5.決着(7)

彼方から勇者さまの呼び声が聞こえ来るようだった。

手足を固く縛り上げていた蔓の力が、急に失せたように感じられた。

蔓から解き放たれた身体が、すっと落ち行くように思えた。



ふと気が付くと、わらわの顔を勇者さまが覗き込んでいた。

どうやら、わらわは勇者さまに抱き抱えられているようだった。

「あ……、あれ?」と、朦朧とした口調にて勇者さまへと語り掛ける。


「良かった、本当に良かった……。

この場は引きましょう!」


囁くように告げた勇者さまは、わらわを抱き抱えたままで駆け始める。

勇者さまにかき抱かれたまま、わらわは辺りをぼんやりと見遣る。

賢者さま、そして戦士さまも勇者さまと並んで駆けていた。


空はすっかり夜の色を湛えていた。

濃紺の夜空には星が瞬きつつあるようだった。

辺りから響き来るのは風の音だけであって、つい先程まで地を満たしていた不死者どもの呻き声は露ほども聞こえなかった。

安堵の念を抱いたわらわは、勇者さまにかき抱かれたままで再び我を喪った。

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