元冒険者の日陰者は禍なんか怖くない
相原羽実
はじまり
終わり
昔、冒険者という人達がいた。
生まれながらにしてバースと呼ばれている能力を持っている人、勉強して魔法を習得した人、武器の扱いが上手い人。そんな凄い人達の集まりで困っている人を助けたり、悪い奴をやっつけてくれたり。すごく勇敢な人達。
だから何かあったら彼らが助けてくれる。
そんなことを私のお世話をしてくれたおばさんはよく話してくれた。
でも違う、それは嘘だった。
本当は妖魔王が倒されたことで仕事が減ったため、冒険者達はすっかり見なくなったのが真実だ。
だから私が助けて欲しかった時。ただクローゼットに隠れて震え、隙間からおばさんが笑われながらなぶり殺されているのを見ていた時。その時は冒険者はもういない。
誰も助けにきてはくれなかった。
「お前らなに遊んでんだよ」
小屋に入ってきた何者かがそう言った。
「子供は見つかったか」
「いや?結局こいつゲロせずに死んじまったよ」
「それはおかしい、絶対にここにいるはずだ」
私を探している。私のせいでおばさんは殺された。
どう感じればいいのかわからない。自分は災いだ。精一杯に表すとドス黒い気持ちでいっぱいになる。
男達は私を絶対に見つけようと家から出て行く。
燃える村の中を必死に逃げた。
自分を殺したいほど自分の存在が憎いのに、生きるのに必死になっている矛盾。
泣く暇もないほどの恐怖に襲われとにかく走ることしか考えなかった。
村の外の森を裸足で走り、足が擦れて血が出ても気づかないほどに。
でも逃げたところでどこに行けばいいのかわからない。とにかくここから離れることしか考えられない。
ここから向かう先でどうなるかなんて知らない、救いまでは求めていない。
今はただ死にたくないだけだ。
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