第11話 社会復帰
「先輩……先輩……よかった、無事だったんですね」
この声は……
「先輩、ああ、こんなにやせ細って、大丈夫ですか? 津々浦先輩……
俺の事を聞いた? 会社の人に? えっと、どうしてそんなに俺の事を気にかけるんだろう、
それにしても
改めて
「う、
「私の事は、どうでもいいん、です。先輩って、意外と心が弱いところがあるから、先輩の方が、し、心配です」
「麗、苦しいんなら病院に戻りましょう? ね?」
「大丈夫、お母さん。もう少しだけ」
気が付かなかったけど、
「先輩、先輩の気持ち、ちゃんと聞きました。眠ってても、意外と声って聞こえてるもんなんですよ? 今度の昼食は、期待してますからね」
そう言われたけど、一体何の事かわからな……あ、ああ、ああああっ! 俺が集中治療室で告白した時の事か!!
ええっ、聞こえてたの? 本当に? は、恥ずかしい!
恥ずかしい……けど、今の俺は
「先輩、またネガティブなこと考えてますね?」
「こんなボサボサな姿になっても、助けられなかっ、たのは先輩のせいじゃないのに、自分が悪いと思っちゃったり、先輩は優しすぎます。だから……だから……」
「だから私は、先輩の事が大好きなんです」
言葉では言い表せない程嬉しい、嬉しいけど……随分と無理をしていたんだろう、
「麗、もう駄目よ、病院に戻りましょう? ね?」
流石の
そんな
「
母親は……俺の事を複雑そうな顔で見て会釈をし、何も言わずにタクシーに乗り込んだ。
タクシーが走り去っていくのを見届けて部屋に戻り、今日は顔を洗っていない事に気が付いて洗面台の前に立つ。
「誰だよ、これ」
鏡に映る俺は髪も髭も伸び放題、しかもボサボサで、どう見ても浮浪者にしか見えない。
それに少し太かった体は細くなり、顔もとても細く、いや痩せこけっていた。
よく俺だってわかったな
髭を剃り髪にブラシを入れ、会社に連絡をする。
床屋に行ったり洗濯や掃除をして一日が終わった。
翌日、久しぶりに会社に行くと、皆一瞬俺が誰だか分らなかったようだけど、挨拶と謝罪をして声を聴くと、ようやく俺だとわかってくれてホッとする。
あの課長でさえ「ゆっくりと復帰したらいい」と優しい声を掛けてくれて、他の社員も「あの課長が⁉」と驚いていた。
毎日会社に行き、帰りには
『てっきり野垂れ死んだのかとおもったナリ』
「ある意味死んでたかも?」
と相変わらずなチャットをしていると、なんだか昔に戻ったような気がする。
そしてゲームをしていると違和感を覚えた。
「あれ? ハイランクポーションの効きが悪くなってる?」
『先月か先々月辺りに修正が入ったよ。まあ死んでなけりゃ助かるってヤツから、乱数での回復になったんだ。運が悪いと一しか回復しない時もある。滅多にないけどな』
「一じゃ助かんないじゃん!」
『運営のやる事だ、今更いってもしょうがないだろ』
「じゃあ神官の『
『ハイランクポーション程じゃないけど、乱数になった。最低は五だけど、瀕死の状態じゃ効果は薄いな』
本当かよ。そんなんじゃ瀕死の時はどうしたらいいんだよ。
……ん? 瀕死に効果が薄い……だからエマは助けられなかった?
いやいや、流石に時系列が前後してる、エマが死んだ方が先で、修正は後のはずだから、エマが助からなかったのは、システムのせいじゃないはずだ。
久しぶりにゲームに入ったけど、相変わらず運営通信を読んでいないと違和感だらけなほどに修正が入っていた。
全く新しいものは無かったけど、修正修正また修正と、少々混乱してしまう。
そして寝落ちする事なくベッドで眠ると……こっちは毎日見ていた安宿のぼろい木のベッドの上で目を覚ました。
「こっちは相変わらずだけど、ま、今日も仕事といきますか」
冒険者ギルドへ行き依頼を受け、相変わらず一人ぼっちで依頼をこなしている。
階級はストーンだったのがアイアン→ブロンスに、剣士レベルは7となり、冒険者としては一目置かれる存在となった。
今日の依頼内容は護衛任務だ。
商人の馬車五台を十五人で護衛するんだけど、少し空きがあったから入り込んだ。
護衛に参加する冒険者は何度かパーティーを組んだ事がある連中ばかりなので、連携は問題ないだろう。
隣の街までの一泊二日の旅だけど、隣町は行った事のない街なので少し楽しみ。
初日は問題なく(といっても獣や魔物は襲ってきたが)終わり、夜の見張りも三交代で見張り問題なく(魔物の襲撃はあったが撃退)、誰も怪我すらする事なく隣町に到着した。
冒険者ギルドへ行き報酬を受け取り、始めて来る街を男数名で散策している。
屋台で買い食いをし、武器屋を回り、エッチなお店が並ぶ場所に到着した。
「よっしゃ! そんじゃオイラは可愛い子と遊んでくるぜ!」
「まて、俺も行く。ガーディナーも行くだろ?」
「いや、俺は良いよ」
「なーんだ、相変わらずの堅物だな。そんなんじゃいざって時に恋人の前で何もできなくなっちまうぞ?」
「そ、その時は考えるよ」
俺以外は店を順番に見て回り、好みの子がいた順に店の中に消えていく。
ふ~、どうせこっちはリアルでも童貞ですとも、ほっとけ。
エッチなお店の通りを小走りで駆け抜け、普通の商店街にたどり着いた。
あードキドキした。そりゃ興味が無いわけじゃないけどさ、こっちだってリアルってもんがあるんだし、
「そういえば今日の宿を決めてなかったな、手頃な場所を探そ……ん? 何の音?」
遠くから地響きのような、ゴゴゴゴという音が聞こえる。
その刹那、地面が大きく揺れたから何かに捕まろうとするのだが……
「じ、地震か! でもこの位の揺れなら……ダメだ!」
近くの家が崩れ始め、古い木製・石造りの家が崩れ始める。
耐震構造なんて無い時代にこの揺れはかなりの脅威であり、そもそもこの地方の人達は地震に対して免疫があるのか?
案の定人々は大混乱で家屋から飛び出し、世界の終わりだ、神々がお怒りだ、などと騒いで走り回っている。
地震は十秒ほどで収まったが、街の様子は一変してしまった。
新しい石造りの家はモルタルで石同士が接着されているが、石を積んだだけの建物は完全に崩壊しており、木製の建物は古いものは崩れ降り、新しい物もどこかにダメージを受けている。
もちろん下敷きになっている人やケガ人が多数出ている。
「救助しないと!!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます