第36話 辺境の村ダンジョン バージョン2 地下四階 最終点検②とギルドへ


  ♢地下四階♢


 地下三階のアイアンゴーレムを倒すと、石のステージの壁がゴゴゴゴ……と音立てて開き、地下四階への降り口が現れる。

 狭い岩壁の通路の、石の階段が下りるたびに、カツン! カツン! と靴音が響いた。


 長い階段を下りていくと、急に潮の匂いがしてくる。なぜかこの地下四階は、海水が流れ込んでフロアの大部分が水地になっていた。

 ほとんどが水の部分だが、人が二人位に通れる道があって、先に進むと広い円形の陸地が見えてくる。


 途中、水の中から人喰い魚が襲ってくる。

「嫌な魔物だ」

進むごとに左右から、人喰い魚が飛び出して足や腕に食いついてきた。手や足を振って人喰い魚を払いながら倒して行かなければならない。厄介な魔物だ。


人喰い魚はピラニアに似ている……。でもこの魔物の体は大きいけれど、口は小さくおちょぼ口で皮膚を食いちぎられることはない。歯形はつくので注意が必要だ。


 「痛いっ!」

あと少しで中央の陸地にたどり着けそうだったのに油断した。足を噛まれた。人の歯形よりも小さく、多少……跡が残る程度だ。例えるならば、洗濯ばさみに挟まれた感じだ。変な例え方だけど……。

 「えいっ!」

足を振って、噛みついていた人喰い魚を振り払った。人喰い魚は勢いよく足からはがれて、水の中へチャポン! と入っていった。


 人喰い魚を払いながら、さらに進んで中央の陸地にたどり着いた。

お約束のように水面がザワザワ……! と、揺らぐ。

 「来る……!」


 水面に大きな影が近づいてくるのが見えてくる。それを合図に武器を構えて、予期しない事態に備える。

 「くっ!」

 波しぶきが立ち、巨大な長いが襲ってきた! ここで武器を構えてないと吹き飛ばされて、体は水の中へ ドボン! だ。


 ガシッ――!

片手剣を二本、重ねて衝撃に耐えた。足裏で踏ん張って、飛ばされないように態勢を低くした。

 「くっ、今日は耐えられた!」

 何回か水の中へ落とされていたが、今日は頑張って耐えられた。


 「次が来るっ!」

巨大な長いモノ。それのが陸地に乗り上げてきた。見上げる大きさ。

 巨大な 海の生物 クラーケン だった。


 「場所によってはクラーケンはイカだったり、タコだったりするけど……!」

巨大な、足と呼ばれるものがまた襲ってきた。

 「このダンジョンのクラーケンは、タコ――!」

 ドガ――ッ! 間一髪避けて、地面にタコ足を叩きつけた。


 「うあっ!?」

 バシ――ンッ!

予想外に後ろから巨大タコ足が僕の体を強打した。倒れかけたけど、態勢を整えて身構えた。


 大きな体なので、クラーケンが攻撃をした後に隙が出る。

 「いただきますっ!」

ザシュ――ッ!

 片手剣の切れ味は最高だった。足の一本を見事に一刀両断した。

 

 グガガガガガガ――――!

 

腕を切られたクラーケンは、水の中へ沈んでいった。

 「ふう……」

ちなみにクラーケンの足は再生するらしい。さすが魔物。


 チャラララララ――ン!!

地上への脱出の魔法陣が奥に見えた。

 

 クラーケンの足を一本落とすと、クリアになる。一撃食らったのは油断したせいだ。

「もっと鍛えないと! あいたた……」

 

 持ってきたハーブ水を一口飲んだ。

「ん!?」

切り傷、背中の痛みが一瞬で消えた。

 「え? 僕のブレンドしたハーブ水を飲むと、こんなに回復するの?」

体に魔力が循環して、満たされるような感覚。焼きおにぎりは、どうだろう?


 取り出して、パクッと焼きおにぎりを食べてみる。

「わっ! わあっ!?」

食べ終わるころには、体力・魔力が全快した。普段、食べているけれどこんなに効果は出なかった。減った分だけ回復するみたいだ。

 【回復食】というだけある。


 ピロピロピロピロ! レベルアップしたお知らせ音だ。毎回音がちがうな。

 

   ~◆レベルアップしました!◆~


   ・冒険者レベル 80

   ・料理レベル 100

   ・【回復食】レベル 100

   ・テイマーレベル 100

   ・ギルドクラス C

 

  ~◆クラーケンの巨大足はギルドの依頼品です◆~


 親切なレベルアップのお知らせだ。忘れずに持っていこう。


 「よいしょっと!」

肩にズシリ……と重さがくる。クラーケンの足を担いで、奥の脱出用の魔法陣まで進んだ。

 

 パアアアアアア……! 地面に描かれた魔法陣へ入ると、円形に光の壁が現れて一瞬でダンジョンから脱出できる。


 「今、何時くらいかな……?」

 光に包まれてまぶたを閉じて数秒後、またまぶたをあけるとそこは地上。ダンジョン前だった。


 「お帰りなさいませ。マオ様」

ダンジョン前から入場券売り場まで歩いて行くと、ミレーヌとサウスさんが開店準備をして待っててくれた。

 「ありがとう! クラーケンの足これ、ギルドに持っていくね」

 

 ちょうど依頼があったので持ち帰ってきた。ダンジョンにあるもので、危なくない物ならばギルドの依頼品として、持ち帰りできるようになった。これでギルドの依頼もこなせるし、ギルドの経験ポイントも貯まるし一石二鳥だ。いや、冒険スキルも上がるからそれ以上か。


 肩にクラーケンの足を担ぎながら、ギルドを目指して村の中を歩いていた。

シュシュッ! 

 まだ朝早い時間なのに、素振りをする音が聞こえてきた。ジーンだ。

誰よりも素振りや筋トレをして自分を鍛えていた。僕も一緒に筋トレをやったけれど、彼には敵わなかった。

「がんばれ……」

 小声でジーンを応援した。


 「お早うございます――! 依頼のクラーケンの足を持ってきました!」

ギルドの扉を開けながら挨拶した。

 「あれ?」

 びっくり顔のサナさんとショータさんが、僕を凝視していた。


 「え? もう開いて……ますよね?」

時間を間違えたかと時計を探してしまった。

「え、ええ! もう開いてますけど、クラーケン……」


 おかしいな? 掲示板にクラーケンの足を希望ってあったけど……?

「Sクラスの冒険者の討伐持ち帰り推奨か、パーティで攻略して数人がかりで持ち帰りの依頼だったのですが……」

 サナさんがあっけにとられた表情して言った。

 「そうですよ! 何年かかるかな? って今、話をしていたばかりでしたよ!」


 あ。やっちゃったかな……?

僕はとりあえず、カウンターにクラーケンの足をドンッ!と置いた。


 「あ――、すみません。これは内緒にしてもらえませんか? 依頼書は、そのままでお願いします!」

 僕はサナさんとショータさんに頭を下げた。


 「あっ! 頭をあげてください! マオさん、分かりました! そのようにします!」

サナさんは慌てて僕に言った。僕は安心して頭を上げた。


 「んもう……。凄すぎです! 今、ギルドクラス C なんて信じられないです」

まあ、依頼をこなしていかなきゃクラスは上がらないしね。お総菜屋やダンジョン経営が忙しくて、なかなか依頼を受けられない。


 「えっと……。依頼達成ゴールドと経験値は……っと」

ぴ! ぴ! と水晶タブレットに登録していく。

「ギルドの指輪をこちらへかざしてください」

サナさんに言われて指輪をかざした。さすがギルド職員。テキパキと仕事を進めた。


 「……はい。ゴールドと経験値を登録できました。ありがとう御座います!」

早いな。水晶タブレットは持ち運び出来て便利だ。

 「詳しい内容は、ギルドにある水晶タブレットで確認できます。指輪をタブレットから離した時点で、プライバシー保護されますので安心してください」

 ギルドの管理すごい。自動的に、自分のギルド銀行に振り込まれるから便利だ。


 ギルドの依頼も終わり、僕は急いでダンジョン前へ戻った。


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