真っ白い世界
ロゼ
真っ白い世界
「雪が見たいな……」
ポツリと彼女が呟いた。
「今年は寒くなるって言うから、いつもより雪が早く降りそうだってさ」
「そうなんだ……早く降らないかな……」
窓の外をぼんやりと眺める彼女の横顔をただ見つめていた。
□●□●□
「まだ降らないね、雪」
「そんなに見たいの?」
「うん」
「何で?」
「だって雪は全部隠してくれるから。全部を隠して真っ白い世界にしてくれるもの」
そう言って笑った彼女の目だけは悲しい色を帯びている。
それに気付きながら目を逸らした。
□●□●□
「明日、雪が降るって」
「……」
「ずっと見たがってたよな?」
「……」
「やっと見れるんだぞ……なぁ、目を開けてくれよ……」
たくさんの管と機械に繋がれた彼女の体をそっと揺らしてみる。
すっかり細くなり、すぐに折れてしまいそうな手を握るとほのかな温もりが返ってくる。
「聞こえてる? 聞こえてたら目を開けてくれよ……」
もう反応を返してくれることのない彼女に語りかける。
「なぁ、今いる世界は真っ白い世界か? もう嫌なものは何も見えないか?」
深夜から降り始めた雪は彼女が望んだかのように街を真っ白に覆い、そして何事もなかったかのように元に戻った。
彼女だけがいない世界が俺の目の前に広がりながら……。
真っ白い世界 ロゼ @manmaruman
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