知らぬ罪

仮装の人物を作り出せるある商品を昔の友人の男からもらった。


装置を頭にはめ、

好きな人や嫌いな人それぞれを頭に浮かべると架空だが、実際にその人が目の前に現れる。


そして本人かのような動作をするようだ。


今日、仕事で疲れて帰ってきた。

最近は会社内での人間関係に悩みがある。


嫌味な上司に、やけに上司に媚びる同僚。


もし、その人たちを架空でもギャフンと言ってみたいものだ。



俺は早速、その装置をはめその2人を浮かべた。


するとその上司と同僚がスーツ姿で現れた。

会社内での2人の格好が反映されるようだ。


2人は俺を見ると、嫌な顔を浮かべ、

口を揃え、「また、君か。なんのようだ」と口を揃えた。



今まで2人に、嫌がらせを受けてきた。

自分が真面目なことを理由に、仕事にケチをつけ嫌なことを押し付けられ、挙句、どれだけ頑張ってもできてないと上司に言われる。



いっそのこと架空の人物ならば、日々の鬱憤を拳に込めてもいいのではないかと考えた俺は


ぎゅっと拳に力を込めた。

そして、同様に胸の高鳴りを覚えた。


いつも我慢していた怒りが発散できると思うとウズウズしてられなかった。


そしてそのまま俺は上司の顔に向かって一つの拳を突き上げた。


グワァッと声を荒げながら上司は倒れると

そのまま起き上がらなくなった。



架空の同僚はそれを見て逃げようとした

だが、俺はそいつを許そうとはしなかった。


同僚には散々裏切られてきた。

最初は親切だった。だがこいつは媚を売って嘘をつく人間だったってことがようやく分かった今、その同僚が憎くて仕方がなかった。


そして俺は同僚の後ろ姿を

思いっきり、殴りかかった。


大きな音とともに同僚は吹き飛んだ。


俺は息を吐く。そしてさらに倒れた2人に目掛けて俺は背中を殴り続けた。


これでもかと恨みを全て晴らすように

殴り続けた。


そして、鬱憤を晴らすと俺は殴るのをやめ

その場で倒れている2人を見ながら、笑みを浮かべた。2人は、そのまま口をあんぐりと開け動かなくなった。



次の朝、出勤前のことだった

いつものようにスーツに着替えていると家でチャイムが鳴った。なんだ、こんな朝にと少しイラッとしながら扉を開けると、2人の警察官が立っていた。


そして、その警察官は口を揃えてこう言った。


「田中英吉、加藤守、この2人を殺人した罪としてあなたを逮捕します。」


俺は口をあんぐりと開けたまま、

その警官2人を見つめた。


「なんだ?急に」


「今朝ですね、この2人が実家にて

殴られて倒れている姿が発見されましたね」


メモ用紙を見つめる警官に対し、

「いや、俺は2人を殺してなんかいないぞ

間違いじゃないのか」と反論すると


警官は笑みを浮かべながら呟いた。

「本当ですか?2人を殺してないとでも?」


「ええ、殺していないというか……」


すると警官は気の毒そうにこう言った。

「あなた流行りの架空人物マシンを使って、2人を想像して殺しませんでしたか?」


「はい、そうですけど

架空だから大丈夫なはずですよね?」


すると、警察官はため息混じりにこう呟いた




「昨今、法律が変わりましてね、

架空世界や仮想世界でも人を殺した実例が残ると罪問われる時代でして」と………


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