第2話 トーキョー


 対鬼人戦闘用強化人間エイルがニホン軍の戦闘車両を走らせてトーキョーに向かう。中心部への高速道路を走っている最中、ガンッ! とフロントガラスに鬼人が張り付いた。エイルが左右にハンドルを切るが鬼人は振り落とされずにまだ張り付いていた。急ブレーキをかけて、エイルはドアを開けた。

「ガガガガッ」

「……」

「ニンゲンカ?」

「……」

「ヒサシブリノ、ニクダ」

「……」

 virus-XYZに感染した鬼人がフロントガラスから顔をエイルに向けて言った。

 左腿から掌銃を抜き出すと一発二発と鬼人の頭に命中させた。

「ガガガガッ」

「……」

「キカナイヨ、オレハ、キジンダカラ……」

 鬼人が跳び上がるとエイルに襲いかかった。エイルは瞬時に右へと体を動かすと右腿から短刀を抜き出し、背後から鬼人の首を裂いた。そして胸まで引き裂くと、心臓コアを突いた。紫色の血液が四方八方に飛び散った。

「……不味いな…………」

 エイルは額から垂れる紫の液体を舌で自らの口に誘い込むとそう言った。前髪を右手で整えるとエイルは再び車両に乗り込みトーキョーへと向かうのであった。


 エイルの使命はニホンにある生物科学研究所でvirus-XYZのワクチンを手に入れる事だった。正確にはワクチンの元になる検体が目当て。そしてそれを祖国へ持ち帰る事だった。エイルには鼻から〝ニホンヲスクウ〟事は考えていなかった。それはエイルの上司も同じだった。


 トーキョーとチバの境目辺りで鬼人の大軍に遭遇したエイル。もう少しで生物科学研究所に到着する予定が狂ってしまった。エイルの帰還は明朝みょうちょうの六時。それまでに命令された物を持ち帰らなければならない。

 戦闘車両のアクセルを思い切り踏み込む。猛スピードで加速する車両は鬼人の大軍をなぎ倒していく。だが少しずつガタが来たその戦闘車両は最悪な事に鬼人たちのど真ん中で停止した。

「ガガガガッ……ニクダ、ニク……」

「……」

 ガンッ! と運転席側のドアを叩く敵の群れ。エイルは僅かながらドアを開けると勢いよくそのドアを蹴り放した。波状的に倒れていく鬼人たち。エイルは手榴弾を前方に投げ、爆発によって開いた道を風を切るような速さで駆け抜けていく。

 だが、数が多すぎた。生物科学研究所への道は鬼人たちによって埋め尽くされていた。エイルは左腿から掌銃を抜き、的確に鬼人の心臓コアを狙っていく。そして襲いかかる鬼人には短刀で一閃、心臓コアを貫いた。一瞬の乱れもしない動き。銃声と屍肉が裂ける音がピアノの旋律のように美しく奏でられた。

 地面を蹴り上げ空中で一回転すると道路を照らしていたであろう街灯に降りた。目下には鬼人たちが蠢き、呻る。エイルは一匹ずつ相手にする時間は無いと悟り、街灯を身軽い足さばきで渡っていった。



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