開花のお知らせ

去年の7月より完成した、『荒濱沈殿』はもはや地域復興のシンボルとなっている。度重なる狂荒、『中ヘンプzö』によるテロリズムにより、多くの命が失われた荒濱で、今人々は何を想うのか……。


現在、高校3年生として受験を控える『荒御魂叮嚀』さんはこう語る。


「たしかに荒濱は一時期、被差別対象として、国中から後ろ指をさささ指されて来ました。特に『中ヘンプzö』により、多くの方々が肉味噌として壁に塗りたくられてしまったのは、とても悲しい事だと思います……。それでも、荒濱の人達はそんな不幸に屈しないと言うのを、『荒濱沈殿』を通して世界中へ発信出来るという事に、肉味噌として誇りに想います。」


彼は現在も壁肉味噌として、弓形腸壁の第二房で生活を余儀なくされている。

家族は第一房で、『荒濱沈殿』の土台を支えており、『荒御魂叮嚀』さんは、その吸収入を網目静脈瘤から受け取りなんとか耐えているそうだ。

壁肉味噌への国からの援助は打ち切られており、一部関係者からは不満の声も上がっている。

清掃作業員として、派遣された『ちめにおふれ』(仮名)さんの口からは緑泡が溢れた。


「ここの環境は酷い、なぶってもなぶっても肉味噌が減らない。その為に腹痛になっても、お上は何も下さらない。しまいには身体の左が蕩けて来てしまった、明日はない。」


弓形腸壁は、今年の1月に第十三房まで拡大しており、荒濱の約八割を占めているが、渦高く積もる弓形腸壁の中心に座する、『荒濱沈殿』へ登り詰める観光客は後を立たない。

政府は、不要不急の外出を控えるようにと呼び掛けているが、『荒濱沈殿』は既に多くの人々で、空気を送り込まれた猿の頭部のように膨れ上がっている。

開花は来年の9月頃と予想されており、多くの人が見守るなか、種子の拡散が期待されている。

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