第3話  新な旅立ち


「王都に帰ったら、うちに入らないか?」

 団長さん他みんなに誘われました。

「ありがとうございます。ただ私にはこの世界で一番の山に登りたい。と夢があります。」

「そうか解った。」

「こんな私を誘って頂きありがとうございます。」


 王都に帰る前にリュウガのメンバー全員と団長さんからテントの中で話があるといわれ

「この万能テントの事はメンバー全員が忘れる。」

「リズも人に見せないほうがいい。悪い奴らに見せたら命を狙われるから気を付けろ。」

「ハイ。ありがとうございます。肝に銘じておきます。」

「王都ではテントの話は一切しない。誰が聞いているか、分らんからな。」

「絶対誰にも見せたらダメだよ。本当にダメだよ」

 とみんなに念押しされ王都に向かった。


 王都の門の手前でリュウガのみんなから無茶苦茶お礼を言われた。

 王都の入国手続きをリュウガの皆さんに手伝って頂き入国した。

 王都に着き王家の紋章を見た時、5年前この身体が持っていた短剣の穂鞘に刻まれた紋章と同じ物だと気づいた。

 思わずフードを目深に被り顔が見えないようにした。

 まず私は冒険者登録をするためギルドに向かった。

 私は冒険者登録を年齢で断られてしまった。

 リュウガのメンバーはギルマスにダンジョン調査の報告と報酬の受取に行っている。

 ギルマスの所から帰って来たリーダーにお願いしてみたら、ギルマスに直接交渉して頂け無事に冒険者登録してもらえた。

 その後裏路地で、彼等に行きつけらしいお祖母さんのやっているお店で食事を注文、出来上がるまでの間に、ダンジョン調査報酬とアイテム換金分を加えた合計金額の半分を渡してくれた。

 渡された金額にビックリして均等に分けた分でいいと言ったが、

「命を助けてくれた分も含めた正当な報酬だ。」

 とみなさんにも言ってもらえたので、ありがたく頂く事にした。



 その後リュウガのメンバーとの食事の時、この国の情勢をいろいろ教えて頂いた。 

 この国の国王さまと王妃さまはとても仲睦まじく子どもは王女殿下がお一人いたが、五年前何者かに攫われ今も消息が分かって居ない事。 

 また、その後国王さまがご心痛のあまり此処二年余り病の床に臥せってしまった。 

 王妃さまがご看病されているが国王さまの容態はあまり良くない事を教えてくれた。

 そして今この国の政務は王弟殿下が担っているが、その頃から税金が少しずつ上がり生活が段々苦しくなってきている事。

 国民のための政務を行って来た聡明な国王さまと違い、王弟殿下には素行の良くない取り巻きが多く、良からぬ噂がある事。

 このままもしも最悪な事になってしまった場合、国民にとって此の国はとても住みにくくなるだろうとの事だった。


「国民は国王さまの一日も早いご快癒と王女さまの帰還を待ち望んでいる。」

「王女様を捜すため、国王さまや王妃さまはギルドや闇ギルドを通して探しているが、なかなか情報が入って来ない。」と教えて貰った。


 もし、私が王宮に此の短剣を携え出向いたら王女と認め、お父様やお母様に逢わせて貰えるだろうか、イヤそもそも私を「死の森」に捨てたのが玉座を狙った王弟殿下だ。

 王弟殿下のお父さまに対する動きがとても気になるが、今私が出向いても王女を語った偽物として闇討ちされるだろう。それなら私自身がこの国の外でもう少し力を付け、私を攫った証拠や協力者を見つけて出直したほうがよさそうだ。


「リズどうしたボーっとして、大丈夫か気分が悪いんじゃないだろうね、顔が青いよ。」

「大丈夫です。ちょっと考え事をしていたので。」

「それならいいが、以前にも聞いたが、リズ此れからどうする、もう一度仲間になること考えてみないか?」

 と、リーダーから再度言われた。が、やはり山への憧れは捨てきれない。

 それに、この人達を私の事情に巻き込んではいけない。


「ありがとうございます。一旦ソロで始め、来るもの拒まずやってみます。」

「そうか残念だ。また俺たちと潜りたくなったら声をかけてくれ。それまで待っている。」

「ありがとうございます。これまでお世話になりました。お元気で。」

「俺たちこそ世話になった。また何処かで会えたら。」

 みんなで握手して別れた。


          ◇ ~ ◇ ~ ◇ 

             

 私は、山を踏破するには圧倒的に身体の成長と力が足りない。

 身体の成長はどうする事も出来ないので、時間が経つのを待つしかないが、力を付けるためにはその内ダンジョンにも潜る。

 森では既に魔物の探索や低い山から登り初めていたが、ダンジョンの浅い階も挑戦したい。

 私の夢は、の生涯でいつかこの世界で一番の山を踏破したい。と思っている。

 旅に出る準備のため、まず市場を回る事にした。

 凄い今まで見たことがない野菜・果物・肉・魚類に感激した。

 森と此の王国以外の事状が解らないので、野菜に果物数種と調味料数種類で、かなり多めになってしまったが足りないよりいいだろう。

 それと干し魚と干し肉、生肉・魚類もかなり買ったが足りない分は現地調達でいいかな?


 食器も多めと鍋は大・小各1個揃え、服と下着は1週間分位。

 この服も買って着替えなきゃ、今着ている服はこの国では目立っている。

 さっきからジロジロ見られていてかなり気になる。

 すぐに服を購入し着替えた。

「その着替えた服はどうするつもり?」

 と店主に聞かれたので、もし売れるなら売りたいと伝えた。

 この国では珍しいから高く売れる。と相場より高く買い取ってくれた。


 後は仲間を探すため、食堂で注文の料理が出来る間にソロらしき人が居たので声を掛けてみたが、手で追い払われた。

 もう少し仲間を探したかったが、先程の市場で気になる視線を感じた。

 その視線の先を捜したが分からなかった。

 ただ単に物珍しさで見ていたような視線では、無かったような気がする。

 どちらにしてもあまり長居しない方いい。

 今夜は王都で一泊したかったが、王都を出て森で野宿した方がよさそうだ。

 市場で欲しい物は揃えた。すぐに王都を出よう。

「王都に宿屋に泊まりたかったなあ、何よりお風呂に入りたかった。」


 仕方なく王都の隣村を目指す事にして、暫く道を進んだが、王都での視線が気になっていたので、本道から逸れ森の中を進む事にした。

 森を進むと、丁度崖の下で木々が茂った場所に着いた。 

 陽も陰り始めたので崖を背にテントを出し食事を早めに済ませ、入口をしっかり締め隠密を確認後休んだ。

 勿論焚火は目立つのでしなかった。

 夜中、数等のウマが何度も走る回る蹄の音が、遠く、近くに聞こえた気がした。

 翌朝まだうす暗いなか気持ちよく目覚め、まだ火は起こさないほうがいいと判断。

水と干し肉で食時を終えた後、テントを直して出発する。


          ◇ ~ ◇ ~ ◇ 


 本道には戻らずそのまま森の中を進み、仲間を見つけるため隣村を目指す。

 森を進んでいくと、遠くに人が倒れて居るのを見つけた。

 近づくと魔物に襲われ倒れた冒険者だった。

 慌てて近づき様子を見ると。


「まだ息がある。」 

 テントに入れて休ませよう。

 そして、その先にも魔物が倒れている? 何故か目が合った…!

 怪我はしてないみたいだけど臥せっている…?


「テントの中の人を襲ったらダメだよ。」

 と言い、休ませたがホントに襲わないか心配…?

 暫くして冒険者のほうが早く目を覚ましたようだ。


「ワー‼ だだだだだだだだだ誰かたすけてー。」

 中から突然大きな悲鳴が聞こえた。

 慌てて迎えに行くと、青ざめて救いを求める必死な形相の冒険者が居た。

 魔物は少し片目を開けたがまたすぐ目を閉じたので、そのままにして冒険者だけ外に出し事情を聞くことにした。

 冒険者をテントから連れ出し座らせ、温かい飲み物を渡し落ち着くまで待った。

 暫くすると落ち着いたようで、顔色も戻って来た。

 冒険者は少しずつ話始めた。


「彼はリゼブラ王国のSランクでソロの冒険者。」

 以前、彼はチームを組んでダンジョンに潜っていたが、例に漏れず金銭と女性絡みの問題でチームは解散。

 ソロでやってみようと、森に潜り魔物と闘いながら、隣国サルマトリア王都を目指していた。

 森を抜けようとした所、思った以上の魔物に襲われどうにか切り抜けたが、ポーションと魔力を使い果たし倒れてしまった所を、私に助けられたそうだ。


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