ここは冷たい宇宙

ここは冷たい宇宙

ここには死しかない。人が入ればねじれて弾ける。花火みたいで綺麗。蜜柑が入ればシャーベットになって美味しい。ヒツジはめちゃくちゃに毛が生えて私を温めてくれる。ソファは暖かく眠りを与えてくれる。ふわふわ浮かんで歩かなくてもいいから疲れない。背骨が伸びて背も伸びる。でも私はずっと子供のまま。ここには死しかない。


暑く口内がざらりとする砂漠

暑い、暑くて眠ることもできない。煩わしい暑さについうんざりして寝そべりながらよだれを垂らしながらぼんやりとしてしまう。このまま砂に埋まってしまえればいいのに、と思う。何もすることが無くてただ暑い何もすることが無いから余計に暑い。空には鳥もおらずただ大きな雲がゆっくりとどこまでも流れていく。意識は既に掠れている。光りの中に包まれて砂に融けていく。


海には船が一艘浮かんでいる。僕はそれをぼんやりと見ている。船には二人、親と子がいる。泣き叫んでいるのは母親で娘はあきらめた様にだらりとしている。或いは死んでしまっているのかもしれない。どこまでも広がっていく地平線に一つの異物。僕はそれをただ見つめている。娘を海に捨てた母親は頸を刃物で切ったのか鮮血を噴き出しながら海に落ちた。2人は浮いてくる事無く、船が一艘とり残された。凪は静かに僕を見ている。何もしなかった僕を恨むように。静かに静寂は僕を責めている。


森が燃えている。轟轟と緑を茂らせて、その努力を炎に変えて、白く黒い灰を風に乗せていく

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