読了したので書きます。
島原の乱で死ぬはずだった反乱サイドの忍たちが異世界へと飛び、戦うというのが本作の基本的な要素となります。そして、この要素がこの物語において重要な役割を持ちます。
違う世界の者同士となるとまず決定的に違ってくるのは、価値観の違い。特に島原の乱の以前はドンパチ殺し合っていた戦国時代からまだ時間が大して経過しておらず、基本的に武断の面が目立っていました。つまり、命への見方がまるで違います。
ここ1つとっても価値観への齟齬が生じるわけですから他の要素にも当然当てはまるわけです。ネタバレになるので以降のことは書けませんが、丁寧な描写と比較には驚きました。
もう1つは、お待ちかねというべきか勿論「忍法」ですね。しっかりと設定と術の仕組みが練られています。中には結構えげつないものも含まれていますが、どれも時間をかけて作った術だろうことが分かる完成度です。特に最初と最後の忍法は絶句しました。
闇に生きる者たちが異なる世界、異なる術理に支配される世界で何を為すのか。
忍VS魔法騎士の戦いが幕を開けます!!
島原の乱、その戦場から忍法(!)で異世界に飛んできた切支丹忍びたち。
かれらの当主が転移の反動で死に瀕しているところを、村の司祭に救われる。
しかしその村は、「国を守るため」という名目のもと、魔法騎士たちの手によって横暴な略奪行為を受けていた。
忍びたちは恩に報いるために、魔法騎士たちと戦うことになるが……。
この物語、展開はシンプルで読みやすいのですが、その背景にとてつもないものを感じます。
何といっても、その文章の凄さ。
無駄のない淡々とした切り口、忍びたちの九州弁……歴史物を読んでいる感覚をしっかりと味わえました。
そうでありながら、忍法や魔法が凄まじい迫力!ファンタジーとしても楽しめます!
詳細な世界観の設定もまた魅力的です。
特に忍法と魔法の違いには非常に惹かれました。
それが、忍びたちと騎士たちの認識の違いとなって、物語を大きく左右する事態に!
そして何より、忍びたちの生きざまに心打たれました!
彼らが、これまでどのように生きてきたか、そして異世界でどうして戦うことにしたのか……胸が熱くなること、間違いなしです!
是非ともご一読ください!!!
寛永十四年。島原の乱。切支丹。忍者。
ガッツリ時代物かと思ったら、異世界転移。
魔法や司祭や騎士団がでてきたので、ファンタジーなふわっとした戦闘がはじまるのかと思ったら、大間違いでした。
自分の見識と読書範囲の狭さを恥じるばかりです。
歴史や忍者、宗教、民俗学、方言研究をしているわけではないので、正しいのか考証できないのですが、すごくリアルで人物たちが生きているような物語と感じました。
会話は方言、時代を感じさせる単語も随所にみられ、作品(人物、背景)に厚みがでています。
読めば、黒澤監督作品や忍法系の有名作品を思い出すのではないでしょうか。
忍び故の悲しい生き方、敵の勝利へかける残忍さ。
血生臭さ、泥臭さ、人間臭さ、散り際……とにかく、色々なものが生々しく感じられたお話で、ラストはとても余韻が残りました。
ごりっごりの武闘派ニンジャが異世界行って魔法軍団と闘いまくったら――
しかもそれがキリシタンニンジャで、死に場所を求める段階のニンジャだったら――
もうめちゃくちゃ面白い。
上に書いた設定だけでももう絶対面白いのに、巧みな文章に丁寧なルビ、
さらにこの異世界人が口にする魔法文言、
『球系魔法陣ッ一重三連────発現──火気、起動ぉ』
めっちゃカッコいい。好き。
さらにワタシが個人的にオススメなのは!
肥前訛り!
読みにくそうに思うくらい訛ってんのに、途中からこれがもう可愛くってしょうがない。
うっかりエセ肥前訛りが口をつくくらいに影響される今日このごろです(*⁰▿⁰*)
とにかくオススメですよコレは!!
全四十話を一気に読んで、今呆然としている。
あまりのおもしろさにつるべ打ちされたからで、この読後感は山田風太郎の忍法帖を読んだときの感覚によく似ている。
冒頭切支丹忍びの五人は敗北した原城から抜け出し異世界へ行く。
原城は島原の乱で反乱軍の居城となった城で、歴史好きはその名を聞くだけで血が騒ぐ。
その原城をのぞむ夜の海で繰り広げられる伊賀者との戦闘場面が、早くもクライマックス級のおもしろさで読者を一気に引きずり込む。
縫、嘉助、独居、勘解由の忍法はいずれも想像を絶するものだ。
この忍法のユニークさと、彼らと戦う異世界の魔法騎士の戦闘場面が最大のクライマックスである。
二千人の騎士対五人の忍びの死闘に説得力を持たせるのは至難の業だが、木山さんはそれに成功している。
これはとてつもないことだ。
三千世だけほかの忍びと少し毛色がちがう。
彼女の挿話はクトゥルフ神話のようなぶきみなスケールをたたえて、読む者をさらに深く戦慄させる。
本作を読んで山田風太郎の忍法帖を想起する読者は多いと思う。
自分はさらに黒澤明の『七人の侍』を思い出した。
忍びの最大のライバルとなる女司祭リコチノもよかった。
敵役らしい冷酷さとともに「勝ち続けなければならない」女エリートの悲哀もあってそこがよかった。
最後の四十話で簡単なレポートのように、このおそるべき大惨事の顛末が語られる。
そこに綴られた者たちの名前を見たら胸が痛くなった。
胸に迫る哀感は忍法帖とも一味ちがう木山さん独自の持ち味だ。
こんな読後感はめったに味わえない。
ぜひご一読をおすすめします。
読み始めてすぐに、圧倒的な熱量に心を奪われました。
異世界転移を扱った作品で、縫や独去、嘉助たし、『切支丹の忍たち』が、魔法の存在する異世界へと転移することで物語が始まります。
異世界では魔法を操る騎士たちが平気で民衆を虐げる。そんな場面に遭遇してしまった縫たちが、バッタバッタと敵を薙ぎ倒していく。そんな痛快な展開が描かれています。
この作品の何よりもの特徴は、縫たちが持っている『忍の技』の凄まじさ。
冒頭では、異世界転移する前に『島原の乱』での戦いのシーンが描かれますが、そこで縫が圧倒的な身体能力を駆使し、襲ってくる蜂たちを目にも止まらぬ速さで素手で潰していく場面が登場します。
この辺りのシーンを読んだ段階で、一気に引き込まれました。絶対に面白い話だろうと確信し、その後も彼らの活躍を見守って行くことに。
特殊なスキルではなく「鍛え抜いた技」という『達人』の境地が見せてくれる熱さ。
そして、死と隣り合わせの激しい状況に身を置き続けるという覚悟。
中島敦の『名人伝』や山田風太郎『伊賀忍法帳』や『魔界転生』を読んだ時の凄さとか、黒澤明の『七人の侍』を観た時の感動とか、とにかく「凄さ」、「熱さ」というのをひしひしと感じさせてくれる作品でした。
研ぎ澄まされた技や力が描かれる作品というのは、魔法やスキルで戦うのとはまったく別の面白さがあります。「もしかしたら現実にも可能なのかも」と思わされるような不思議なリアリティとか、「人間そのものの可能性」みたいなのを感じさせてくれるところが、胸を熱くするロマンに満ちているのだと思います。
そんな「人間の底力」や「人間讃歌」を描き切った本作、是非とも多くの人にオススメしたいです。
江戸の忍者たちが異世界へ――その独創的な発想だけでも、胸が高鳴る本作。単なる異世界戦記に留まらず、深い信仰と文化の交錯が織りなす壮大な物語が描かれています。忍術とキリシタン信仰という日本ならではのテーマが異世界の魔法文化と融合し、忍者たちの戦いは単なる生存のための戦闘を超え、彼らの信念や価値観そのものを揺るがす試練として展開されていきます。その葛藤が巧みに描かれ、読む者の心に深い印象を残します。
特に、一族を率いるリーダー・独去の内なる迷いと決意は、一族の未来を背負う者ならではの苦悩を鮮烈に表現しています。村人たちとの絆や敵国との対峙を通じて、彼の信念と覚悟がより一層深まっていく様子には心を揺さぶられるものがあります。異世界という異郷を舞台に、彼らが「信仰」と「忍術」という二つの柱をどのように貫いていくのか――その結末が気になって仕方がありません。
島原の乱から落ち延びた者が異世界に転移、と聞くと生き残れないと思いきや、さにあらず。
まだ日本に開国以前の文化が日常にあった頃、超常的かつ超人的英雄と悪漢の物語は和の装いで設定が作られ語られました。忍者が現実的スパイでなく魔法使いの如くに語られ海外に誤解を招いた、そんな物語が書店や映画館に並んでいました。最近は見ないのは、日常生活から和の装いが取り除かれ実感しにくくなったことと、相対性理論と量子力学に支配された世界で強引に超常現象を起こす無理が透けて見えるようになったからでしょうか。
本作で異世界転移するのは、そんな超常的妖術使い達です。法の目が無いなら、やりたい放題です。
迎え撃つ異世界は、きっちり異世界です。魔法も何でもアリ。
評者は「ゴジラ vs キングコング」を観ていませんが、コンセプトはそれに近いです。併存し得ない王者を二つ並べて頂上決戦、あとはお好きにどうぞ!
しかしおちゃらけてはいません。設定というより、エピタイと台詞における方言とフリガナの配分を見るだけで、おびただしい資料が投入されていることがうかがわれます。
いやあ、もう、ひたすら力が吹き荒れます。一般人は誰一人生き残れないでしょう。そんな世界に居続ける恐怖と高揚感!
といって「神々の決戦」ではなく、とにかく泥臭いです。その野趣も癖になります。
遊びましょう、人の死すら。