第30話


アガラは創造神の末っ子で周りには自分よりも上位の存在しかいなかった。

元々やんちゃではあったのだが、何かをやらかしても皆微笑ましくあしらう位の反応でそれが彼の普通だったのだ。


だから一番位が近い上の兄と一緒に1つの星を任される事になって。

初めて自分より下の者達と接する事にとてもワクワクしたのだ。

自分より下の者の自分への反応とか向けられる感情とかがとても新鮮で楽しかった。


それは自分にとってはいつもの悪戯の範囲だったけれど。

例えば川の水を一瞬で干上がらせたり。

はたまた意味もなく植物を枯らし回ってみたり。


それで相手がどう思うかなんて全然考えてなかった。


「———辞めてっ!!」


と泣き叫ぶ者も居たし、喚き散らして逃げ惑う者も居た。

全てが初めての事で、皆のそんな反応が楽しい!とさえ、その時は思っていたのだ。


“使命“とか何か難しい事を兄は言っていた気もするけれど、そんなのは知らない。

難しい事は兄に全部丸投げすれば良いやって思っていた。

そんな事より、次はどんな方法でみんなを驚かせようかとか、力では絶対に自分には勝てるはずも無いのに勝手に勝負を仕掛けて負けた奴を挑発したりして・・・自分では只々一緒に楽しく遊んでいるって感覚だったのだ。


まさかそれで皆に嫌われて避けられたりハブられたりするなんてこれっぽちも思ってなかった。


———自分が彼らへの接し方を間違えたんだと気づいた時にはもう遅かった・・・。



皆の笑顔なんて知らない。

向けられた事が無かったから。


その頃は俺様最強ごっこがマイブームで。

色々な神に喧嘩を吹っ掛けては嫌がっているのも無視して追いかけ回して楽しんでいた。


自分が皆にしたことで怖がられてるんだと初めて知ったのは自分だけが知らない集まりが開かれていてそれに乱入した時に兄に皆が助けを求めた時だった。


兄がその場に居たからか、普段は逃げ回り隠れたり困った顔をするだけの反応を見せていた彼らは、その時は皆が本気で自分を罵倒してきた。

特に誘われてない自覚も無く、アレ、何かいっぱい集まってるな感覚で突撃したら


「だから太陽神を誘わなかったのに!」


と口々に叫ばれた。


その時になって漸く自分は皆から心底嫌われているのを実感した。

兄にも嗜められてごめんなさいしたけどもう遅かったのだ。

楽しかったのは自分だけだったなんて思いもしなかった。



途方に暮れていたら兄さんのそばから1人、女の神が出てきて自分を“指導”するって言われた。

兄にも彼女の言うことを聞いてちゃんとするようにって言われたからその通りにしたんだけど。


「あなた皆に嫌われ過ぎだから、許して貰いたかったらちゃんと私の言う事聞くようにね」


と言われて従順に何でも言うことを聞いたと思う。


———でも、結局は誰からも許されなかったな。


それだけお前が皆に酷いことをしたんだぞってその度に思い知らされて。

その内自分だけじゃ無くて、自分を信仰する民までをも苦しめられて大泣きしても許されなくて。


・・・その頃にはもう、許される事は諦めていたな。


それよりも、こんな自分でも慕って崇めてくれる民達がいる事だけが唯一の救いになっていた。

太陽の民にだけ心血を注ぐ事に決めた頃にはもう、あの女は来なくなってたかな?

何か心底ダメ出しされて、呆れられた記憶が薄っすらあるかなぁ・・・。

覚えて無いや。


自分なりに考えた結果、自分の強過ぎる力は砂漠地帯の環境を悪化させるだけだったから、周囲に力を解放して自分を弱らせて何とかするしか無いと結論付けた。


ただでさえ許されなかった事で、水や植物が軒並み遠ざかってしまっていたから次々にオアシスが枯れて行き太陽の民は日々追い詰められていっていたから。



・・・兄から言われた“彼女の指示に従え“と言う言葉はある意味呪縛であったのだ。


太陽神と水の神とではそもそも格が違うので普通であるならそんな上下逆転の構図なんて起こる訳がなかったのだが。

“上からの指示“でうっすら彼女とのパスが繋がり、普段はあり得ない状態が出来上がってしまったのだ。

兄の言で一部ではあるものの、下克上みたいな現象が起こり、太陽神は水の神に逆らい辛くなってしまった。


月の神は上位神に悪意を持つ様な神が居るだなんて考えもしなかったのでその申し出を100%善意として受け入れて且つ全てを彼女に委ねたのだ。

・・・彼女の加虐性を見逃しているのにはついぞ気付かなかった。


———・・・そこからは、地獄だった。


彼女はにこりと笑いながら太陽神に約束させた。


・自分の許可無く他の神に接触しない事。

・今までの償いで他神の納める土地に力を注ぎ、地を安定させ続けること。

・自分の指示には極力従う事。


どれも極悪だった。

これらの条件はただ水の神が太陽神を苦しめたいだけで作ったものであったのだから。

太陽神の力をさらに削いで自分が長く愉しむだけの約束だった。


・・・水の神はまず手始めとばかりに未だ心が幼い太陽神にどれだけ皆に酷い事をしたのか神格否定を永遠と吹き込んで彼の心を折る事にした。


他神とは極力接触はさせなかったが、水鏡を渡して水の神が厳選した太陽神への悪意あふれる映像を流して見せた。

例えば神々が太陽神に対して悪口を言っている映像やら、太陽神が悪戯を仕掛けた時の恐怖に引き攣る皆の顔などの映像だ。

これで自分の言っている事の信憑性を演出した。


偶に指導していると言うパフォーマンスで自分の見ている所で“土下座”させて謝らせて回った事もある。

———これは水の神が自分の権威をひけらかす為の場でもあった。

こんなに強い神を自分は跪かせる力があるんだぞ、と他神に強さを見せびらかすのも気持ち良かったし、相手の神が許そうとするのを遮る様に、涙に濡れた顔を踏み付け誠意が足りない!と罵ったりするのも酷く心が踊った・・・自分が上位神を甚振る状況に只々興奮していたのだ。


———・・・約束を守っていればいずれは許されますよと嘯いて、許してやる気なんてこれっぽっちも無い女に指導権を渡してしまったのは月の神の罪であると言えよう。


それでもその約束を指導と信じる太陽神が可哀想可愛くて心底馬鹿にしていた水の神は・・・。


散々甚振った挙句、彼の力が極小になって見た目もガキに成り下がってからはほとんど興味が失せていた。

彼が上位で大人な男神であったからこそ楽しかったのであって。

もうすぐ消えるんじゃないか、という頃には存在すらも忘れていたのに。



突然ふつり、と辛うじて残っていた繋がりが切れた時、水の神は不快感に顔を顰めた。


もう既に忘れていた存在であったし、自分から繋がりを切る分には問題無かったのだろうが、自分の預かり知らぬ所で太陽神との繋がりを切られるのは話が違った。


「———未だわかって無かったのかしら」


とほくそ笑み、久しぶりにまたイビってやろうかと思ったのに繋がりが切れた影響か、太陽神の領域にアクセス出来なくなっていた。


「クソ生意気なっ!!」


と悪態をついて、


「許さない!」


と思った所で会えなければ意味が無い。



彼女は知らなかった。


彼の側にいるミリアも知らない事実なのだが“土地神”はその土地の中に至っては他の神の力を凌駕し、悪意ある干渉を一切受け付けない能力がパッシブで備わっていたのである。


国自体も鎖国しており、周りに興味の無いミリアに果たして水のの悪意は気付かれる日は来るのであろうか・・・。


「太陽神の癖に生意気なっ!」


と憤る女神には知る由も無い事であったがミリアに気付かれない限り、永遠に太陽神とは邂逅出来ない事実には到底気付かないのでありました。



そしてそれら一部始終をを見ていた創造神が良い気味ぃ〜〜と爆笑しているとは終ぞ思ってもみない事である・・・水のの明日は暗いぞぃ。




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