第3章 9話 もっと近くに…

梓は、元が聞きたいことがあって誘ったんだと…

気が付いた…



「えっ、いいですけど…何ですか?」



「改まって言うのも、変なんですけど…梓さんと僕って、何処かで会ったことありますか?」



「いえ…ないと思いますけど…」



「そうですよね…僕の記憶では無いんです。でも…何か、遠い昔に会ったことがあるような気がするんです。すみません…変ですよね……ずっと話したいと思ってました」



「実は、私も…何か懐かしいような気がしてました」



「えっ、僕だけじゃなかったんですね。あの……光くんのお父さんとは離婚されたんですか?



「いえ…私は、未婚の母なんですよ。妊娠が分かってから、相手の浮気が発覚して…。元さんは離婚ですか?」



「離婚です…。うちも浮気です。どうしても許せなくて…親権も僕がとりました。離婚を機に引っ越してこの町に来たんですよ…」



「そうだったんですね…」



食事が運ばれてきて…



「とりあえず、食べましょう」



「はい」



元の食事の好みは、昔から変わらないな……



梓は、食べながら色々考えた。

元も、何か感じてるのか…

そう思うと、すごく嬉しかった…



「こうして食事をしていても…ずっと昔から一緒にいたような…変な感じなんです」



「私もです…」



「梓さん、また会って貰えますか?子ども達も一緒に…」



「本当ですか?嬉しいです」



梓と元は、連絡先を交換して帰った…



「では、また連絡しますね」



「はい…待ってます」



梓は、すごく嬉しかった…元も、梓に何かを感じてくれていた。

こんなことってあるんだ…

前回の人生でも、元はなんとなく気が付いていた。

でも、私達はお互いに相手がいて…どうしようもなかった。



もしかしたら…今度こそ愛し合えるかもしれない…



それから、元はよくメールをくれるようになった。

二人は、お互いのことをまずは知ろうと…

小さい頃からの話を、少しずつ話していった。



―――元さん、彼女いないんですか?



―――いないですよ…梓さんは?



―――いないです。



メールで、それも確認できた。



そして…

子ども達と一緒に、遊園地に出かけた。

私にとって…

元も、光も、湊も家族だ…

家族揃って会えることを、ずっと夢見ていた…

こんな日が来るなんて…



しかも、光と湊も仲良しで…

なんの違和感もない、家族そのものだった。



「今日は、ありがとうございました。光もすごく楽しかったみたいです」



「こちらこそ、すごく楽しかった。湊も楽しそうでした。久しぶりに楽しかった。また行きましょう」



「また、行きたいです」



「行きましょう」



家に帰ってからも…すごく幸せな気持ちでいっぱいだった。



それからも、元と湊と光で遊びに行ったり…

そんな日々を順調に送っていた。



元からは、好きと言われてもないけれど…

私を見る時の眼差しは、昔と一緒だった。



いつか、また元と愛し合えるかもしれない。

急がなくてもいい…

ゆっくり関係を進めて、いつか愛し合えれば…

元も、同じ気持ちならいいな…





そんな時…

梓のスマホが鳴った。

見ると…知らない番号…



―――誰だろう?



そう思いながら電話に出た。



「もしもし、梓?」



その声は、聞き覚えのある声…



その電話は、渉からだった…


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