第2話

 さて、ここでダンジョンについての説明をしたいと思う。


 異世界との接触により地球世界に魔法の素になる、ラノベでは魔素とかマナと呼ばれる後に魔素が正式名になった物が流れ込んだ。


 これにより、地球のあらゆる生物にも変化が訪れる事になった。


 このまま放っておけば、魔素に対する免疫が全くない地球生物は魔物化する恐れがあった。


 更に、このまま何もせず魔素が垂れ流しになると異世界では魔素が足りなくなり、魔法やスキルが使えなくなるだけでなく、世界が崩壊する可能性まであった。


 水が高い所から低い所に流れるのが必然のように、この魔素の流れを止めるにはかなりの魔力やら何やらが必要で、これは異世界の全人類が協力しても難しい事だった。


 そこで異世界の神様(本物!)が、魔素の流れをコントロールするダムの役割をダンジョンの形にしたのだ。


 流れ込む魔素を使ってダンジョンに魔物や宝箱を作成し、地球に魔素が拡がらないよう固定するのだとか。


 そこで発生する魔物を倒す事で魔素を吸収し、地球人は少しずつ魔素耐性が強化されて魔物化を押さえられ、魔物から取れた魔石やアイテム等を異世界に戻す事で魔素が循環する事になり、世界の崩壊を止められるのだそうだ。


 少しずつ魔素が減るのは変わらないと思うのだが、急激に減るから変化に着いて行けず崩壊する可能性があるだけで、緩やかな変化であれば世界が進化する事で対応するのだとか。


 なので、地球でも少しずつ魔石やアイテムが流通する事でダンジョンに行かなくても耐性が出来、緩やかな進化へと移行するそうだ。


 それから、神様がいるなら穴を塞ぐとか出来そうなのだが、神様にも一定のルールがあるらしく、そこまで大規模な介入は出来ないと言う事らしい。


 異世界にはダンジョンのシステムが既にあるので、ダンジョンを作るのは神様の権限の範囲内って事でギリギリセーフだそうな。


 なら、地球の神様はどうなのかと思ったら、地球の場合は魔素がないため実体を持つほどの力がないのだとか。


 概念としては存在しているので、地球の魔素が増えて定着すれば実体化も夢ではないらしい。

 ただ、数千年くらいかかるそうなので、俺としてはいないのと同じなのだが、宗教国家なんかは納得していないっぽい。


 ま、宗教については賛否両論あると思うが、本人が信じる事で救われるのなら、家族や他人に迷惑をかけなければ好きにすれば良いんじゃないかな。


 一つだけ言いたいのは、すぐに金の事を言うヤツは宗教家でなくても詐欺師の常套句なので、信じる必要はないって事だ。


 株やら投資やらで簡単に儲かるなら、自分達だけで独占する方が良いに決まっているし、なぜ他人の金を宛にする必要があるのか、普通に考えたら矛盾だらけだ。


 儲けた金を更に注ぎ込んだとしても確実に儲かるなら、自分の金だけで儲け続けられるはずだろうに。


 おっと、少し話が逸れたが、兎に角そんな訳でダンジョンが出来たんだよ。


 で、まあ、説明の中にもあったように、魔素耐性がないと魔物化する可能性があるので、ダンジョン探索入れるのは耐性を持つ人に限られる訳だ。


 耐性なんて無いんじゃあと思ったら、初めに穴が空いた時に極少量ではあるが魔素が流れ込んだため、人類のみならず耐性を持つ生物が存在するようなったのだとか。


 魔素が流れ込んだと聞いて、耐性がない生物が魔物化するのではと騒がれたが、濃度が低いので大丈夫との事。


 例えるならば、琵琶湖に目薬を1滴か2滴落としたくらいなので、薄過ぎて魔物化はしないのだとか。


 それから耐性無しとは言うが、アレルギーと同じで人によって症状が出るまでの容量があるので、本当に耐性0の人はほぼいない。

 つまり、ダンジョンに入れるだけの耐性が無い人を耐性無しと言っているのだ。


 兎に角、魔物を倒さなければ魔素を異世界に戻す事が出来ず、ダンジョン内の魔素が溢れて魔物の氾濫スタンピードが起きるので、魔物を倒すための探索者関連の法が定められた。


 異世界人が来て倒せよと言う意見もあったが、異世界人も魔素を持ってるので、あまり大勢が行き来すると地球上の魔素が増え過ぎると言う事で、必要最低限にしているのだとか。


 そこで初めは自衛隊や警察官などが対象となったが、流石に災害時のような一時的な派遣ならまだしも、恒久的に続けるには無理がある。


 新たにダンジョン庁が設けられ、各都道府県に探索者協会ギルドが設置され、全国民に魔素耐性の検査が実施され、18歳以上に探索者資格の受講が認められた。


 経済破綻の一歩手前まで行っていた日本では、公共職業安定ハローワークに併設されたりと、経費節減も兼ねて新たな職業としての定着を狙ったのが当たったのか、異世界転生などの文化にハマったのか、想定以上に探索者資格を取得する人がいた。


 だが、想定外だったのは、資格は取ったけれども実際にダンジョンを攻略する人が少なかった事だ。


 欧米諸国などの銃社会では早い段階で魔石の安定供給が叶ったが、なんせ平和ボケとまで言われていた日本人には、魔物の恐ろしさや生物を殺す事への忌避感などもあったのだろう。


 試しに1度は入ってみる人はいても、続けられる人は少なかった。

 SNSや動画サイトで魔物の弱点やら倒しかたやらを載せてみたりもしたのだが、グロ耐性がない人からは批判が続出した。


 そこで困った政府が異世界の外交官に相談をしたら、またまた神様が対応してくれたのだった。


 日本のアニメやゲームを参考に、魔物をゆるキャラのような見た目に変え、倒した時も血や内臓は出ずポリゴンのように消える仕様にしてくれたのだった。


 だが、それはそれで、魔物とは言え可愛い見た目の生き物を殺す事が出来なくて大怪我を負ったり、なぜか動物保護団体まで反対運動を始める騒ぎになった。


 またもや神様に頼る事になったのだが、結局は見た目は戻して倒すとポリゴンのように消える仕様で落ち着いたのだった。


 中にはリアリティーを追及したい本格派の人が外国に出て行くなんて事もあったが、一部のダンジョンをリアル仕様にする事で人材の流出は防げた。


 やはり本格派の人の方が高ランクになるので、人材の流出は避けなければならないからだ。


 更に人材を確保するため、ポリゴン仕様のダンジョンには16歳から入れるように新たな法律が出来たのだった。


 ランク制を導入し、ダンジョンの難易度で入場制限を設け急速に制度が出来ていく中で、スクールカーストならぬダンジョンカーストがいつの間にか形成されてしまったと言う訳だ。


 まず真っ先に出来たのが、魔素耐性を持たぬ能無しノースキルだった。


 魔素耐性がないため、魔素を吸収できずスキルを覚えられない事から言われ始めたのが始まりだった。


 そして、俺もこの能無しだったと言う訳だ。


 それから、探索者資格を持ちながらダンジョンに入らない臆病者カワード、低ランクのポリゴン仕様しか入らない弱虫ウィンピー等に派生し、上位カーストではリアル仕様に入る勇者ブレイブ、高ランクダンジョンに入る英雄ヒーロー等もあるが、そちらは総じて二つ名で呼ばれる事が多い。


 俺は能無しと診断されてからは、ダンジョン関連には極力近寄らないようにしているので、学校で習った事以外ではテレビなどで偶々見た事くらいしか知らないけど。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る