等身大の自分へ
(⌒-⌒; )
第1話
学校で噂になった話がある。
誰から話し始めたかわからないが、私が高校二年に上がった頃に回ってきた話だ。
この学校のある場所には、何をしても許してくれる人? がいるらしい。噂では人と聞いたがその正体が本当に人なのかどうかは見た人しかわからないみたいだった。
もしかしたら幽霊かもしれないし、妖精の類なのかもしれない、本当は誰かがでっち上げた作り話なのかも。
でも火のないところに煙は立たないという言葉があるように、一定数見た人がいるということは誇張しているかもしれないけれど本当に存在するかもしれない話ではある。
しかし、本当にそんな人がいるのだろうか? そんないかにもな善人が人間なのだろうか。本当に何の利益もないまま何でもしてくれるんだろうか。というか、何をしてくれるんだろう。
一体どんな力があって、何をもたらしてくれるのか。それは出会った人にしかわからないことなんだろうけど。
まあ私には関係ないと思うけど。
「おいやれよ!」
騒がしい方を見ると、いつもの光景が広がっている。
派手目のグループの人たち、いわゆる陽キャと呼ばれる集団があまり目立たない子をターゲットに無茶ぶりをさせている。言葉を選ばずに言えばいじめている。
その目立たない子は、明らかにいつものテンションとは違くて、それが無理に取り繕ってるものだと周囲は気づいているだろう。
それでも面白がってやらされて、彼は下手くそな笑みを貼り付けたままモノマネやら、一発逆やらをやらされ、挙句の果てには飽きた面白くないとかで殴られていた。自分たちがやらせたくせに、なんて理不尽で可哀そうなんだろう。
なんて思いながら、誰かが止めてくれるのを私も待っていた。
何もせず、ただ可哀そうだと思うことで私は違うと心の中で言い聞かせていた。
「愛生、昼飯行こ」
「うん」
友達に呼ばれて、昼飯を食べる空き教室に向かう私の背からはまだ騒がしい声が聞こえている。
きっと私も同罪だ。それでも止めようとは思えなかった。
それは別に彼がやられているのが面白いからじゃない、誰もがその当事者にはなりたくないと思っているからだ。
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