使って接客とやらをしてみよう!


 またしても客が店に入ってきた。今度は親子か。父親が男の子と手を繋いで中へと入ってくる。


 というより、さっきから客がかなりの数入ってくるな。ミルの店はかなり人気なのだな。


「いらっしゃいませ!」


 我はスターのお面を信用し、自信満々に声を張る。


 子どもが相手となると、接客の難易度は上がる気がするが、果たしてどうか!?


「うわ〜! 可愛い!」


 なんと、子どもは我を可愛いと言ったのだ!


 か、可愛い……かっこいいと言ってもらいたかったのだが……


「あ、すいません〜、勝手に動いちゃだめだろ」


「パパ、ごめんなさい」


 ほう、なんとも素直な子よ。


 それにしても、我は一つ疑問に思ったことがある。


「お主、ここは武器屋で、子を連れてきては危険ぞ? なぜ子を連れてきているのだ?」


 すると、父親は我に申し訳なさそうな顔を向けた。


「すみません……この子がどうしても剣を見たいと言って聞かないので、少し見せてあげたいと思って来たんです」


「なんだ、買わぬのか……」


 我は、ようやく初めて接客が成功すると思っていたのだが、買わぬと知ると一気にやる気がなくなってしまった。


 すると、隣にいたミルが我に話しかける。


「グラディ、そう落ち込まないで」


 そして、ミルは父親に対してある提案をする。


「うちでは、本物の剣だけじゃなく、振っても切れない安全な剣がありますよ! せっかくなら見てみますか?」


 ほう、切れぬ剣とやらがあるのか。だが、それは剣と言えるのか? 我は疑問に思ったが、父親はその提案に乗り、首を縦に振った。


 ミルが奥から箱に入った小さめの剣を持ってくる。


「どうですか? これは刃渡りが小さく、軽い素材で造ってる いるので、振ってもお子さんに危険はありませんよ!」


 ミル……さすが経営者とだけあって、客に物を売る技術が高いな。


「本当だ! これなら息子も喜びます! ぜひ買わせてください!」


「はい! ありがとうございます!」


 ミルの話術によって、親子に剣を買わせることが出来た。


「ありがとうございました!」


 ミルが親子に向けて、礼をする。


「ほらグラディも! お客さんに言わないと!」


 そ……そうか、買ってくれた客には感謝を述べねばならぬのだな!


「ありがとうございました!」


 我は大きな声で感謝を伝える。すると、店から出ようとする子どもが、我の方を振り向いて笑顔を見せた。


「可愛いおじさん! またね!」


 か……可愛い……ま、まあ、悪い感じはせぬな。


「グラディ、人気者じゃ〜ん!」


 ミルが我の体をひじでツンツンと突いてくる。


「は、はっはっは! やはり我は人気者だな!」


 それにしても、やはりこのお面にはものすごい効果があったな。あとでスターに礼を伝えに行かねばな。


 こうして我は、初めて接客を成功させることが出来た。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る