第13話 サンプルシナリオ「領主の指輪」 再びロット・ウォールの視点
ラッカ村の冒険者達が館の玄関を叩いたのは、仕事を依頼した翌日の昼過ぎだった。
私を呼びに来たメイドへ返事をし、応接室へ向かう。
応接室で見た彼等は、僅か一日の間にずいぶんとボロボロになっていた。
光の女神の神官の姿をした青年が無言で指輪と金貨をテーブルへ並べる。指輪を確認すると、確かにウェイラン様が王から下賜された指輪だ。
「確かに依頼した指輪だ。取り戻してくれて感謝する。」
礼を述べると全員の表情が心なしか緩む。ホッとしたのだろう。
しかし一行の戦士2名の鎧は大きく凹んでいるところもある。そんな大捕り物だったのか?
どのような顛末だったのかを訊くと、ツェッペリンと名乗る青年が説明を始める。
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成程、南西の洞窟は使用予定がないので設備などを引き上げた後 放置状態になっていたが、トロールが棲みついていたとは。
砦の近くにそのような脅威があるのは望ましくないな。
仮にモンスターが棲みついていなくとも、良からぬ者が良からぬ事に使うのは避けたい。
となると砦から兵を何回か派遣し、洞窟の再整備・巡回警備などが必要になるな。
ウィンデイル砦の領主を支える者として、意識の隅で対策を考え始める。
本人達は気付いていないようだが、指輪を取り戻すほかに砦の周囲の脅威を除去・報告してくれるとは。
改めて礼を述べ、約束の報酬を渡した後に提案をする。
「もう2日、砦に宿泊して行かれよ。費用は私が持つ。そしてその間に砦の鍛冶場で、各々の防具の修理・剣の研ぎ直しをしよう。」
この提案に一行は喜んで謝意を示す。
今回の一件で、彼等はウィンデイルひいてはレドワースに有益な人材であることが分かった。と言ってもまだ「有益な人材の候補の候補」くらいだが。
この程度の支援はしておいて損はあるまい。
彼等が成長し真に「有益な人材」になるようであれば、このようなささやかな投資に対する十分なリターンとなるだろう。
ウェイラン様や私が既に支援している「有益な人材」のリストに、新しいひと組が書き加えられる。
これからどのようになるのか楽しみだ。
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