まだ読んでない本を考えないように考える。
まだ読んでない本を考えないように考える。
その日、その時、その瞬間、偶発的に発動した好奇心のまま、書店でみつけた本を手し、秒後、吸い寄せられるようにレジへ向かい、なけなしの財産を投じてその本を購入する。あたらしい本、あたらしい物語、未知の世界を手に入れような気持ちなり、よしよしと、思いつつ、すぐに読むこともあるし、読まないこともある。いずれにしろ、すでにこの本は我が手中へにある、あとはいかようにも、こちらの気分次第となっている。はっはっは、この面白そうな本が、もはや、いつだって意のままのタイミングで読める。いっぽうで、そういった成功者としての状況を充分の享受する日々を過ごしているうち、また別の日、別の時、別の本屋で、別の好奇心をくすぐる本を出会うこともある。ああ、おもしろそうな本だな、ぜひ、読んでみたいな。
読みたいな、読むべきかな、読むべきだよ、読むべきだよ、そうかな、そうだよ、なら読むしかない、と、ちょっとした連続コンボ技めいた何かが、すべて美しくヒットしたような感動の果て、その本へ手を伸ばす。
あ、でもまだ、この前に買ったあの本を読んでいないよな、一ページも。
と、脳裏をよぎる可能性は捨てきれない。しかし、よぎっていないフリをする。いいや、あいつのことは、その―――いまは忘れよう、そう、あいつの話は、よせよ、脳。そして、新たな本を手にする。なーに、買ってしまえば、こっちのもの、あとはいかようにも、こちらの気分次第、となる。
そして、また買った本を読まずにいるうちに日々は過ぎ、ある日、ふらりと入った本屋でまた好奇心を刺激する本を出会い、買う。それを繰り返す。そうしているうちに、未読の本は自宅で積もり出す。だんだん、未読の本は居住スペースを圧迫しだす。でも、こう思う。まだ、大丈夫だろう。
その後も本を買う、自宅へ持ち帰る。積む。
積む。
積む。積む。積む。
積む。積む。積む。積む。積む。積む。積む。積む。積む。積む。積む。積む。積む。積む。積む。積む。積む。積む。積む。積む。積む。積む。積む。積む。積む。積む。積む。積む。積む。積む。積む。積む。積む。積む。積む。積む。積む。積む。積む。積む。積む。積む。積む。積む。積む。積む。積む。積む。
本は山となる。それぞれは、独立した一冊の本に過ぎない、しかし、本たちは、いつの間のか結合し、一体となって、日常生活空間を圧迫する。
いや、読むよ、読むからさ。ほんと、まじまじ、まじ。と、心の中で未読の本たちへ弁明するも。しかし、その夜は、けっきょく、ねむくなって、ねてしまう。カーテンを閉めないままねてしまう。そして、翌朝、本の山頂ごしに差し込む朝の光で目覚めたとき、それを見て、まだ夢うつつの頭で、こう考える。
そうだ、本屋を始めよう。
そう、積読は、そんな無謀な人生決定させる危険がある。
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