第25話 王女に全てバレる2
目の前では王女がチキンレッグを美味しそうに食べていた。
「ホロホロと崩れてしまうような柔らかさ!それを引き立てるようなスパイシーなスープ!凝縮された美味しさが体に染み渡りますわ!」
アナスタシアは料理に感動しているようだ。一方、俺は王女に何を言われるか気が気でなかった。
つい先ほど、ドロシーと一緒に電子レンジを使っていたところを王女に見られてしまったのだ。その時は慌てて電子レンジのことを魔道具だと誤魔化したが、王女は「やはり報告通りですわね」とつぶやき、まずは料理を出すように促してきた。
報告通り、という意味はよく分からなかった。しかし、屋敷の中で魔道具を開発しスキルを使って自分たちだけが美味しい料理を食べ、快適な生活をしているところを見られたのは事実だ。王族の人間にそれがバレては何を言われるか分かったものではない。
「さて、本題に入りましょうか」
王女はチキンレッグを食べ終えると、小声になった。
「ダイスケ様。以前から思っておりましたが、貴方には不審な点が多くございます。そもそもこの国は慢性的な食糧不足で普通の人間は肉などという高級食材を口にすることなどできません。しかし、この屋敷では先ほどのように肉料理が出てきました」
やはり王女は、俺のことを探るために来たのだ。以前はなんとか誤魔化したが、今の状況は第三者から見ても怪しすぎる。もう誤魔化せる自信はなかった。
「そして、この屋敷は“魔獣の森”の近くにあり、魔獣が頻繁に出現するはずです。なのに貴方は魔獣を恐れるどころか、ウルフやゴブリンを手懐けています。加えて先ほどはこの国には存在しない魔道具で異世界の食べ物を調理していました。ダイスケ様、私に隠していることはありませんか?」
バレてしまっては仕方ない。実は【業務用スーパー】というスキルを持っていて、異世界から食料を取り寄せることができる──そのことを正直に説明した。
「なるほど。でも話はそれだけでは終わりませんよ」
てっきり【業務用スーパー】について興味があるのかと思ったらそれは違うらしい。
「問題はそれらを使ってダイスケ様が何を考えているか、です」
そんなことを言われても俺はただ平和にスローライフを送りたいだけだ。他には何も考えていない。
「当ててみせましょう。魔獣たちを更生して従える。騎士団や魔術師団と何度も密会している。見たこともない魔道具で実験をしている……それらの目的は──」
「ズバリ!貴方は国家転覆を狙っておりますわね?」
え?国家転覆?
「知らないふりをしても無駄です。なぜ騎士団や魔術師団の有力者を引き抜いて一緒に暮らしているのか。なぜ魔獣たちを懐柔して生活しているのか。そして皆に食事を分け与えて親睦を深めているのか。その謎がついに私は理解できました」
この王女、ずっと俺のことを見ていたのか。しかし、王女は忙しいはずで四六時中俺を監視しているはずはない。
「話はこちらにいるベルトランからすべて聞いております。実はダイスケ様が壮大な計画をしているのではないか?私が今回この屋敷に来たのもその疑問を確認するためです」
王女が言い終えるとその後ろに控えているベルトランを見る。本人は涼しい顔をしていた。
「実は私も同じことを思っていたのですわ。だから、ダイスケ様の計画のお手伝いをしたいのです!」
私も同じことを考えていた?王女が国家転覆を考えていたということか?
「ダイスケ様、ここは一緒に協力してセデリア国に反乱を起こしましょう。この腐ったセデリア国を再建するのです!」
アナスタシア王女の演説に皆は拍手を送っている。ベルトランに至っては感極まって涙を流していた。それにドロシーやクラリスも加わる。こいつらはなぜ、王女の話に感動しているんだ?
ふと見ると、イリスだけは王女の言葉に引きつった顔をしていた。ああ、よかった。うちのメイドだけはまともなようだ。
「それでは反乱の決行日を決めましょうか」
ここまで口を挟まずに黙って聞いていたが、俺はまったくそんな計画をしていない。
「残念だが俺はそんな無謀なことには参加しないぞ」
俺が目指すのは平穏なスローライフだ。この世界に来てやっとの思いで得られた充実した第二の人生。なのにそれを全て捨てて国家転覆をする?そんなのありえない。
そもそも俺には何のメリットもない。俺はこの屋敷で美味い飯を食べ、たまに畑を見たり森に行ったりしてのんびり過ごしたいのだ。そんな計画に参加するつもりはない。
「ええと、なぜですか?」
「なぜも何も、俺はそんな計画少しも企んでいないからな」
「でもクラリスとドロシーがダイスケ様は反乱を企んでいるのではないかと言っていましたが」
「え?」
「え?」
おいおい、こいつら全員その話を信じて俺が反乱計画を企んでいると思っていたのか?
ドロシーとクラリスを見ると、どちらも慌てて目を逸らした。なるほどな、お前らにはあとでしっかりと言い訳を聞いてやるからな。
でもまずは目の前の王女だ。こいつを納得させて俺はいつもの暮らしを取り戻そう。国家転覆?はあ?そんなものに参加するわけないだろう。
そう思っていたのだが、数日後俺は逆に説得され国家転覆計画に参加することになった。
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