テーマ:日陰




あんまり寒くないなあ。


講堂に集まる時、日陰で待機することになるのが

わかっていたので、相当寒いことを覚悟して

ヒートテックに裏起毛のアンダースコート、

靴下は5本指と普通のの二枚重ね、

腰とポケットにカイロを装備した成果が出てる。


ふふん、予想と対策は良い結果を生み出してくれる。

こういうのは勉強と同じだ。


うむうむと一人で頷いていたとき、

ふと前に座っている子の指先が見えた。


指先青いじゃん。


驚いて、肩を叩くとその子が振り返る。

唇を見ると紫だ。

見るからに冷えてることがわかる。


「え?保健室行く?」



先生を呼ぼうとしたら止められる。

曰く、今朝寝坊して急いでいたから

薄着で来てしまったらしい。


迂闊だ。そんなことでどうする。


「ほら、地球温暖化であったかいやろ?

だから大丈夫かな?って…」


こんな寒いのは計算違いやーと笑う彼女に

少し呆れて少し受けた。


いやいやいやいや、何言っとんの?

青い顔してボケなんや!



しょうがないな、情け心を出して

ポケットのカイロを握らせる。

自分は何重にも対策してるから

ひとつなくても大丈夫だ。



「あかんよ、寒いよ?」



自分の方が明らかに寒そうなのに断ろうとするので

これは自分も何かボケないと受け取らないかもなあと

思っていたので、なんとか捻り出す。



「お題館様、これを…」

「おお、山吹色…やない。

四角くてほかほかのお菓子よのう」

「お返しはほかほかの肉まんで…」


越後屋よ、そちも悪よのう。


よし、乗ってくれた。


渡したカイロはありがと、の言葉と共に

彼女のお腹あたりにしまわれ、

学校帰りには肉まんが地盤のお腹にしまわれた。




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