第2話

てっぺんから遠くの市内のビル郡のネオンが見えた。赤・紫・黄色……。光輝いている街に私は何の感慨も抱かなかった。別世界を見ているようだ。

最近建てられた高層マンションがビル郡から飛び抜けて、目立つ。

もう人は住んでいるようで、窓の光がまばらに散らばっている。

あの高層マンションは値段も桁違いに高いという噂だった。

あの光はセレブが発しているのかと思うとますます白けてしまった。


焦点を遠くから、近くに戻すと、良く似た一戸建てが並んでいる。そのなかにポツンとさびれた公園があり、そこへ向かって歩いた。


公園に入り、くたびれた木のベンチに腰をおろす。

今が町中、夕食時なのだろう。耳を澄まさなくてもあちこちから生活音が聞こえてくる。


『早くごはんたべちゃいなさい!』

という若いママの声。『え~!?』やら『ギャー!』やら小さな子ども達の悲鳴。少し遠くから『うぇぇぇ~ん!!』と赤ちゃんの雄叫び。『もっと食べなさいよ!あとでお腹空いても知らないから』といういかにも母親的なおばさんの声。


いつもは子どもの声にはイライラしないのだが、今日はやたらと耳について、気付けば公園から逃げるように去った。


家に帰る気にもなれず、あてもなく歩いていると、気分はますます下降して、この世界のどこにも自分が居ていい場所なんてない気がした。


それでもフラフラと歩いていると、ある一軒家の二階の窓から歌声が聴こえてきた。





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