エピローグ

 シュウが青春の思い出を掘り起こしてしまったのは、久々に帰省した実家の倉庫で見つけたジッピィのせいだった。

 あれから結局、あんまりジッピィは乗らなくなったんだよな。

 一連のその後は、なんやかんや大変な目にあったのは覚えている。 

 結局、学校では1時間目にして眠気が限界に達し、意識を失うとすぐに担任から愛のご鞭撻を賜ったり、家に帰ってもいつの間に消えてしまった兄貴が残したであろう夜の冒険にまつわる禍根、母さんから改めてこっぴどくお叱りを受けてしまったり。

 父さんは遠くからその様子を微笑ましそうに見ていたのもしっかり覚えている。

 ある意味、一番の戦犯は父さんなのに。

 そういえば、その日の晩に出してくれたミートグラタンが、びっくりするほど美味かったんだっけ。

 ・・なんでこんな話ばっかり思い出すんだ。

「父さん!このバイクなんていうんだ!?」

 ハッと意識を取り戻す。

 俺の息子のジュンが目を輝かせて俺に尋ねている。

「このバイクは「ヤマハのジッピィだな!ホント懐かしいよ!」

 優しく答えようとするイケパパの俺を押しのけて、俺の父さん、ジュンのじいちゃんが相も変わらずに大きな口を開けて答える。

「じいちゃんは物知りなんだなあ!」

「そうだろう!ワシはジュンの父ちゃんより物知りなんだぜ!」

「・・・」

 俺は小さくため息をついた。

 まったく、かなわないな

 あの日と変わらず、エゾゼミの鳴き声と共に夏空はカラッと澄み渡っていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ジッピィ 佐藤 眞佐 @mon-bow

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ