第41話 スライム手袋増産計画とこの世界の土魔法
特許制度によく似たリーガル商会と私の魔魚の契約については、私が付け加えた条件がごく当たり前の事と商会側が有利に成る内容だったので、その場で契約書に追加、私がサインし後はリーガル商会がサインするだけに成りました。
まぁこんな事が出来たのは契約書の作成者がローガンさんだったからなんですけどね。だってそうじゃないと、魔法契約書の書き換えが簡単に出来てしまいます。本当に魔法契約書は良く出来ている。同一の魔力を使って書かないと契約自体が成立しないように出来ているなんてね……。あぁそれと、魔法契約書は通常第三者が製作する物ですが今回は私とリーガル商会の契約だから、ローガンさんが第三者に成れたんです。
「マリア様、スライム手袋の契約内容も魔魚と同じように20年で消滅する内容で良いのですか?」
「それは構わないのですが、契約自体はもう少し考えさせてください。根本的な問題がありますからね」
「それはどんなことでしょうか?」
「それはローガンさんの要求する量が生産出来るかどうかという事です」
今はまだ良いですが、いずれローガンさんの要求する量は確実にもっと増える。その時に生産スピードとスライムが足りなくなるのが目に見えているのです。
「それって生産速度と材料になるスライムが足りなくなるという事ですか?」
「分かっているじゃないですか。スライムは数は居ても討伐には労力が掛かるし、生息数にも限度があります。それに生産する速度にも当然限界があります」
「でもマリア様がそんな言い方をすると言う事は解決方法に心当たりがあるということですよね」
この人本当に勘が良いというか、読みが鋭いですね。私に解決方法があると見抜きましたよ……。
「ない事もないですが、今はまだやってみないと分かりません。ましてそれをするには私の一存では出来ないのです」
それはそうでしょう。スライムの養殖をするにはそれなりの施設も必要ですし、その施設を運営する人も必要になります。まして生産速度を上げるにも新たな設備が必要に成るのです。そしてその全てを実行するはうちの村人ですから、私が勝手に決めて良い事ではないのです。
「それだけ聞ければ大丈夫です。マリア様なら何とかされるでしょ」
「いやいや、そんなに簡単に納得しないで下さい。私にも出来る事と出来ない事はありますよ」
「そんな事はあり得ませんね。マリア様とこの村の人には必ずやり遂げないといけない理由がありますからね」
ローガンさんの言う事は正しい。この領は風前の灯火状態ですし、それを領主を含めた領民が一番良く分かっている。だからこそこれまで領の為に成る事を覚悟をもってやって来ていますからね。
まぁ口では不平じみた愚痴も言いますし、何かと文句を言う事もありますが……。
「分かりました。そこまで言われるのでしたら、何とか頑張ってみます」
「はい、お願いしますね。――ところで話は変わりますが、マリア様! あの壁はなんですか⁉」
「え! 今頃」
「私だって直ぐにその話をしたかったんです。ですが、そこを我慢して模造品事件の事と先ずは契約の話しをしたんです! 今回の事にはリーガル商会も絡んでいますし、私の商売の話しもありましたからね。でも、それが済めば聞くのが当然でしょ! あんな壁のある村なんて私は見た事も聞いた事もありませんし、まして私がここを離れている期間も短いですからね。それなのに……、何時どうやって誰が作ったんですか?」
今までどうやって押さえていたのか分かりませんが、ビジネスの話しが終ったと思ったら、人が変わったようにローガンさんは村を囲った壁について私に詰め寄って来ました。
「あの壁は今後の事を考えて作りました」
「それは分るんですよ。この村はこれから色々と注目されるでしょうからね。でもそこじゃないんです! あんな強固な壁をどうやって短期間で作り上げたかが分からないんです!」
「そこ?」
おかしいな……、私があの壁を魔法で作ってる時に誰もそんな事言ってなかったけどな。確かに五歳の私が作ってるのを不思議そうな目で見ていた人はいたよ。それは私の魔力量が異常だという思いからの視線だと思ってたけど、違ったのかな……?
「そこ、じゃありませんよ! あの壁は何で出来ているんですか? 私は大きな町の防壁が石で作られているのは見た事がありますが、あんな素材で作られているものを見た事がありません!」
「あれはただの土ですよ」
「土の筈がありません! 土をどうやったらあんなに硬く出来るんですか⁉」
成程、触っては見たのね。だからあの壁の強度を知っているのね。でもあれは本当に土なんだけどな……。
「あの壁は土魔法で作って強化しただけですよ」
「土魔法? 強化……?」
う~~ん、何か話しが噛み合っていないような? 私は普通に土魔法で壁を作って、強化しただけなんだけどな……。土魔法が使える人なら普通に出来るでしょう……。まぁ魔力量のせいで私より時間は掛かってもね……。
「ローガンさん、一つ聞きますが土魔法で壁を作る事はないんですか?」
「冒険者や兵士が防御の為に一時的な壁を作る人が居るというのは聞いた事がありますが、防壁のような物を作った人の話しは聞いた事がありません。まして壁の強化なんて……」
何となく分かって来ましたね。この話の噛み合わない理由が。私は知りませんでしたが、この世界の土魔法は建築に使われていないようですね。以前もローガンさんはトーフハウスをみてかなり驚いていましたからね。でもそれならその時に言えよと言いたくなります。という事で言ってやりました!
「ローガンさん、以前トーフハウスは見た事あるじゃないですか。それなら壁ぐらい作れると思いませんか?」
「確かに見た事はありますが、あれで驚いたのはあんなものを見た事が無かったからです」
ん? また話しが噛み合っていないようですよ。トーフハウスを見た事が無かった?
「それって土で出来た建物を見た事が無かったという意味ですか?」
「そうです。普通はレンガや石で出来ているもので、それも町ぐらいでしか見た事がありません。それにあのトーフハウスは何時どうやって出来たのかも知りませんでしたからね」
成程、そういう事ですか。トーフハウスを見た事が無かったのと、知らないうちに出来ていた物だから、どの位の期間で出来たかを知らなかった。だからまさか魔法で作ったとは思わなかったのですね。ましてあの時は塗板とチョークの事で頭が一杯だっただろうからね。
「ローガンさん、あのトーフハウスも魔法で作ったんですよ。それも一晩で……」
「はぁ~~~あれを魔法で……、それも一晩で……」
じっちゃん謎は解けたよ。この世界では土魔法で建築が行われていないみたい。ましてそれが出来る程の技量(イメージ力)と魔力量がないという事が分ったよ。それにうちの村人は魔法自体に詳しくないからそういうもんだと勝手に思い込んで多少驚く程度で済ましていたという事もね……。
漸く謎が解けて気持ちが緩んだのか、前世の名台詞を絡めながら頭の中で解説してしまったが、まだまだ私が知らない事があるんだという事を改めて実感した。
もっとこの世界について知らないと駄目だね……。
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