『イワシダンシングの実験金魚』という、一度聞いたら忘れられない奇妙な言葉。それをきっかけに巻き起こる、わずか数分間の出来事を描いたこの短編は、シュールでありながら、妙にリアルで、じわじわと読者の思考に入り込んでくる不思議な力を持っている。最初のやりとりはごく日常的で、大学の研究棟の廊下という舞台も、どこにでもありそうな空間だ。だからこそ、その“日常”に突如として差し込まれる「イワシダンシングの実験金魚」という不可解な言葉が、異様なほどに浮いて見える。そしてその違和感が、読者にも語り手と同じ「なにそれ?」という思考を植えつけ、作品の中に取り込まれていく。
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