第21話「……はあああっ!?」
翌朝。
朝食を終えた後でアギ様が話し出した。
「さて最後の場所じゃが、いきなり行っては危険じゃから近くの町に送ってやろう。そこからだと二日程かな」
アギ様が地図を出し、その町を指して言った。
「あの、この町って侵略されていないのですか?」
大魔王の城の近くなんだし。
「ああ、大魔王も今は静かにしておるからのう。それにかの町にはあと二人の補佐役神がおるから攻め込めんじゃろ」
アギ様が俺の方を向いて言う。
「あ、もしかして大魔王が現れたから?」
「そうじゃ。町を守るため結界を張りにいったんじゃ。というかワシも合流するつもりじゃ」
「私達を待っていてくれたのですね」
友里さんが言うと、
「そうじゃよ。さ、行こうか」
その後、アギ様の術であっという間に町に着いた。
外壁で囲まれていて、なんというか中世ヨーロッパのお城って感じだな。
大きなゲートもある。
「おお、待ってたぞ」
「そちらが勇者達か。ふむ、今までで一番かな」
ゲートの前で出迎えてくれたのは、逆立った白髪のお爺さんと白髪モヒカンのお爺さん。
「儂はミクラじゃ、よろしゅうな」
逆立白髪のお爺さん、ミクラ様。
「わしはインダム。ようこそ勇者達よ」
モヒカン白髪のお爺さん、インダム様。
「あ、よろしくお願いします。あの、お二人共神様なんですよね」
俺が尋ねると、
「そうだがここでは旅のじじいじゃ」
ミクラ様が頷いて言い、
「兄弟で旅していてな、ここで末弟を待っていた、なんちゃって」
インダム様が……。
「……寒いよ」
「もう春なのにだべ」
ユウト君とキクコちゃんが苦笑いして言い、
「あ、はは」
友里さんは無理して笑っていた。
「こら、つまらん洒落言うでないわ」
アギ様がインダム様に近寄って抗議した。
「ウケると思ったのだがなあ」
「まあまあ。さてと、三人揃ったしあれやるか」
「そうじゃな。皆、ちょいとじっとしていてくれ」
そう言って御三方は横一列に並び、
「はああっ!」
一斉にこちらに手をかざしたかと思うと、俺達の体が光り出した。
「え? なにこれ?」
「これで防御力は最大級になったぞ」
「あと並の魔物は近寄れんようにもしたぞい」
インダム様とアギ様が続けて言った。
「あ、ありがとうございます!」
やっぱ神様だ、すげえ。
「いやいや。さあ、ここでの儂らの家で話そうか」
俺達はミクラ様の後に着いて行った。
そういやお三方の名前……。
いや、言わないでおこう。
着いた家はやはり中世ヨーロッパかなって感じで、木と石を合わせて建てたような小さな家だった。
ミクラ様曰くここいらだとこれが一般庶民の家らしい。
中は質素な造りだが、外から見た倍以上の広さだった。
やはり神様の力か。
部屋の中央にテーブルがあり、皆が席についた後でミクラ様が話し出した。
「城の方を探ってみたのだが、大魔王には四天王もいるみたいじゃ」
「だから戦うとしたらそいつらとが先だろうな」
インダム様も後に続けて言った。
「なんかベタだけど、ゲームじゃないからなあ」
「四天王ってどのくらい強いんだべか?」
キクコちゃんが聞くと、
「そうだな、四天王はスライムと同等レベルかもな」
……はい?
それだとそんなに。
「ひゃあああ、そんなにだべか?」
「う、うわ」
キクコちゃんとユウト君が冷や汗をかいて言った。
「え、あの? スライムってそんなに強いの?」
ゲームみたいに雑魚じゃないのか?
「んだ。スライムはお師匠様や勇者マヤ様でも簡単には勝てねえそうだべ」
キクコちゃんがそんな事を言……は?
「待て、それ滅茶苦茶強いだろ!? もし四天王にそれ以上のがいたら」
「ああ、それは大丈夫だよ。スライムは聖獣で悪い奴はいないみたいだから」
ユウト君が手を振って言う。
「あ、そうなんだ?」
「うん。初代勇者様の仲間にはスライムもいたって伝説があるくらいだし」
そうなのかって、なんかそんな話どっかで見た事あるような気がする?
「あの、スライムさんってどこにいるのですか?」
友里さんがユウト君に尋ねた。
「どこだろなあ? おれは見た事ないんだよ」
「あたすもねえべさ」
「ああ、スライムはだいたい森か山の涼しい場所におるが、数が減っとるからそうそう見かけんじゃろな」
アギ様がそう言った。
「そうなのですね。いえ力を貸してくれたらいいのになと思って」
「陰で悪意の魔物と戦っとるから、充分手助けしてくれているぞ」
そうだったんだ。
「そうだべか。あんの、人間達が感謝していたって伝えられねえべか?」
キクコちゃんが言うと、
「ああ、折を見て神託しておくぞ。ふう、ちょいと喉が渇いたのう」
アギ様が喉を押さえてそう言った。
「ああすまん、茶を出してなかったな。ちょいと待っとれ」
ミクラ様がそう言って立ち上がった時だった。
「ごめんくださーい」
玄関の方から声が聞こえた。
「おや、誰じゃ?」
アギ様が玄関の方を向き、
「聞きなれない声だから近所の者ではないな」
インダム様が首を傾げた。
「はいはい、どちらさんで……は?」
ミクラ様がドアを開けると、そこにいたのは。
……はあああっ!?
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