第24話「なんだって!?」

 その後、大魔王さんが何やら念じ始めた。


「どうやら本当に乗っ取られたようだ。城に残していた部下から念話で報告を受けた」

 大魔王さんが俺達の方を向いて言う。


「部下の方は無事なんですね」

「皆逃げおおせたそうだ。もし敵わん敵が来たら迷わず逃げろ、命を無駄にするなと厳命しておいたからな」

 やっぱこの人いい人だ。

 こういう人が上に立つ組織こそかもな。 


「それで、敵はどんな奴か分かります?」

「姿は見えなかったが、女性のような声だったそうだ。あと凄まじいまでの気を放っていたと」

「そうですか……」

 どれほどなのか分からないけど、


「勇者達よ、今度は共に戦おう」

「俺達の住処を奪い返すのと、鏡の奪還をな」

 ノミールとガーゴロンが言い、

「たぶん真の敵、この世のすべての敵」

「それに立ち向かうには、すべての者が手を取り合ってだよね」

 ヘルプスとデンキオウも言ってくれた。


 うん、今度は大魔王と四天王、大魔王軍が味方なんだ。

 これで勝てない相手はほんと神様くらいだろ。


「分かりました。じゃあ今日は休んで明日一番にで」

「うむ。皆もよいか?」

 大魔王がキクコちゃん達の方を向いて言うと、


「いいべさ」

「うん」

「はい」

 皆頷いた。




「まさか勇者と大魔王の共闘が見られるとは……隼人は歴史上最高の勇者かものう」

「そうだな。我らも可能な限り、手助けしようぞ」

「ああ、両方の世界を守るためにな」

 アギ、インダム、ミクラがそれぞれ語った。




 その日の夜は簡易的な和解の場をという事で、ミクラ様達の家で夕飯をとなった。

 話していて驚いたのは、四天王が俺達とほぼ同年代だったという事だ。


 一番年上のガーゴロンが二十四歳で、ノミールが二十二歳。

 デンキオウは十九歳、ヘルプスは十八歳だって。

 そんな歳で四天王ってと思ったが、全員優秀だって事だろな。


 あと大魔王さんは意外にも五十だった。

 魔族だしもっと上なのかなと思ったら先代が、大魔王さんのお父さんが二十年程前に病死したため若くして継ぐ事になったって。

 お父さん、まだ五十過ぎだったらしい。

 うちの父親も五十でだったな……と言ったら互いの父親の話になった。


 ほんともっと長生きしてほしかったと最後は二人で泣いて、周りは若干引いていた……ごめんなさい。




 次の日。

 大魔王さんの魔法であっという間に城の前に着いたが、


「……俺でも分かるくらいだ」

「な、なんだべこの邪気は?」


 城が薄黒い霧に覆われていて、寒気がする。


「……もしや悪しき縁、妖魔か?」

 大魔王さんが城を見ながら言った。


「え、それってたしか」

「ああ、憎しみ妬み悲しみを増やし、それを糧にして増え続けるものだ」


「それじゃほんとに全ての者の敵だな」

 ユウト君も城を見ながら言った。


「大魔王様、勇者殿。もし雑兵がいた場合は俺達が引き受けますので、皆様でその敵を」

 ガーゴロンが前に出て言った。


「ああ。だが死ぬなよ」

「ははっ!」


 そしてガーゴロンとノミールを先頭に城に入り、中へ進んでいったが。


「玉座の間からしか気配がせぬな。来るなら来いという事か」

 大魔王さんが辺りを見ながら言った。


” 皆、気をつけろ。この先にいる奴はハッキリ言ってかなりヤバい ”

” うん、さっきから姉と交信しようとしてるんだけど、全然届かないんだ ”

 剣さんと勾玉さんが言った。


「じゃあ神器は、鏡さんは封じられているという事?」

「そんな事できるの神様くらいだべ」

 ユウト君とキクコちゃんが身震いしながら言った。


「うわ……」

 友里さんも震えていたので声をかけた。

「あの、大丈夫ですか?」

「え、ええ。ちょっと怖いですけど、大魔王さん達まで味方になってますから心強いですよ」

 うん、ほんとそうだわ。


「むううう、隼人さん、あたすの心配してくれねえべさ」

 キクコちゃんが頬をリスみたく膨らませていた。

「え、いやしてるけどさ」

「いいだべいいだべ、どうせあたすはか弱くねえべ」

 そっぽを向く仕草が可愛い、ってそんな場合じゃない。


「ははは、痴話げんかは終わってからにしてくれ。ところでこの方も来てるが、いいのか?」

 大魔王さんが指した方を見ると、


「え、あ?」

「なんだね、今頃気づいたのか?」

 そこにいたのはジョウさんだった。


「ジョウ兄、なんで来たんだよ?」

「兄さは体力ねえのに」

 ユウト君と機嫌直したキクコちゃんが尋ねると、


「いや、もう一つ秘密兵器持ってきてたんでね、それでだよ」

「……まあ、あてにはするけどさ」

 どんなものだろ?




「さあ、着いたぞ」

 玉座の間の扉はほんと如何にも大魔王の間って感じのおどろおどろしいものだった。本人はいい人なのに。


「では、我々が扉を開けますので」

「もし攻撃してきたら頼むぞ、デンキオウとヘルプス」

 ガーゴロンとノミールが扉の前に立って言う。


「せえの」

 二人がゆっくりと扉を開けると、玉座が見えた。


 そこに座っていたのは、真っ黒な覆面と黒いドレスを纏った奴だった。

 覆面から長い黒髪が出ていて、組んだ足には黒タイツが見える。

 やっぱ女性か?


「よく来たわね。いえおかえりなさいかな?」

 そいつが座ったまま言うと、


「む、あの時の密偵……やはりお主だったか」

 大魔王さんがそいつを睨んで言った。


「うん、あんた達が奪ってきてくれたらよかったんだけどね。まあいいわ、神器ちょうだい」

 そいつが手を出して言ったが、


「あのな、はいどうぞと渡すと思ってるの?」

 俺は思わず前に出た。


「それもそうね。けどあんた達を怪我させたくないからさ、おとなしくちょうだい」

 また手を出して言う。


「その前に、神器で何をするつもりだよ?」

「何って、全ての世界を消してやるのよ」


 なんだって!?

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