第45話


・・・初め見た時は胡散臭い4人組が来たなと思った。


それが“しと”?とか訳のわからない説明をして、新たなる神の信仰を進めてくる。


新手の宗教勧誘者か、と胡散臭がる輩もいたが・・・今の生活が苦しいのは確かで。


“雨を降らせる”“作物を早く成長させれる”“悪意ある者を拒める結界が張れる”などの恩恵が魅力的過ぎた。


それに今までの神を捨てろって訳じゃ無かったのも良い。


元宗教も上書きと言うよりは追加でこの神のことも奉ってくれたら良いよ位のお願いであったのも相まって自分は彼らを受け入れても良いかなという気分になっていた。


だってよ、奇妙な踊りだったけどこの神さんを信仰すればゆくゆくは雨を降らせたり畑の作物を超早く収穫出来たりを自分でする事が出来るらしいからなぁ。

実際その現象も見せられたしな。

こんな直接的に干渉してくれる神様は大歓迎だぜ。


自分以外にもそう言う奴は何人か居て、村の中でも意見が割れていたのだが。

別に個人単位でも大丈夫だって聞いてからは気軽に頼む事が出来た。


村長は最後まで反対していたから小さな祠は家の裏手の隅に隠す様に設置して貰った。


女が小さなベルを鳴らして設置は終了らしい。

・・・特に何の変化も今はわからんが。


只、日々この祠に祈れば自分達にも魔法が使えるようになると聞けばやる気も出るってもんよ!


祠を設置した後は余り長居せず4人は旅立って行ったが、村長はピリピリしている様だった。

何をそんなに目くじら立てる必要があるんだと訝しんだが触らぬ神に祟り無しである。


当時、賛成派は村の半分位は居たのだが、村長の態度を見て考え直す者も居て結局は全体の三分の一だけが新しい神を受け入れてた様であった。




———それが後日、村の生活にはっきりと明暗を分ける事となる。




最初家族は村長を怒らせたら村での立場が・・・と言って不安がっていたが、自然と村長の姿を家周りで見ることが無くなり会うことも疎になった。


・・・言うて村は人口少なくそれなりに狭いので、会わなくなったと言うのは少し不可解ではあったがホッとしたのもまた事実である。

村八分は恐いのでなぁ。


スタンピードはこんな田舎で小さな村では発生しないので、国が滅んでも点々と村や町位は丸っと残っている。


しかしそんな集団では出ないものの、偶に襲ってくる魔物はいる訳で。


———ドンッ!!


ある日何かがどこかに強くぶつかった音がして


どさっ、と近くに何か大きな物が上から落ちてきた。

見ると、“ガラ”と呼ばれるまあまあ大きな鳥の魔物で、肉食。

人間を巣に連れ去ってゆっくり食べると聞いている。

正面から勢い良く固い何かにぶつかった如く、前面の嘴がぐしゃっと潰れているガラを見て、これが“結界”の威力か!と思った。


普段は特に見えないし触れないのだが、結界内の人間目指して急降下したガラは見事に自分で自滅したと言う訳だ・・・。


「今日はお肉のご馳走が追加だぞぉーー!」


「ヤッタァぁぁぁ〜〜〜!!」


偶にぶつかって自滅する魔物を拾いつつ、日々の生活に新たな彩りが追加される事となった。

祈りにも気持ちが乗ると言う訳だ。


幸いうちの国はスタンピードに耐えたらしいが結構ギリギリだったと風の噂で聞いていて、案の定懸念通り半年に1回は訪れてくれていた行商が今回は来なかったのである。


あの騒動に巻き込まれて死んでしまったかも知れねーし、そうでなくとも地方を周る余裕なんてないんだろう事は予測出来ていた。


この頃の世界は正にあの“しと”が言っていた通りにちょっとずつおかしくなって行ってるのかも知れねーなぁって思っていた。


風が止み、蓄えてあった水が干からび、川の水位が下がる。

水不足や畑の成長にも影響が出ていてダイレクトに生活に響いてしまっていた———私たちは勿論、大丈夫だったが。

なんせそう言う説明も使徒様達から受けていたし、日々の祈りで魔法が使える様になっていて家族皆が植えてから即日収穫出来る様になっていたからな。


息子はあのヘンテコな踊りも気に入って、しょっちゅう踊っているのだ。

初めて魔法を成功させたのも息子だった。


お腹すいたなぁ〜〜と思いながらいつも通り遊びで踊っていたらポコっと植物が動いてビビったらしい・・・実は俺もそう言うのは苦手なんだが。


裏庭に呼ばれて見に行ったら人数が増えた事で息子の怖がりは鳴りをひそめテンションは戻ったらしく、


「見てて!」


と踊ると作物がぐんぐん本当に伸びたでは無いか!!


畑は外に皆と共用の大きな畑が5枚あるのだ。


今回は果てしなく不作で、これは・・・この冬は越せないかも知れないと絶望していた未来の先に光が見えてきた気がして息子を抱えて脇目もふらず泣いた。


この家裏の畑は正に個人用でここで育てた物はそこの家人が全て自由にして良いことになっている。


「ああ、ああ・・・神よ、ありがとうございますっ!」


———その年の冬、この村では多くの者が季節を越えられなかった。


しかし、残った者たちに悲壮感はさして無く、その後も軒並みの村人が平和に暮らしたとされている。







一方その頃その女神様は———・・・


「わああっ、大変大変!ベビーラッシュだよ!!!」


皆のお産にバタバタしていたと言う・・・。






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