第53話
聖皇国での話し合いは割れに割れた。
1つは到底受け入れられない組。
我らが戴くのは唯一水の女神、ルターニア様のみ!
と言う狂信派グループ。
1つは主神は変えなくて良いなら女神の調子が整うまではその新興神に頼っても良いのではないか、と言う穏健派。
もう1つはどちらも良いとこ取りしたら良くない?
新興神を受け入れる振りして、その神の力をそのまま我ら女神様に献上すれば万事解決!なサイコパス組が立件して話し合いは紛糾する事となった。
元々、水の神が力を付けて現世に干渉するまではこの国も普通に皇帝をトップとした組織であったのだが、神が現世に過干渉した結果、今は皇帝の上に水の女神が据えられていると言う歪な組織図で成り立つ国と化していた。
過干渉と言っても今までは皇帝との意見が大きく異なる事が無かったので上手くいっていただけであり、正に今現在で意見が割れてしまい険悪なムードが漂っていた。
「これは女神様自身の為でもあると思っているのですがね」
と、ため息混じりに奏上するのは皇帝の直ぐ下に位置する宰相のセルゲイである。
奏上は宰相がやっているが彼の意見は皇帝の意思である。
・・・直接皇帝が言わないのはトップ2人がいい争うのは良くないよね、と言う政治的観念からである。
皇帝側からしたら穏便に新興神を頼れば良いじゃないか。
わざわざ禍根を残す様なやり方を国としては取りたく無いぞと言う至極真っ当な意見である。
女神側からしたら、そんなのは自分に対する裏切り行為である。
力が足りないから長い間修行する?
そんなのある所から奪えば早いでしょ。
それに私の力になれるなら、その神も本望よ!
と本気で思っている神と、神がそう言われるならそれこそが正義だ!な層が少なからず居て拒否組もここに吸収されたらいささか皇帝側が不利であった。
しかし、そもそも神の意見は聞いてないよ、申し出なので皇帝さえ同意してしまえば契約は成立してしまうのだ。
———女神は焦っていた。
今までは慈悲深く優しい女神として人間と接していた為、雰囲気をガラリと変えて来て国の今後を考えれば明らかに愚策な計画を口にする女神に、皇帝としては強い忌避感を感じずにはいられなかった。
同じ意見の時の狂信者達はとても頼りがいのある仲間であったが、敵対するとなるととても厄介になる事が露見する事になった今回の事案に皇帝としては頭を抱えるしか無い。
「はあ・・・頭が痛い・・・」
と嘆く皇帝を気の毒そうに見やる宰相の構図がこの数日間続いていた。
「使者殿は?」
「街の観光を楽しんでおります」
「そうか」
少しホッとする皇帝に
「しかし早めに返事を返す努力はするべきですぞ」
と苦言を述べる宰相にこれで一回失敗している身としては素直に頷くしか無い。
・・・今回何故か一緒に彼らと共にあると言う勇者は、元は我らの国に聘して見事その役目を果たしてくれた御仁であったのだが、秀逸すぎる成果に恐れをなした群衆の意見を統一させる前に出奔されてしまう事になってしまった・・・我々上の者が即日即決していれば防げたであろう多大なる損失であった。
女神が絡んで来なければこれも即決で諸手を挙げて大喜びな一件なだけに何故今回はこうも関わってくるのかと愚痴るだけの無駄な日々。
女神がそもそも頑張って力を付ける気が無いだけであるのだが、その思惑に気づく者は今の所この国にはいないのであった・・・。
露見すれば、新興神に頼る一択なのだが。
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