廻り合う魂

@hanabimochi2020

第1話 異世界転移

 「~~~~・~~~~~」

 自分の名を口にすると、それに応答するかのように木々が揺れ、大地がうごめき、風が髪をなびかせる。

 いつも同じ反応をされているため、俺はそんなに気にはしないのだが、周りの連中はそうはいかない。

 なぜか俺のことを血眼で探し出しては、何かと理由をこじつけて処理しようとしてくる。

 暗殺者や冒険者、挙句の果てには、一国の軍隊までもが俺のことを亡き者にしようとやってくることもあったが、毎回のように返り討ちにしたり、王国までわざわざ出向いて国王を脅して、不可侵条約まで作らせたこともあった。


 そんな退屈な300年を過ぎたある日、ふと森のほうに目を向けると、一筋の光が出ていることに気づいた。 

 今までこんなことがなかったので物珍しさで見に行くことにした。深い森の中を進んでいくと、その光の下にたどり着くことができた。

 そこには、もともと大きな泉があった場所だった。

「これが残っているとは思わなかったな。それよりも、この光は何だろうか?とりあえず鑑定してみるか。」

 そうして俺は、鑑定魔法を使ってこの泉と光について鑑定してみることにした。だが、泉に関しては鑑定結果は出たが、いつまでたっても光についての鑑定結果が出ることはなかった。

「、、、まさか、これがあの別世界へつながるゲートだというのか?」

 俺に魔法を教えてくれた師匠が言っていた、究極にして禁忌である平行世界移動(パラレルワープ)だというのだろうか。

 あいにく、俺には真偽を確かめる方法がなかったため、どうすることもできずに、悩みに悩んでいた。

「、、、悩んでいたってしょうがねぇか、ここは男気を見せますか。」

 そういって俺は、その光に飛び込む準備を始めた。俺のモットーは「とりあえずやってみよう」の精神でやっていくため、後のことを考えずにやって師匠に怒られたことは何度もあったが、それでもその魔法に対する意欲には師匠は褒めてくれた。

 だからこそ、未知なる世界にどんどん飛び込んでいこうと決めていたのだ。

「よしっ、準備はできた。あとは自分の飛び込むタイミングだな。」

 というのも、師匠が教えてくれたことには、飛び込むときの周りの環境や時間、光量、魔力の質によって、出口が変わってくると言っていた。

 なので、鑑定魔法で周りの環境や時間、光量、魔力の質を見極め、飛び込むタイミングを見極めることにした。

 俺には、どのタイミングで飛び込めばいいかは知らないし、どの世界につくのかなんてなおさらわからない。

 だが、そのわからないが俺の好奇心が刺激されていく。

 師匠は、「自分が思ったタイミングで飛ぶといい。その光は自分を本来の場所へと導く神からの知らせだ」と言っていた。

 そして、すべての鑑定結果が観測上の最高値をたたき出したので、そのタイミングで行くことにした。

 その光の中は、案外心地よかった。

 俺は、その光に身を任せるように目を閉じた。

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