チームで協力! コラボ配信!
オーディションの次なるミッション、それはチーム戦。候補者三名に加え、協賛企業のVtuber一名が加わり、一つのチームを作る。そして、二時間の配信を行い、その内容で評価が下される仕組みだ。
視聴者はこれまで通り、特設サイトで個人への投票を行うことができるが、それに加えて、どのチームが最も面白かったかを選ぶ投票も新たに設けられている。さらに、配信中の同時接続数や高評価の数も審査の重要な指標となる。
配信の内容は審査員も確認し、チームの中で特に目立った活躍をした候補者にはMVPの称号が与えられる。このMVPに選ばれた者は大きく順位を上げることができ、オーディションの行方を左右する重要な要素となっていた。
藍瀬アイラのチームメンバーは、リズ・シンフォニア、
企画の内容を決めるミーティングはリモートで行われ、その様子を録画することになっていた。予定より三十分ほど早くミーティングルームにログインした愛津は、一番乗りだった。
ぼんやり画面を眺めていると、ふいに清楚で落ち着いた声が耳に届いた。
「よろしくお願いします」
リズ・シンフォニアだった。透き通るような白い肌とピンクの瞳、エルフのような尖った耳を持つアバターが、彼女の柔らかな声にぴったりと似合っている。
「こちらこそ、よろしくお願いします」
予定の十五分前という早めのログイン。彼女の礼儀正しい様子に、愛津は一つ息をついた。最近の若い子はしっかりしてるなぁ。
残る二人がログインしたのは、予定時間ギリギリになってからだった。
「よろしくお願いしまーす!」
明るい声とともに画面に現れたのは堂道ミチル。黒髪のツインテールのアバターで、重度のVtuberオタクを自称する候補者だ。
「わー、本物のリズ・シンフォニアちゃんだ! めっちゃ嬉しい~! リズちゃんの歌、大好きなんですよ! 一緒のチームとか、マジで運命って感じ!」
登場時から高かったミチルのテンションは、次に現れた現役Vtuber、蘇瑪麗の登場でさらに高まった。
「ソネちゃん! めっちゃファンです!
「え、すごい知ってくれてる! ありがと。広東語喋れるの?」
「いや、昨日翻訳機で調べました! 発音あってます?」
「だいたい合ってるよ〜」
「いやー、ソネちゃんのゲーム実況、本当に面白いんですよ! 私、いつも寝る前に見てるんです!」
ミチルは瑪麗への称賛を惜しまない。ファンであると言われて瑪麗も満更でもないようで。
「寝る前には向かないでしょ。私けっこう、うるさいよ〜」
笑いながら返し、二人はおしゃべりが弾むようだ。
だが、リズの様子は違った。画面の端で静かに視線を落としている。口を開きかけてはやめ、タイミングをうかがうような様子。
愛津が声をかけるとリズは、はっとしたように顔を上げた。
「いえ、大丈夫です。ただ……そろそろ配信の内容を具体的に決めた方がいいのではないかと思いまして。……そんなに時間ないんだから」
言葉は静かだが、かすかな苛立ちが滲んでいた。盛り上がりに水を差すのをためらっていたのだろう。
「確かに、配信の企画を詰めた方が良さそうですね。どういう配信にしましょうか?」
ここは年の功を発揮する時! 愛津は会議のまとめ役を買ってでることにした。トーク企画がいいのではないかという瑪麗の意見を拾いながら、リスナーに個性が伝わるテーマをいくつか提案。座談会をすることにした。リズも同意し、ミチルの明るいエネルギーをうまく巻き込む形で会議をまとめていく。
「……まとめ役は大事、だよね」
その呟きは、愛津の耳には届いていなかったが。
※※※
「大家好! ミラステ特別配信、ソネちゃんのチームは座談会をやってオーディション参加者の三人を、もっと知ってもらう企画にしたよ! クロノ先輩の枠に負けないように、盛り上がってこうねー!」
瑪麗の明るい声とともに、配信がスタートした。人気Vtuberが出演するため、普段のオーディション配信より多くの視聴者が訪れる。
おねもり「オーディションうまくいくといいな」
penguean「😆😆😆」
ハクメンV「ソネちゃん頑張れ〜」
にんにん丸「ソネちゃんがお姉さんキャラなの新鮮www」
瑪麗の視聴者らしきコメントがたくさん流れていく。
「それでは、まずは簡単な自己紹介からいきましょう!」
あらかじめ決めておいた順番通り、最初はリズが静かに口を開いた。
「こんにちは、リズ・シンフォニアです。普段は歌配信を中心に活動していきたいと考えています。今日はこの座談会を通じて、皆さんと少しでも近づけたら嬉しいです」
「みんなー! 堂道ミチルだよー! 今日は全力で楽しむから、みんなも一緒に楽しんでね!」
「藍瀬アイラです。今日はリスナーの皆さんと楽しい時間を過ごせたらと思います。よろしくお願いします」
配信は順調に進んだ。話し合いでは引っ込み思案な印象だったリズだが、本番に強いタイプのようだ。例えば、配信で大事にしたいこと、というテーマで
「私は、歌を通して皆さんに癒しを届けたいと思っています。アイラさんも歌のテストの時、一緒でしたよね?」
このようにアイラやミチルに話を振ってうまく盛り上げている。
にんにん丸「リズちゃんて話題になってた歌うまの子か! 切り抜き見た」
おねもり「そういや、リズちゃんとアイラちゃんは繋がりあったね」
視聴者も盛り上がっているようだ。人気者にはそれだけ実力があるということか。
次に『好きなエンタメ』というテーマで話が進む。ここでちょっとした事件が起きた。発端はリズの何気ない発言だった。
「そういえばミチルちゃん、FPSをよく見るって言ってましたね。瑪麗さんのことも詳しかったし、ぷろげーまーさんのことにも詳しいですよね。私、男性配信者さん全然見ないから」
「いやいやいや、拙者それほどでもドュフフ……っておいー! 私が男好きみたいやないかーい!」
ミチルは明るく受け流したが、配信にはぎこちない空気が流れてしまった。オーディションの審査員筆頭が男性Vtuberである以上、男性配信者をよく見ることは、ただの勉強熱心と捉えられてもおかしくない。しかし、Vtuberをアイドル視し、異性との関わりを嫌うファン層も存在する。歌やダンスの審査がある以上、アイドル的要素を求められるであろうVtuberオーディションでは、リズの発言は巧妙にミチルの印象を下げようとしているようにも映る。
心によぎった考えを脇に置いて、愛津は流れを修正する方法を考えた。リズの本心はわからないけれど、この配信はリズもミチルも、もちろんアイラも、全員が視聴者に良い印象を残すことが最適解。そして何より、視聴者に楽しんでもらうことこそが、オーディションを勝ち抜く一番の近道だ。
「……そうだ、ミチルさん、最近のソネちゃんの配信で一番好きな配信はなんですか? 皆さんも知りたいですよね!」
視聴者の多くは
penguean「🤔🤔🤔」
ハクメンV「アイラちゃん、ナイスアシスト」
にんにん丸「まあ最近のソネちゃんは大人しいから大丈夫(直近でポンやらかしたとかいえない)」
愛津の狙いが功を奏し、配信は盛り上がった。アイラこと愛津・ミチル・リズのチームは、チームごとの評価は十チームの中で五位。だがアイラはMVPに選ばれたため、個人順位十位でチーム戦を突破した。
だが、ミチルは惜しくもここで脱落になった。アイラのオーディション用のアカウントにミチルからのDMが届いた。
「悔しいけど、一緒のチームでお話しできて嬉しかったです! アイラちゃんがうまくまとめてくれたから、楽しく配信できました。絶対デビューしてくださいね! アイラちゃんのオタク第一号は私ってことで!」
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