第15話 反撃の狼煙

 ハルカとエリックが通信基地から脱出してから数時間後、彼らはエリックの安全な隠れ家に身を寄せていた。そこは深い森の中に隠された小さな山小屋で、ニュードーンの監視網から完全に外れている場所だった。


「これで送信は完了した。あとはデータがどう広がるかだ。」


 エリックがホットコーヒーを淹れながら話す。ハルカは疲れ切った体をソファに預け、まだ動悸の残る胸を押さえていた。


「本当に成功したんでしょうか…?」


 彼女の声には一抹の不安が混じる。送信されたデータがすぐに人々に届く保証はない。ニュードーンがデータを遮断する可能性も大いにある。


「成功しているさ。俺たちは最善を尽くした。」


 エリックの力強い言葉に、ハルカは少しだけ安堵した。しかし、彼女の心の奥にはまだ疑念が渦巻いていた。


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 その夜、ハルカは珍しく深い眠りに落ちた。夢の中で彼女は、かつての平和な日常を思い出していた。友人たちと笑い合い、自由に街を歩き、未来への期待に胸を膨らませていたあの日々。しかし、目が覚めると、そのすべてが遠い昔のことのように感じられた。


「おはよう、ハルカ。」


 朝日が小屋の窓から差し込む中、エリックが簡単な朝食を準備していた。パンとジャム、そして温かいスープの香りが部屋に広がる。


「おはようございます。」


 ハルカは少し顔をほころばせながらテーブルについた。二人は静かに朝食をとりながら、これからの計画について話し合った。


「送信されたデータの確認が必要だ。ニュードーンがどう反応するかを見極めるためにも、ネットワークにアクセスしよう。」


 エリックの提案に、ハルカは頷いた。


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 山小屋の地下室には、簡易的な通信設備が設置されていた。エリックが用意した安全な回線を使い、ハルカはインターネットに接続した。


「頼む…広がっていてくれ。」


 モニターに映し出されたのは、ニュードーンのプロパガンダが支配するニュースサイト。しかし、いくつかの独立系メディアのページを開くと、そこにはニュードーン計画の真実に関する情報が拡散されている兆候が見られた。


「見て、これ…!」


 ハルカが指さしたのは、匿名掲示板に投稿されたニュードーンの機密文書のスクリーンショットだった。コメント欄には混乱と怒り、そして行動を求める声が溢れていた。


「やったな。」


 エリックが満足そうに微笑む。


「でも、これだけじゃ足りない。ニュードーンはまだ力を持っているし、これをもみ消すかもしれない。」


 ハルカの言葉に、エリックも真剣な表情に戻った。


「次のステップだ。真実をさらに広めるために、大規模な支援を集める必要がある。」


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 その日の午後、ハルカとエリックはネットワークを使って反ニュードーン派の活動家たちに連絡を取ることにした。彼らの中には、かつてニュードーンに協力していたが、その危険性に気付き離反した者たちもいる。


「助けが必要なんです。」


 ハルカはある活動家のリーダーとビデオ通話をしながら訴えた。そのリーダーは40代半ばの女性で、冷静かつ鋭い目つきをしている。


「分かった。私たちも行動を起こす準備はできている。」


 その言葉に、ハルカは希望を感じた。


「これで私たちだけじゃなく、多くの人々が立ち上がるきっかけになるかもしれない。」


 エリックもまた、ハルカの勇気に感心していた。


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 夕方、ハルカは再び山の中を歩いていた。彼女は自分の選んだ道が正しいのかを確かめるように、深呼吸をしながら自然の音に耳を傾けていた。


「私は、できる限りのことをしているんだよね…?」


 自問自答する中で、ハルカはレイの言葉を思い出した。


「お前なら、きっと大丈夫だ。」


 その記憶が、彼女の胸に温かさと勇気を与えた。


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 翌日、彼らの活動はさらに進展した。複数の活動家グループがニュードーンに対する抗議デモを計画し、真実をさらに拡散するためのオンラインキャンペーンを開始した。


「これで、確実に変化が起きるはずだ。」


 ハルカはその様子を見ながら、小さな希望の光を感じた。しかし、その裏でニュードーンもまた、反撃の準備を進めていることに気付くのは、もう少し後のことだった。

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