第27話 教えてくれ
身体のありとあらゆる部分を洗われて。
寝巻きはこれまた可愛らしいドピンクのフリフリパジャマだった。
「愛花ちゃん可愛い〜!」
「ありがと……」
そう言う芽衣の方は随分とシンプルだ。
背が高いから女物で合うのが少ないからか、シャツとショートパンツ。
ただ足が長いから露出面積は半端ないし、胸も大きいので私なんかよりも数倍セクシーだ。
……まぁ別に張り合う事でも無いんだけど。
「んっ!」
そんな芽衣がデカいベッドの上で寝転がり、自分の真横をポンポンと叩く。
別に布団が敷かれている訳でも無いから、そうなんじゃないかとは思ってた。
「お邪魔します」
「いらっしゃーい♪」
芽衣のすぐ隣に寝転ぶと、私の頭を抱えるように抱き寄せる。
苦しい……けど、柔らかいし暖かいし良い匂いもするからそんなに嫌じゃない。
「……今日はありがとう、愛花ちゃん」
「どうしたんだよ急に」
「幾らお礼だからって、あんな子供や赤ちゃんみたいな扱いされたら恥ずかしいよね。
でも、おかげで私のお世話欲が満たされたよ」
「そうか。芽衣ママが楽しめたなら良かったよ」
「うん、愛花ちゃんのおかげ。本当ありがとう。……ねぇ、愛花ちゃん」
「なに?」
「私、愛花ちゃんのこと大好きだよ」
「なっ……!」
思わず芽衣の顔を見る。
すると、芽衣は私の顔を見て優しく微笑んでいた。
「な、なんだよ急に……」
「あはは、だって可愛いんだもん」
「え、あぁ、親愛の方か」
「性愛の方が良かった?」
「どうだろ……」
正直、芽衣みたいな美人に言われるならそれも悪くないと思う。
恐らく恋達からは性愛に近い感情を向けられているとは思う。
でも芽衣のソレは違う。明確に可愛い存在を愛でる、そんな感情だ。
そもそも同級生に対してこんな母性を爆発させる奴が恋愛的な意味で人を好きになるのだろうか、とすら思う。
あるいは……性愛感情を排除したいが故に過剰に愛でる道を選んだ、か。
「芽衣」
「……なぁに?」
芽衣ママ、じゃなくて芽衣と呼んだ。
それで雰囲気を察したのか、表情も何処か引き締まっている。
……言ってしまえば私は部外者だ。
今日だってお詫びやお礼の為に来ただけで、関係値で言えば友達と言えるかどうかすら怪しい。
それでも、気付いてしまった。気になってしまった。
芽衣と水城は私の好きな五行輪舞のメンバーで。
私の好きな恋達の仲間で。
そして、芽衣自身にだって好感を抱いている。
そして何より……それで困っていたり悩んでいるのだとしたら放っておけない。
「芽衣、水城と何があったんだ?」
「えー? 何があったって言うと……先週の事だよね?」
「違う、それよりも前にも何かが起きた筈だ。
二人の関係性を変えるような何かが……中学の時に」
「どうしてそう思うの?」
「先週、水城が芽衣を蹴った時に言ってただろ? また裏切るのか、また拒絶するのか……って。
その出来事が起きたのが中学の頃なんだろ?」
「根拠を聞かせてくれる?」
「あくまで推測だけど……部屋の距離が離れてる。
この部屋が物で溢れててベッドも大きいのに対して、水城の部屋は物が少なくシンプルだった。
まるでそこに住み着いてから日が浅いみたいに……
なぁ、元々此処は水城との相部屋だったんだろ?
それが何らかの原因によって、水城は離れた場所に部屋を移したんだ」
「元から別々の部屋を使ってたかもしれないよ?」
「芽衣は赤ん坊の頃からこの家に居た。
だとしたら、二人の子供部屋を離す理由が無い。
それに、朝に見せてくれたアルバム……中学の頃の2ショットの背景は間違いなくこの部屋だった。
あの水城が、芽衣の側から離れたいと思うような出来事があった筈だ」
「んー……この話止めない?」
「駄目だ!」
「わっ⁉︎」
話を途切れさせてはいけない……その思いが先行して、思わず芽衣を押し倒す形になってしまった。
芽衣の両手首をそれぞれ握り、ベッドに押さえつける。
芽衣の腕力なら簡単に振り解いて押し返せるだろうけど……少なくとも絶対に会話を続けたいという意思表示は出来た筈だ。
「芽衣言ってたよな? 元々は聖浦河女学院に通ってたのに、水城が荒れたから蒼ヶ谷に進学したって。
その荒れた原因が、この前言ってた裏切りとか拒絶の事なんじゃないのか?」
「それを知って……愛花ちゃんはどうしたいの?
私にだって知られたくない事ってあるんだよ?」
「それでも、今の二人は不健全だ。
数年前まで同じベッドで寝るぐらい仲が良かったのに、今じゃ水城は芽衣を下僕と呼んだ。
そして、芽衣もそれを否定しない……そんなの、嫌だ。
だから芽衣と水城が抱えている問題、私に教えてくれ。芽衣の力になりたいんだ……!」
「愛花ちゃん……」
芽衣の目が泳ぐ。
これは迷いの現れだ。
私だって半ば勢いで詰め寄ってる自覚はあるし、そもそもがただの憶測でしかない。
そんな私の言葉なんて、簡単に切って捨てられるだろうに……それでも迷っている。
「……これは、海里ちゃんの問題でもあるから。私の独断で勝手に話す事は出来ないよ」
「それでも頼む……っ」
「……はぁ」
芽衣は重い溜め息を吐いて……それまでの優しい微笑みから一転、鋭い目線を向けてくる。
「だったらさ、私の口を割らせてみる?
良いよ? 殴っても、えっちな事しても。絶対に喋ったりしないけ……⁉︎」
「ん……っ!」
「んぇっ……⁉︎」
言い終わる前に、芽衣にキスをした。
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