第17話 償い
王都が見える森の近くの開けた場所にプリンは降り立ち、みんなで食事をした。
王都の肉事情が落ち着くまでの間、今暫くは近くの山々で魔物討伐して肉をギルドに卸す事でみんなの話はまとまった。
丁度食事を終えた頃、夕闇が迫って来たので、プリンとショコラにお願いし両親の待つ王宮に行った。
昨日と同じ父の部屋のバルコニーに降り立ちショコラには、隠密スキルで此方の存在は見えない様にしてもらい部屋の中を覗くと、昨日居なかった人達が五人居た。
そこで、みんなとそのまま様子を見る事にした。
彼等は父のお見舞いに訪れていたようだ。
只父が、昨日まで、ベッドに臥せ起き上がれない容態だったのと違い、元の元気な国王に戻っているので驚き戸惑っているようだ。
此処で、ラスパルの皆に、この中で見たことのある人居るか聞いて見ることにした。
父は一人目のケランド王弟殿下に対し国王代行の慰労と、明朝より国王執務室で政務の引継ぎを始める事を告げていた。
「あの貴族は見たことありませんか?」
「見たことが無い。」
二人目の、シャルレ公爵にはケランド王弟殿下との引継ぎに同行することを命じた。
「あの貴族はどうですか?」
「見たことありません。」
三人目の、国王の執事セイルには、四人目王弟殿下の執事ベクターとの引継ぎを此の一両日中に済ませる事を告げた。
「五人の冒険者が一斉に執事のベクターを指さし貴族執事のべクレルだ。」
と声を揃えて言った。
「ありがとうございます。」
五人目の、王宮医官にもこれまでの慰労を告げ、今後一切薬は不要と告げ、今持って来ている薬包を父が自ら回収した。医官は慌てて後ろに数歩下がり、振り向きざまに逃げ出そう賭していたが、国王付きの衛兵に取り囲まれていた。
「あいつは医官だったんだ。 王都の森で酒を飲まされた時、一緒に居たやつだ。」
医官と医局は本日より私の執事セイルの管理下に入る事となった事や、医局には既に調査部が入っている事を告げ、医官は衛兵に何処かに連れて行かれた。
父は、ケランド王弟殿下と王弟殿下執事ベクターは、引継ぎが滞りなく一両日中に終わらせる準備するよう命じ、部屋から下がらせた。
その後私達に気づいた父は、ベランダの扉を開け私達を部屋の中へ招き、お互い挨拶を交わすと、部屋に残っている、国王執事セイルとシャルレ公爵の二人を紹介した。
その後改めて、ケランドと執事ベクターが証拠の隠滅と、隠蔽を画策する事も考えられ、最悪人身の殺害等も考慮し、父はショコラとプリンそれとクレイに、助力願えないか聞いて来た。
みんな喜んで引き受けていた。そして、ショコラは尻尾が魔物討伐の時のように揺れていた。
その後私とクレイに、影達は父と母にとって大事な仲間。二人の影達に癒しを掛けてほしいと言われ、快く引き受け、影達に並んでもらい、二人で全員に癒しを掛けた。
始め父の部屋にいた、執事セイルとシャルレ公爵に影達はショコラとプリンを見てびっくりしていたが、直ぐにショコラ達と影達は一緒に、ケランドと執事ベクターの下へと消えた。
その後父の部屋に残ったのは、父と父の執事セイルとシャルレ公爵その後部屋に入って来た母と母の執事マリベルの五人である。
マリベルは部屋に入り私を見つけると、目を大きく見開き大きな涙を流し始めた。
母がマリベルの背中を撫ぜてくれていた。
父と母は昨夜から今朝まで話したから大丈夫だけど、他の人達は只々驚き涙してくれた。
そして皆次々に私を抱きしめてくれた。その時癒しを掛けみんなにも元気になってもらった。
「リズ、マリベルを覚えていますか?」
「はい、いつも私の傍にいてくれ、いつも優しく抱きしめてくれていたのを覚えています。」
「リズ様、私が油断したばかりに、お辛い目に合わせてしまい申し訳ございませんでした。」
「マリ、私は大丈夫です。心配を掛けて本当にごめんなさい。」
私とマリは二人で抱き合い泣いていた。そして忘れず癒しを掛けた。
その後父は冒険者の方々を見て、
「リズこの方々はどう言う知り合いだい?」
「此方の四人が以前お話した、リュウガと言う冒険者チームで私を「死の森」から連れ出し、王都に連れて来てくれた方々です。」
「そうだったのか、先程は失礼した、私はケリーブラン・サルマトリアと母のグレン・サルマトリアだ、娘が大変世話になった。ありがとう。」
と国王と王妃が揃って頭を下げた。
急だったのでみんなびっくりしていたが、みんな胸に手を当て頭を下げていた。
「こちらの五人は私を攫って「死の森」に私を捨てた人達です。」
みんなの態度が急に変わって動き出そうとしていた。
「皆さん動かないで聞いて下さい。この場にこの方達を連れて来たのは、この人達捕まえるためでも、罰を与えるためでも有りません。」
「では、何故此処にリズを攫った者達が居るんだ。」
「先程バルコニーから私とこの人達を殺そうとした犯人を確かめて貰いました。まずこの人達を騙し、この大金で唆したのは、ケランド王弟殿下執事のベクター。犯行を犯した時の名はベクレルと先程この部屋に居た医官です。」
「それは分かった。リズを攫った犯人が分かったのはありがたい、礼を言う。しかし何故自分を攫った犯人と一緒に居るんだ。訳を聞かせて貰おう。」
彼等が私を殺さず逃げてくれたから私はこうして今も生きています。
「皆さんのお怒りは当然と思います。私も必死に生きて来ました。彼等もまた毒酒を飲まされ、動けなくなった所を彼等に殺されかけたそうです。そこにオーガとオーガキングが現れ、ベクター達は逃げだし、その後、毒で動けなくなった彼等をオーガ達が洞窟で五年の間薬草や、果実、肉、魚を獲り生かしてくれたそうです。」
「ですが、国王様や王妃様の苦しみや悲しみ、国民の苦しみや悲しみに対し、それで罪の償いにはならないのではないでしょうか?」と執事セイルはそう言った。
「確かに罪は罪ですが、果たしてそうでしょうか? でもお父様、お母様なら分って頂けると思います。魔物の傍で五年間動かない身体で生きる事の辛さを、これを罰と言わず何と言うのでしょうか?」
「ならばリズ、彼等は罪を全て償ったと申すのか?」
「いいえ、まだ不十分だと思います。なので、この国の国民に対しての償いの為、食料事情が落着くまでは私達とこの国のため魔物討伐に励んで頂きます。ショコラとプリンが相棒なのでかなりきついと思います。」
「それで、罪の償いとなると思うのか?」
「それでも不十分な時は、この国の情勢が落ち着いたらギルド預かりで働いて貰うか、私達と旅に出て家族と会えるのが帰って来た時だけの罰を受けて頂こうと思いますが?いかがでしょうか。」
「リズは彼等を許すのですか? 私は許せないかもしれません。」
「お父様、お母様ごめんなさい。私も最初はそうでした。絶対に許さない。と思っていたのです。でも彼等とラード村で会った時、彼等もこの五年間、後悔と苦しみの中で生きて来たんだ。と言う事が分かったのです。だから彼等に償いの機会を与えたいと思ったのです。彼等に償いの時間を与えては頂けないでしょうか?」
「では彼等は罪人としてリズの傍に置くと申すのか。」
「ハイ、皆さんが納得するまで。只手縛りは無用にお願いします。勿論正当報酬よりは少なくなりますが、報酬は受け取って頂きます。が基本この国のために働いて頂く。これが今後彼等の罰になります。皆さん如何でしょうか。」
「リズ王女、お聞きしてもいいでしょうか?」
「ハイ、シャルレ公爵何でしょうか?」
「彼等が又裏切るとは考えませんか?」
「ハイこれは私の甘さかもしれませんが、私は魔物と行動を共にしています。
彼等の嗅覚、視覚、相手の力と隠し持った心底を見極める本能には目を見張る物が有ります。とても人間と比較できる物ではありません。その彼らがこの人達を受け入れそして助けた。疑う余地などありません。ちなみにショコラとプリンも彼等を受け入れています。それに彼等が逃げても、ショコラとプリンが逃がしてくれません。」
「リズ、国の法を簡単に曲げてしまっては、秩序がなくなってしまうが。」
「ハイお父様、タダ私も彼等がのうのうとこの王都で五年間暮らして居たならば、皆さんと同じ事を言ったと思います。勿論断罪すべき、極刑だと。でもあの毒を受けた身体のまま洞窟で生きた五年間は言葉にするなら地獄に居る様な物だったでしょう。お父様はどう思われますか?」
「リズお前は、彼等を許せるのか?」
「ハイ、彼等は十分苦しんだでしょう。ですがお父様やお母様の苦しんだ分と国民の苦しみの償いはまだなので、お父様やお母様が目指す国造りのため、私達とこれから働いて貰おうと思っています。それに、彼等より罪が重い方々がこの五年、のうのうとこの王都で暮らして居るんです。そちらの処罰をお願いします。」
「分かった。彼等の事はリズに任せた。 但し後で泣き言は聞かんからな。 ではケランド達の事は任せてくれ。」
「お父様、お母様、皆さんありがとうございます。」
「皆の物分かったな、彼等の事は全てリズに任せた。この件に対し口出しは無用。
それとリズやってくれたな。ギルマスから連絡が届いた。民衆に肉を配ると。」
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