第2話
てっぺんから遠くの市内のビル郡のネオンが見えた。赤・紫・黄色……。光輝いている街に私は何の感慨も抱かなかった。別世界を見ているようだ。
最近建てられた高層マンションがビル郡から飛び抜けて、目立つ。
もう人は住んでいるようで、窓の光がまばらに散らばっている。
あの高層マンションは値段も桁違いに高いという噂だった。
あの光はセレブが発しているのかと思うとますます白けてしまった。
焦点を遠くから、近くに戻すと、良く似た一戸建てが並んでいる。そのなかにポツンと
公園に入り、くたびれた木のベンチに腰をおろす。
今が町中、夕食時なのだろう。耳を澄まさなくてもあちこちから生活音が聞こえてくる。
『早くごはんたべちゃいなさい!』
という若いママの声。『え~!?』やら『ギャー!』やら小さな子ども達の悲鳴。少し遠くから『うぇぇぇ~ん!!』と赤ちゃんの雄叫び。『もっと食べなさいよ!あとでお腹空いても知らないから』といういかにも母親的なおばさんの声。
いつもは子どもの声にはイライラしないのだが、今日はやたらと耳について、気付けば公園から逃げるように去った。
家に帰る気にもなれず、あてもなく歩いていると、気分はますます下降して、この世界のどこにも自分が居ていい場所なんてない気がした。
それでもフラフラと歩いていると、ある一軒家の二階の窓から歌声が聴こえてきた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます