やり直し異世界転生に絶対に紛れ込ませてはいけなかったナニカ

小村ユキチ

第1話

 どこから話せばいいかわからないが、とにかく伝えられるところから始めよう。俺は18の夏に日本という国で人生が消化不良のままくたばって、その後どこかのRPG的な仕組みの異世界に転生した。これでわかるか? 大雑把だしなんだかあんまりな言い方な気もするが、大枠は伝わったものだと信じよう。ともかく俺は生まれ変わった世界で信じられない力を手に入れて、人生を振り直した。

 その振り直しの物語が聞きたいか?

 チートで無双できて可愛い女の子がいっぱいな英雄的冒険譚が見たい?

 残念だが、俺が話すのは今からそういう痛快なじゃない。手に入れた脳筋型ステータスチートで悪質なチンピラギルドをわからせた話や、モンスターに支配された街を解放した大活躍、笑っちゃうくらいの美人たちとしばらく寝食を共にした経緯いきさつ、友情、謀略、シリアスな展開、諸々……は出てこない。そういう誇らしき体験の後に起きたある凄惨な事件の話だ。

 最初に断っておく。

 この物語はひたすら不愉快で恐ろしくて救いがないし、何よりどうしようもないほどうまくいかない。そんなもの見たくねえってんなら遠慮なく立ち去ってくれ。俺だってこんな話はしたくない。

 話していいんだな?

 わかったよ……じゃあ聞いてくれ。何もかも手に入れられたはずの俺の、究極の失敗談を。

 チートを持ってるのになんで失敗するんだって?

 チートを持ってたせいで失敗したんだよ。

 多分……多分だけど、俺は転生する前の死に方がよくなかったんだ。こういうのは大抵交通事故とか自殺とかで体ごとファンタジーの世界に吹っ飛ぶもんだろ? そういうお約束の手順をまっすぐに踏めてればきっと何も起きなかった。

 そうやって、、何も問題なかったんだ。

 くそ……話にとりとめがなくて悪いな。正直俺もまだ混乱してるんだよ。とっとと本題に入るがその前に、二つだけ、言っておこう。

 心霊写真には気をつけろ。

 そして間違っても、地縛霊を別世界には連れ込むな。

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