第5話 デンデンの家

 「雨も強くなって来たし。早く中へ入ろう。」

 「マーイ」

 アパートの中は暖かかった。マイマイは雨の中、かたつむり探しに夢中になっていたためずぶ濡れになっている。

 「マイマイ。タオル持ってくるから少し待っていてね」

 マイマイは笑顔でいる。よっぽど今回のかたつむり散策に満点したらしい。俺はタオルを一枚、マイマイに掛ける。

 「ガジガジ、マーイ」

 と言いながら頭をコチラへ向けて来る。しょうがない。拭いてやるか。

 「ガジガジでデーン」

 きゃはきゃはとはしゃぐマイマイ。

 「マイマイ。布団はあるか?」

 「あるよ。俊広のにおいがする!」

 「麻居。あんまり抱きかかえていたら、においが移るかもよ?」

 「マーイ」

 マイマイは布団と遊んでいる。いやぁ、でも困った。俺がマイマイに何もしないとは言え、年頃の男女。麻居のガードがゆるいのでこっちが心配してしまう。

 「どした?俊広」

 「マイマイ。他の男に連れられて変な事するなよ。俺だから成り立っているんだぞ?」

 「マーイ」

 と俺が言ってもマイマイは終始、笑顔だった。なんでかな。

 「さぁ、ご飯にしよう」

 今日のメニューは塩サバ定食。焼き加減で味が変わる。

 「美味しいマイ。この米も美味しいマイ」

 「おい、マイマイ。よく噛んで食べろよ」

 「噛んでるマイ。おかわりっ!」

 このマイマイはうちの米を全部、たいらげてしまうのだろうか。

 「旨い!俊広、相変わらず料理得意だね」

 「ありがと。麻居」

 

 

 

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