第10話 5年間


 その場所はもう少し王都の方に戻り、川沿いに登って行くと滝が有り、その横に洞窟が有った。その洞窟に住み着いた強い魔物が討伐依頼の件だった。

 洞窟を入って行くとそこは何と水中洞窟だった。透明度が有りかなり奥の方まで広がっている。所々天井から差し込む光が、洞窟の水に反射しとても美しい光景が広がり暫く見惚れてしまった。又、かなり深い所に魚が泳いでいた。

 見惚れている内魔物が現れた。オーガ五体とオーガキングだった。

 討伐体勢を取った時、突然人の声が聞こえた。

 オーガに倒された人が居ると思い、慌てて声が聞こえる方を見たら…⁉

 違っていた。

 そこには冒険者が五人いた。みんな死んではいないが、オーガと戦って居る様子でもない⁈

 彼等がオーガに向かって何か叫んでいる。

 するとオーガは振り上げていた腕を下ろし後ろに下がって行った。

 その隙に我々は洞窟の隅に居た彼等に近づき、何があったのか聞いてみた。


「私達は五年前まで王都でSランクの冒険者をしていた。ある日、我々は探索を終え王都の酒場で飲んでいる時、貴族の執事ベクレルと名乗る者から、その貴族の現妻に子どもが生まれ、前妻の五歳の娘が邪魔になり、誘拐して殺せ。と主から命を受けた。と、執事のベクレルが、その少女の誘拐と、「死の森」での殺害を、依頼して来た。気は進まなかったが提示された報酬額に目が眩み、依頼を受けてしまった。」

「その少女と殺したんですか?」

「分らない。」

「分らないとはどういう事ですか?」

「殺そうと首に手を掛けた時、魔物が近づいて来て、一緒に居た、執事のベクレルと共に、慌てて逃げ戻って来た。」

「じゃあ、死んだ確認をした訳ではないんだね。」

「ああ、でもあんな場所で五歳の少女が生きて行けるわけがない。」

「他に気づいた事は無かった?」

「そう言えば、王都に着いたとき、執事のベクレルが慌てて逃げたから、置いて来てはいけないものを持たせたままだ。ご主人様に叱られるとか何とか言っていた。」

「「死の森」から帰って報酬は受け取ったんだね。」

「報酬は確かに受け取った。此処に在る。」

「金貨百枚ですか。確かにこんな額の報酬を提示されれば目が眩んでもおかしくないが、何故このような場所で、このような状況になっているんですか?」

「報酬を受け取った後、魔物の討伐を依頼したいと森に連れ出され、今夜は此処で一泊しよう。と、勧められるまま酒を飲んだ。それに毒が入れられているとも知らず。」

「それで、この五年間良く死ななかったなぁ。」

「イヤ、そこのオーガ達が助けてくれたんだ。」

「何オーガ達が助けてくれただと?」

「そうだ、執事ベクレルの奴等は毒で動けなくなった俺達を殺そうと、剣を振り上げていたんだが、オーガ達が後ろから現れた事に気づき慌てて逃げて行ったんだ。

俺達も死んだと思ったよ。だが気が付いたら此処にこうして居た。彼等は薬草や飯を運んでくれたんだ。」

「食事はどんな物を食べていたんだ。」

「動ける様になるまでは、薬草や木の実だったな。動けるようになると、魚や肉。勿論生だけど。それを自分達で焼いて食っていた。始めはマズかったが慣れた。贅沢言てる場合じゃ無いし、俺達は自業自得だ。オーガ達には感謝している。」

「さっきオーガ達と話していたみたいだが、言葉は分かるのか?」

「ああ、なんとなくだが分る。」

「貴族の名前は聞いたのか?」

「いや聞いてない。」

「ここに居るみんなには、家族は居るのか。」

「ああ、みんな家族が王都に居る。」

「そうか、みんな心配しているだろうな。」

「もう五年も音沙汰なしだ、待っていてくれればいいが。」


          ◇ ~ ◇ ~ ◇ 


「それじゃあみんなはドララド村まで歩けるかい。」

「イヤ無理だな。」

「そうかでは、オーガ達に自分達をドララド村まで運んで貰えるか聞いてくれないか。」

「待ってくれ、聞いてみる。」

「〇×●△×〇▲〇●▲×△……。」

「〇×●△×〇▲……。」

「大丈夫だそうだ。」

「じゃあ、この四人の中で足の速いイアン、シアル。突然オーガ達がドララド村に現れたら大騒ぎになるから、冒険者ギルドのギルマスに先ぶれを頼んでいいだろうか?

それと、もし時間が有れば、この事を王都のギルマスにも伝えて貰いたい、それとリズの消息が分かるか尋ねといて欲しい。これも頼めるか?」

「ああ、了解だ。任せときな。じゃ先に出る。」


 と二人は洞窟から飛び出して行った。


「所で執事ベクレルの顔は覚えているか?」

「忘れようと思ったって忘れられない。」

「そうか分った。じゃあ、出発しようか。」


 オーガ五体が毒で病んでいる冒険者を運び、俺達は何故かオーガキングの両肩に乗せられ

 ドララド村を目指した。

 流石オーガ達の足だ、ドララド村までは半日も掛からず着いた。先ぶれを出して居たとは言え、ドララド村では大騒ぎになってしまった。

 只オーガ達が冒険者を助けたことは、村のみんなに伝えて居たので恐怖心ではなく、畏敬の目で見られていた。

 オーガのみんなに村の中の宿屋まで冒険者を運んでもらった。がこれからオーガに何処で過ごして貰うかが問題になった。

 村を出た直ぐ傍に洞窟が有りそこで良いか聞いて貰うと、大丈夫との事出たので、暫くその洞窟で過ごして貰う事になった。


 落着いたところで、ギルマスに呼ばれ、リュウガ全員でギルドを訪ねた。

 お互い挨拶を交わした後報告を始めた。

「お騒がせしました。」

「オーガ達の件については、先ぶれを頂いたので、慌てずに済み助かりました。依頼された通り王都のギルマスに伝え、リズと言う方の消息を依頼しました。もう暫く時間が必要です。と言うことでした。」


          ◇ ~ ◇ ~ ◇ 


「ありがとうございます。今回の件については、我々が王都からこのドララド村に来る事になった経緯が絡んできたようなので、まず王都のギルドで受けた討伐依頼の報告から、先に終わらせて頂きます。」

「一件目の討伐依頼は新生ダンジョン調査の件でした。こちらが報告書です。」

 と報告書作成しギルマスに渡した。

「確かに受け取りました。王都のギルドへ報告しておきます。」

「2件目の討伐依頼は洞窟に狂暴な魔物が住み着いて居るので討伐してほしい。との事だったので、今朝早くダンジョン調査の後そのまま洞窟へ向かいました。」

「その洞窟の魔物が彼等オーガだったのですね。」

「そうです。これが報告書になります。」

「此方も確かに受け取りました。報告しておきます。」


「では王都から此方に来た経緯を説明いたします。我々はこのドララド村に来る前に、王都の冒険者ギルドの依頼で「死の森」に出来た、森の新生ダンジョンの調査に向かい、ダンジョン探索中に、魔力と食料が尽きてしまい調査に失敗。命からがらダンジョンから逃げだした所で、今度は魔物に襲われ瀕死の状態になっていた所を、十歳のリズと言う少女に助けられたのです。」

「十歳の少女が「死の森」で生活を。ご両親はかなりの冒険者だったのですか?」

「イヤ、我々が聞いたのは、リズが魔物に襲われた時自分を庇い両親が襲われ死んだ。それが二年前、その後一人だった。と言う事だけです。その後暫く彼女に助けて貰い、みんな元気になった所で王都まで一緒に来たが、彼女は山々を登りたいから、途中で仲間を見つけて冒険する。と王都で分かれたんです。」

「でも何故、今回の件にリズと言う少女の行方が必要なのですか?」

「彼等がああなった原因が、リズに関係があると思ったからです。最も彼女は被害者ですが。」

「被害者?」

「彼等は、王都の貴族の執事ベクレルから、貴族の前妻の子どもが邪魔になり、五年前に五歳の少女を誘拐し「死の森」で殺すため、金貨百枚で雇われたそうです。

その子を誘拐し殺そうとした時、魔物が現れたため、死んだのを確認しないまま、逃げ帰って来たそうです。我々はその時の少女がリズではないかと思っています。」

「そうですね、年齢的には辻褄が合いますね。では無事逃げ帰った彼等は何故ああなってしまったのでしょう。」

「貴族の執事ベクレルから報酬を渡され、魔物討伐を口実に森に連れ出され、毒が入った酒を振る舞われ、動けなくなった所で殺されそうになった。そこに、魔物が現れ奴等は逃げたそうです。」

「その時の魔物がオーガだったんですね。彼等は何故冒険者を助けたのでしょう。良く生き延びましたね。」

「そうですね。何故助けたかは分かりませんが、薬草、果実、肉や魚を運んでくれたそうです。」

「貴族の名前は分かりますか?」

「聞いてないそうです。」

「良くわかりました。この事は王都のギルマスに伝えていいですか。」

「ハイ、よろしくお願いいたします。それから王都の家族に彼等の無事を伝えて頂けると助かります。彼等はSランクの冒険者ラスパルだそうです。」

「分りました一緒に伝えます。それから、リズの消息が届いています。」


「ラード村で、山々の踏破と討伐依頼を完了した後、また旅に出た模様ですね。行き先は不明だそうです。仲間が…‼」

「どうしたんですか?」

「どうぞこれが報告書です。皆さんでよんでください。」

と、渡された書類にはとんでもないことが書いてあった。

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