階段のゆうれいさんは平穏に暮らしたい。

@momonokaki

第1話 階段のゆうれい

 目の前には【立入禁止】と書かれた鉄製の柵の扉がある。

 これは、屋上へと続く道を封鎖するために存在するものだ。

 鉄柵扉には鍵はかけられ、開く事は出来ない。

 

 だが、この先に私のお気に入りの場所がある。

 だから、その場所に行くために私は準備運動をした。

 そして、周囲に人がいない事を確認し、前の前の鉄柵扉を乗り越えた。


 再び周囲を確認、周囲に人はいない。


 私はすぐに階段を上り、踊り場を経由、再び階段を上る。

 すると、見えるのは屋上へと続く扉だ。

 だが、屋上への扉も施錠されている。


 青春を望む女子生徒としては、実に残念な現実だ。

 しかし、その場で振り返ると、そこには美しい光景がある。

 色とりどりのガラスで構成されたステンドグラス。


 太陽の光に照らされ、キラキラと輝くその光景。

 それは、孤独な高校生活を送る私を癒してくれる。

 そんな光景を眺めながら私は会談に腰を下ろす。


 すると、下の方から人の喋り声が聞こえてきた。

 それは、他愛もない話から実に興味深いものまで。 

 青春を謳歌する学生のにぎやかな声だ。


 時には、告白シーンや、逆に色恋沙汰の修羅場なんてもある。

 私は、その数々の青春の一ページをこの場所から聞いていた。

 個人的には、情報屋にでもなった気分だ。

 そして、そんな情報の中でも特にトレンドになる話題があった。


 それは、学校にが出るという話だ。


 噂によるとこの学校で自殺した生徒の幽霊が出るとの事だ。

 しかも、何人もの生徒が目撃している。

 そんな、不思議な話への考察を深めようとしていると。

 ふと、下の方でガチャガチャという音が聞こえてきた。


 私は、近くにある掃除用具箱に身を隠してやり過ごすことにした。

 掃除箱の中から外を見ると、フワフワとした金髪の女子生徒が見えた。

 彼女は、私がいた所をくまなく見て回っている。


「あれ?確かここにいるはずなんですけどねぇ」


 ゆるふわ金髪の女子生徒はそんな事を言い出した。


「おかしいですね、ん、でもなんか匂いがします」


 彼女はその場で匂いの出処を探そうとしていた。

 しかし、かぎわけられないと分かると彼女は残念そうにうなだれた。

 当たり前だ、イヌじゃないんだから。


 そんな事を思っていると、彼女はこの場を後にした。

 その様子を見て私は掃除箱から出た。

 階段を降りて鉄柵扉の方を確認。

 すると、そこには誰もいなかった。

 まさか、彼女が噂の幽霊だったりしないだろうか・・・・・・?


 なんて事を考え、一安心した私は再び元の場所に戻ろうとした。

 だが、突如として甲高い声が響き渡った。


「い、いましたー、ほんとにいましたーっ!!」


 振り向くと、扉越しにゆるふわ金髪の彼女がいた。

 彼女は私を指差しながら驚いた様子を見せていた。


「ももも、もしかしてさんですか?」

「・・・・・・うっ」


 私だけの秘密の場所を見つけられた。

 その現実に私は最低な気分になった。

 そして、私はゆるふわ金髪の彼女を睨んだ。

 すると、彼女は微笑みながら私に話しかけてきた。

 

「さ、さすがゆうれいさん、威圧感が半端ないですねぇ」


 彼女は私の事をと呼んでいる。

 まさか、私を巷で噂の幽霊とでも思っているのだろうか?

 そして、彼女は私に近づこうとしてきた。

 その行動に、私はすかさず手を前に突き出した。


「う、動くなっ」


 私がそう言うと、彼女は動くのを止めた。

 そして、大きな目で私をじっと見つめてきた。

 青く澄んだ瞳は異質で怖くもあったが、見ている内に美しさが勝った。


 いやいや、そんな事よりも、彼女にはここにいてほしくない。

 ここは私の楽園であり神域だ。

 なんとしてでも死守せねばならない。

 しかし、見つかったからにはどうにかしないといけない。

 この際、彼女が言うように幽霊のふりでもして彼女と話してみるか?


「あ、あなたは誰?」

「あ、わたしは【音無おとなしマリア】です、あなたは【ゆうれい】さんですよねぇっ!!」


 こんなにもハイテンションな人間と出会った事は無い。

 おまけにこの状況をどうすれば良いのかわからない。

 頭の中が混乱してきた。

 そして、私は彼女につられる様にハイテンションになってしまった。


「こ、ここは私の大切な場所だ、二度と近寄るなっ、立ち去れぇっ!!」


 私は脅しをかけるようにそんな言葉を言ってみた。

 だが、目の前の音無とやらにはいまいち効果が無い様子だった。


「あぁ、そうなんですね。えっと、ゆうれいさん、実はあなたに相談があるんです」


 人が同じテンションになってやったというのに、この態度か。

 そして、彼女は話を聞かずに相談を持ち掛けて来やがった。


「いや、私は幽霊さんでもなんでもなくて普通の・・・・・・」


 そう言いかけた時、音無と名乗る彼女は私に手を伸ばしてきた。

 鉄柵扉から伸びたその手は、まるで囚人が助けを求めているようだ。

 だが、彼女の顔は笑顔であり、それはまるでキラキラと輝いてい様に見えた。

 そんな素敵な笑顔の彼女はニコニコ笑顔のまま口を開いた。 


「ゆうれいさん、私と友達になって下さいっ」

「・・・・・・は?」


 予想外の言葉に私は開いた口が塞がらなくなった。

 そして、時間が止まったような感覚に襲われた。

 しかし、徐々に状況を理解し始めた私は、再び元の場所に戻ることにした。

 何言ってんだこいつ。

 もう相手にする必要は無いだろう。

 そうして背を向けたのだが、背後で騒がしい音を立ててきた。


「ちょ、ちょっと待ってくださいっ」


 彼女はまるで私を逃げさんとばかりに、鉄柵扉を乗りこえようとしてきた。

 だがそんな時、突如として男性の野太い声が聞こえてきた。


「おい音無、お前そこで何をやってるっ!!」


 突如として鳴り響く男性の大声。

 その声に私は鉄柵扉から離れて屋上の扉がある方へと逃げた。

 そして、恐るおそる音無がいた場所を覗きこんだ。

 

 すると、そこには筋骨隆々のたくましい体型をした人間が立っていた。

 それは、一目でわかる体育教師の【真田先生】だった。

 真田先生は鉄柵をよじ登ろうとする音無を器用に抱え上げた。


「ちょ、ちょっと離してください先生っ!!」

「お前があんな所にいるのが悪いんだろう、職員室で説教だ」

「なっ、離してくださいっ」


 うるさく抵抗する音無さんと、それを抑えこむ真田先生。

 それはもうほほえましいゴリラ親子にしか見えず、私は思わずにやけてしまった。

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2026年1月2日 20:00

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