第22話「いっぺんに来るな」

 そこにいたのは……ええええっ!?


「ふふふ、俺は大魔王四天王が一人、ノミールだ」

 腕が六本ででかい頭の怪物が、

「同じく大魔王四天王の一人、デンキオウ」

 立派な角に全身から火花が飛び散ってる怪物、

「大魔王四天王、ヘルプス」

 大きな鳥のような怪物、

「オレが最後の一人、ガーゴロンだ」

 恐竜みたいな顔で筋肉質の怪物。


「そして余が大魔王ゴースドンだ。あ、これつまらないものですが」

「あ、どうも」

 真っ赤なローブを着た顔は青くて長髪のたぶん男がミクラ様に手土産を渡して、って。


「大魔王と四天王がいっぺんにってか、普通に訪ねて来るなあ!」

 思わずツッコんでしまった。


「なんだ、よそ様の家に行くなら手土産くらい持っていくべきだろうが」

 この大魔王、礼儀正しいわ!


「いや、大魔王様は城で待っていてくださいと言ったのだがな」

 ガーゴロンという奴が言うが、

「勇者と聖女が二組いるのだ。全員でかからねば犠牲者が出てしまうわ」

 なんか優しい大魔王だな……。


「ぐぎぎ、これだと苦戦するじゃねえか」

 ユウト君が歯ぎしりして言い、

「あんの、ここじゃ迷惑がかかるから町の外でしねえべか?」

 キクコちゃんがそんな事を……。


「いいだろう。余とでむやみやたらに破壊したいわけじゃないからな。では外で待っているぞ」

 大魔王達は律儀に出て行ってくれた。


「まあ、今のお主らなら倒せるじゃろ」

 アギ様がそう言ってくれたが、どうだろうか。

 とにかく俺達は町の外へ向かう事にした。




「ふふふ、よく来たな」

 大魔王が律儀に待っていてくれた。

 ほんとなんかいい奴っぽいな。


「さて、そちらがよければすぐにでも始めようか?」


「皆、いい?」

 俺が聞くと皆頷いた。


「キクコ、魔法で先制攻撃してくれ。その後おれと隼人さんで切り込むから」

「分かったべ。んじゃ……爆発魔法!」

 キクコちゃんが魔法を撃ち、


「ぬうっ!」

 大魔王はそれを受け止めたが、動きも止まった。


「行くよ!」

「ああ!」

 ユウト君と一緒に飛び出したが、


「そうはさせない」

「え? うわあああ!」

 ヘルプスが空から爆撃してきた!


「くらえ」

 そしてデンキオウの角から電撃が走った!


「あ、皆さん! えーい!」

 友里さんが防御膜を張ってくれたので電撃は防げたが、


「くっそ、向こうも連携してじゃ」

「そうだ。友里さん、おれと隼人さんに身体能力アップの魔法かけて」

 ユウト君が言う。

「え、はい」


「え、どうするの?」

「なんとか各個撃破していこうよ。キクコ、後ろから援護して」

「分かったべさ」


 うん、やっぱユウト君の方がだわ。

 っと。


「でりゃああ!」

 俺達はまずデンキオウに狙いを定めた。


「させない」

「うん」

 ヘルプスがまた爆撃してきて、デンキオウも電撃を放ってきたが、


「よっと」

「おっ」

 魔法のおかげで楽々とかわせた。


「う、当たらない」

「おのれ」


「ノミール、ガーゴロン、抑え込め!」

「ははっ!」

 大魔王の号令で二人が飛び出した。


「よし、隼人さん」

「うん。聖光招来……!」

「聖風招来……!」

 俺とユウト君は二人目掛けて技を放った。


「ぐ、まずい!」

「ギャアアー!」

 上手く命中し、二人は倒れた。


「ああっ! 二人共、大丈夫!?」

 ヘルプスが慌てて降りようとした時。


「あんたも倒れるべさ!」

「え、しまった!」

 キクコちゃんの爆発魔法を受けたヘルプスが墜落していった。


「よっし、あと二人だ!」

 ユウト君が叫んだ時だった。


「させない、大電撃」

 デンキオウが全身から電撃を放ってきた。


「うわあああ!」

「きゃああ!」

 今度は俺達が避けきれず倒れてしまった。


「やった……皆、褒めて」

 デンキオウも力を使い果たしたのか、その場に倒れた。


「皆、よくやってくれた……必ず勝つぞ」

 大魔王が俺達に近づいてきた。


「ぐ……させるか」

 なんとか立ち上がれたものの、思うように体が動かない……。


「死ねえ!」

 大魔王が大きな火の玉を放ってきた。


 だが、

「……何?」

「え?」


「な、なんとか隼人さんだけは……」

 友里さんが俺に防御膜を張り、体も少し回復してくれていた。

 皆は直撃ではないにしろいくらかはダメージを受けていた。


「ふふ、やるな。だがこれまでだ。……」

 大魔王が何かの呪文を唱え始めた。



「あ、あれ極大五芒星魔法だべ?」

 倒れていたキクコちゃんが、

「え、それってお師匠様とキクコさんだけしかなんじゃ?」

 膝をついたままの友里さんが言い、

「んにゃ、大魔王ならできてもおかしくねえべさ」


「くっそ……あ、そうだ!」

 ユウト君が声をあげて俺に向けて手をかざした。


「え? あ」

 分かる。

 ユウト君の力が合わさっていくのが。 


 そして頭に浮かんできている、新たな技が。


「隼人さん、それならいけるかも!」

「うん!」


「させるか、はああっ!」

 大魔王が大魔法を放ってきた。


 だが、


「聖光招来金剛破邪……光竜剣!」

 力いっぱい剣を振るうと、光り輝く竜の形をした気功弾が切っ先から放たれ、


「な? うぎゃああー!」

 大魔法を消し飛ばし、そのまま大魔王に激突した。


「や、やったか……」

 大魔王は倒れた後、ピクリとも動かなかった。


「やったみてえだべ!」

「よかった。あ、皆さんにも回復魔法を」


「やったね、隼人さん」

「うん、ユウト君のおかげだよ」


「皆の衆。まだのようじゃ!」

 アギ様の声が聞こえた。


「え? あ」


 見ると大魔王と四天王が起き上がっていた。


「ぐ……皆、すまぬがこうなったらあれを」

 大魔王が四天王を見渡して言う。


「構いませんよ。我らの命、お預けします」

 ガーゴロンが言うと他の四天王も頷いた。

「ありがとう……では」


 大魔王が両腕を上げると、四天王が黒い霧に包まれていった。

 そして大魔王もその霧に包まれ、それが段々と大きくなっていき……。


「え? ……うええええ!?」


 十メートル程の巨大な筋肉質の体に六本の腕、大きな翼、額に大きな角を持った大怪獣がそこにいた。


 ってもしかして。


「余は合体超魔獣・エビルゴースドンだ!」

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