飯塚
10時少し過ぎた頃、高橋が先に入浴のためその場を離れた。飯塚と2人になると「将棋できるか?」と誘われ駒の動きしか分からないが、2人きりのためやるしかなく、事件の話しを聞きたかったが渋々行うことにした。てっきり将棋を黙々とやるものだと思ったら飯塚から話の続きがされた。
「高橋さんはまったく懸賞金なんぼだなんて、いい歳なんだからね。まっーたく。」
と、笑いながらいない高橋のことを言う。悪態をつくわけでもなく、2人の関係性が薄っすらと見えた。
「まあまあいいじゃないですか。いくつになってもお金は大事じゃないんですか?」
「まあそうなんだけどな、高橋さんにも高橋さんなりの考えがあるみたいで。」
「どんなですか?」
すると、飯塚は想像していたこととは反対に話に食いついてきたことに驚いたのか、枝野に興味を持ったのかどっちにもつかない渋い顔をして将棋盤から目を離し、じっと枝野の目を見つめて小声で話し出す。
「あんちゃん、誰にも言うなよ?高橋さん、こどもがいたららしいんだけどさらわれたらしいんだよ。ちっさいときに。それであちこちから金を借りて探したりビラ作ったりして必要なんだと、これが。」
飯塚が手で金のジャスチャーをする。
「それで懸賞金がどうのって話をしたんじゃないかね。大変なんだよ高橋さんは。二十歳のてき東北から身一つで上京してきたって苦労もんだよ、あの人は。」
「仲いいんですね、高橋さんと」
「そう仲いいねこの中じゃ。ここで知り合ってな。たまたま同郷出身でさ。まあ俺のほうがこっちにいるの長いけどな。出身っていっても生まれたのがあっちってだけで。高橋さんと会って何年ぐらいだろ?忘れちゃったな。これだから年寄りはな。」
「どこ出身なんですか?東北の。」
「おっ?興味あるんか?秋田だ。知ってるか?若いもん。どこにあるか。」
自分の言ったことに対しガッハッハと声を出して笑った。周囲のおばあちゃん達もこちらを見て、何事かとおもっているに違いない。もちろんここで働く職員も。そんなことはどうでもいい。
「飯塚さん、例の事件のことなんか知ってます?当時のこととか。犯人は誰かとか目星ついてたり。」
「やけに気にするね。なんも分からないよ。あっ強いて言えば、警察犬の動きが止まったっていう店。週刊誌とかもぞろぞろいて商売ならなくて閉めちまったらしいよ。そりゃー変な噂が広まればな。まあ事件のことならさっきも言ったけど、懸賞金のこと気にするぐらいだから高橋さんならなんか知ってるかもよ?聞いてみな?ほらちょうどでてきた。」
お風呂場の方を見るとドアからでてきたピアスをつけた高橋がいた。髪を乾かすようだった。ドライヤーで薄い髪の毛が風になびくとちょうど髪で隠れていた目元のホクロが大きく目立っていた。
「んじゃ俺風呂いってくるわ。」
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