第2章 8話 妹の恋人
あれから、元とも会えることもなく…
時は過ぎていった。
元は、岳の会社の人だし…
父の会社の担当だといっても…
梓とは接点もない…
会えるわけないよね…
葬儀の日、元は私にも気が付いてなかった。
もう、会う事もないのかもしれない…
祖父の1周忌が済んで…
少し経った頃…
岳が
「梓、来週の日曜日予定ある?」
「別にないけど…どうしたの?」
「いや…妹がさ、会わせたい人がいるんだって…」
「え?もしかして恋人かな?」
「そうかもな…ま、予定空けておいて」
「わかった。お昼に来るのかな?」
「そうじゃないかな…また聞いておくよ」
「そうね…それなら美味しい物を用意しなきゃね」
そして…
当日…お昼に来ることに…
梓は、張り切って料理を作った…
慌ただしく、準備をしていると…
ピンポンが鳴った…
「岳さん、ごめんなさい。出られる?」
「いいよ…」
「いらっしゃい…え?君だったのか…ま、どうぞ入って入って…」
そして、妹と一緒に入ってきた人を見て…
梓は、凍り付いた…
その人は、元だった…
「はじめまして…高木といいます。」
「初めまして…岳の妻です」
「ま、座って座って…」
梓は、驚きを抑えながら支度をする。
「お兄ちゃん、実は…私ね、高木さんと付き合っていて…今度、結婚しようと思ってるの…」
「そうか…全く知らなかったよ…君たちが付き合っていたなんて…」
「黙ってて、すみません…」
「いや、いいんだけど…こんな妹でいいのか?」
「とんでもないです。僕なんかが妹さんと付き合えるなんて…光栄です」
そんな、会話が繰り広げられている中で…
梓は、動揺を抑えられないでいた…
まさか…元が岳の義妹と結婚?
私は、どうしたらいいの?
そう思いながら…平静を装う…
「どうぞ…お口に合うか分かりませんけど…遠慮せずに食べて下さい」
「ありがとうございます。美味しそうです…頂きます」
元の笑顔は…顔は違うけど…
面影がある…
私の会いたかった元が、すぐそばにいる…
「梓さん、美味しいです」
「よかったです。沢山食べて下さいね」
「梓さんは、出版社に勤められていると聞きました…どんなお仕事を?」
「私は、営業部なんですよ」
「そうなんですね…それは、大変だ…」
「もう、慣れました…本当は編集部に行きたかったんですけどね…移動願いは出してるんですけど…」
「諦めなければ行けますよ。頑張って下さい」
そんな、他愛無い話が続く…
岳が…
「ところで、どちらからアプローチしたんだい?」
「私からよ」
そう妹が言う…
「へぇ…捕まってしまったんだね…高木くん」
「お兄ちゃん、ひどい言い方」
「僕も、いいなって思ってたんで…」
「もう付き合って長いんですか?」
梓は、聞いてみた…
「もう…2年になります」
そう答えた後で…
「結婚っていいですか?」
元が岳に聞いた…
「結婚はいいよ…俺はすごく幸せだよ」
「それなら、良かったです」
岳は、義妹に…
「頑張れよ…お前次第だと思うから…」
「分かってるわよ…」
梓は、複雑だった…
岳との生活を守りたいという気持ちと…
元が結婚をしてしまうというショックが…
ぶつかって…
どうにかなりそうだった…
やっと、元に会えたのに…
話せる状況になったのに…
なぜ?
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