「浪子燕青 鏢師行」あらすじ   天 蒸籠

 中国は北宋、八代徽宗きそう皇帝の時代。東北部薊州けいしゅうの山道を歩いていた一人の若者が、ならず者に囲まれた少女を見つけ、少林拳と擒拿術きんなじゅつを使って助ける。一見幼女に見える少女は十三歳の道士で、左目に「」を見ることのできる「浄眼じょうがん」を持つ「祝四娘しゅくしじょう」だった。少女はならず者たちを食い殺した道教寺院に巣くう魔物「猲狙かっしょ」を、飛刀と双剣「東王父とうおうふ」「西王母せいおうぼ」を使って倒す。そこに現れた少女の師父「羅真人らしんじん」に伴われ、瞬間移動の仙術「縮地法しゅくちほう」で二仙山に転移した若者は、かつての先輩である「入雲龍公孫勝にゅううんりゅうこうそんしょう」に出会う。

 若者は、後に「秘宗拳ひそうけん」の開祖となる梁山泊一の色男で、中国四大奇書「水滸伝すいこでん」の武将のひとり、天巧星を宿星とする「浪子ろうし燕青えんせいであった。燕青は羅真人の頼みを受け、かつて梁山泊と戦った「祝家荘」の忘れ形見である「祝四娘」の鏢師ひょうし(護衛)として、「魔物退治」の依頼を受けることになった。

 翌日二仙山の少年道士「張嶺ちょうれい」に稽古をつけてやったのち、青州観山寺を目指して二人は旅に出る。途中文昌の千住院で白馬を手に入れ、康永こうえいの町中で、老人と若い女性に言いがかりをつけ、女性を拉致しようとする町の悪党どもを目撃し、祝四娘が仙術を使って悪党どもを懲らしめる。

 さらに康永の遊郭「金夢楼」では、四娘が道教仙術を使って花魁おいらん王扇太夫おうせんだゆう」の部屋に出る不思議な白い影の謎を解き、その後燕青が襲いかかる先ほどの悪党やその手下、遊郭の若いを切り倒し叩きのめして王扇太夫を足抜けさせ、縮地法で二仙山に避難させる。

 旅は続き、かつて山賊のすみかだった「飲馬川いんばせん」の砦で周侗しゅうとうという老人に出会う。周侗はかつて中国最大の悲劇の英雄「岳飛がくひ」の師匠だった。

 その周侗から拳法の技をひとつ習い、二人は目的地である観山寺かんざんじに着く。少林拳の達人「常廉じょうれん」和尚が住職を務めるこの寺で、あるときから経堂で不思議なことが起き始めた。中で僧侶がおびただしい精をもらして死んでいたり、近づくものが淫らな気持ちになったりして困っていたのだ。祝四娘が祓いに入ると勝手に扉が閉まり、怪しげな美人画から抜け出た半人半獣の魔物「己五尾きごび」が襲いかかってきた。己五尾は実は古代中国の毒婦「妲己だっき」の正体である「九尾の狐」の尾で出来た筆で描かれた絵が妖力を持った魔物だった。高窓から救援に跳び込んだ燕青だが、己五尾の発する「淫気いんき」によって危険にさらされる。

 祝四娘の仙術によって追い詰められた己五尾は、祝四娘を経堂からはじき出す。残された燕青はなすすべがないはずだったが、ある行動によって逆に己五尾をこらしめ、己五尾は燕青の手下となる。

 祓いを終えた燕青は、乞われて観山寺の僧侶たちと仕合をすることになった。高弟「常慶じょうけい」と戦い、周侗に教わった「寸勁すんけい」で勝ちを得るが、常廉には破れ、自らの弱点を知り成長する。

 二人は一つ目の依頼を終え縮地法で二仙山に戻りつつ、次回の旅に思いをはせるのだった。

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浪子燕青 侠客行 天 蒸籠 @tenseiro60

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