第11話 新な旅立ち


 ファインド王国に向かうには、一旦ラード村からサルマトリア王国側に半日程戻り、その後北の方角に森を進み、山を登りアルフェノン山脈を越えたらファインド王国領になる。


「ショコラ、ファインド王国に行く道わかる?」

「我についてくるがいい。」

「クレイ、ショコラがファインド王国までの道がわかるって。どんな道を進むかちょっと怖いけど。ショコラについて行っていい?」

「わかった。大丈夫だよ。」

 ショコラはどんどん本道からそれ、森の中に入り進んで行くが、ちゃんと私達が進める道を歩いてくれる。

 途中で魔物の群れと数回戦い、食事休憩をしながら進んだ。

 山の麓で一泊。クレイが夕食の後、疑問を口にした。


「リズ、元々ファインド王国に行くって決めていたのに翌日のギルマスには、リゼブラ王国、ファインド王国とブランディス王国何処を目指すかまだ決まって無いって言ったの。何か事情があるの? 言いたくなければいいけど、いつものリズらしくないから気になった。」

「ゴメンなさい。クレイとショコラには早く話さなければいけないと思だけど、どう言ったら信じて貰えるか分からなくてずっと考えていたの、聞いてくれる。」

「ああ、聴こう。」

「僕も聞くよ」


「私は五年前「死の森」の奥に捨てられたの。気付いた時私の側にはこのテントと中身が入ったリュックサックそれにナイフ…とこの剣があった。」

「ちょっと見せて貰っていい? 此れってサルマトリア王国の紋章‼ 確か、数年前サルマトリア王国のフェアリズ王女殿下が何者かに攫われたと各国のギルドで騒ぎになった事があったけど、それ、リズの事だったの。」

「多分そう、「死の森」で助けた冒険者に王国に連れて来て貰った話はしたよね。」

「聞いた。ショコラが魔物を狩って来た時に。」

「その時、王国でこの鞘にある紋章と同じ紋章を見た時気付いた。」

「そうだったんだ。」

「あの「死の森」で五歳の時から一人で暮らしていたって言っても誰も信じてくれないし、気持ち悪いよね。リュウガの人達も人間じゃないかもしれないって思ったって、笑いながら言っていた。それに、そうと知らずに、私を王都まで連れて来たリュウガの人達にも迷惑を掛けてしまうし、リュウガのメンバーからもチームに入らないかって誘われたけど断ったの、このテントが有れば生きられるだろうと思ったから。」


 中身は20歳の青年だけど。これはお墓の中までの秘密。

「だから年齢より遥かにしっかりしているんだ。」

「ただ、以前風の噂だけど国王様の体調があまり良く無いと聞いた事があったけどリズは知っている。」

「ハイ、王国でリュウガ達から聞いていました。」

「そうか知っているならいいんだ、会いには行けない?」

「そうですね、その時他の黒い噂も耳にしたので、私を攫った証拠と協力者を捜し、足元をもう少し固めてからでないと、私の方が先に処分されかね無いので、お父様にはもう少し頑張って頂きたいと思っています。」

「それって、もしかしたらリズを攫って「死の森」に捨てた犯人が分かったって事。」

「ハイ。恐らく王弟殿下が玉座を狙ってだと思います。」

「そこまで分って居るのなら、その短剣は絶対誰にも見せてはいけないよ。リズを攫った犯人や協力者に見つかったら、またリズは命を狙われる。」

「ハイ、分かりました。」


          ◇ ~ ◇ ~ ◇ 


「所で、どうしてギルマスにまだ何処に向かうか決まって無いなんて言ったの。」

「ギルマスは信じています。でも王国の市場で旅の買い物をしている時、誰かの視線を感じたの、だからそのまま王都を出て、本道を逸れ森の中を通り、隠れながら旅をしていた所で、クレイとショコラに出会ったの。もし王都や領主さんから調査依頼があれば、ギルマスは報告しなければならないだろうし。」

「だからリズは、サルマトリア王国から早く出たかったんだ。でもリズを王都で見つけていたのがリズの味方だったら、少しは安心したかも知れないね。」

「そうだといいなぁ、それに今後の行程を決めていなければ、少しは混乱出来るかなと思って。」

「そう言うことだったんだ。分かった。所でショコラ」

「儂か」

「ラード村でリズの事を調べている気配は合った。」

「恐らく無いと思うぞ。少なくとも儂は何も感じなかった。」

「ありがとう。まだ気づいてないみたいだ。だが、油断しないほうがいいかも。」

「うん、気をつけるね。」


「リズはサルマトリア王国の王女様だったんだ(笑)。」

「一応は、でも今はただの冒険者です(笑)。」

「事情は分かった。話してくれてありがとう。でもよく生き延びたね「死の森」で五年も。」

「でも今の私の目標は、旅の最後は「死の森」踏破です。」

 と伝えるとクレイは苦い顔をしていた。

「うーん?????「死の森」踏破するのか(苦笑)」

「では皆さん休みましょう。」

「「「おやすみ」」」


           ◇ ~ ◇ ~ ◇ 


 翌日暗いうちに起き出し食事を終えると隣国ファインド王国目指して国境アルフェノン山脈を登り始めた。

「リズ、儂らはこの山脈を越えファインド王国にそのまま行くではなく、踏破したあとにファインド王国に行く。でいいんだな。」

「うんショコラそれで大丈夫。お肉も沢山あるし。でもクレイもそれでいい?」

「オレも構わない。」

「では行くぞ。」


 ショコラはホントに優秀だね。どんどん私たちを連れて山の中を進んで行く。

 私はショコラとクレイについていくのがやっとなのに、彼等は魔物の群れと闘いながらどんどん進んで行く。ホントに凄い。

 途中で休憩を挟みながら、かなり進んだ。

 テントを置く広さがある場所を見つけたので今夜は此処で休む事にした。


「ショコラ此処はどの辺になるの。」

「山の中腹辺りだ。」

「もうそんな所にいるの。」

「あたり前だ」

「クレイ此れってあたり前なの。」

「違う、違うし。リズ、何故この山脈がサルマトリア王国とリゼブラ王国そして北のファインド王国の国境になっているか分るかい。」

「分らない。」

「このアルフェノン山脈は前人未踏の山脈と言われている。何故なら、登るのも、越えるのも困難な上、強い魔物が多く群れで居る、何時命を落としても不思議じゃ無いんだ。」

「でも、私達は此処までそんなに苦労して無いよね。」

「ショコラの力だね。」


「だから、この国境を越えて戦争を仕掛けるにはリスクが高すぎるし、それにそれだけのメリットは無いんだ。つまり国力を傾けるような戦いをする位なら戦わずに仲よくした方がいい。と言う事で各国の関係は良好なんだ。また、人がお互いの国を行き来し易くなれば、人だけで無く物やお金も一緒に動く。それはお互いの国には大きなメリットで、物やお金が動けば国民の生活が活気づくし安定する。」

「そうなれば国力も安定する。」

「そうだね、それと、両国を繋ぐトンネルがファインド王国側からリゼブラ王国側とサルマトリア王国側に一本ずつあるんだ。もちろん高い通行料や通行許可書は必要だが、人や物の動きも分かる様になっている。」

「じゃあトンネルを通らないとサルマトリア王国に入国できないの。」

「イヤ、トンネルは通らずにサルマトリア王国には入国できるよ、腕に自信がある冒険者はのんびり高い通行料払ってトンネルは通らないからね。それにアルフェノン山脈を越えてはいけないという決まりも存在しない。」

「そうなんだ。」

「だから冒険者は、比較的登り易く、国境を越え易い東側、つまりリゼブラ王国側のルートを越えて行くが、それでも無事この山脈を越えて隣国にたどり着いた冒険者の話は聞かない。無事アルフェノン山脈を越える事が出来れば何十年、イヤ一生暮らして行ける財を手に出来と言われている。このアルフェノン山脈越えるのが冒険者の夢なんだ。」

「だけど、どうしてそんなお金を手にする事が出来るの。」

「魔物も強いが、この山脈でしか手に入いらない魔物や素材にアイテムがドロップされる。それらは高く取引される。その代わり魔物との戦いに負ければ命は無い。だから夢なんだ。」

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