雪虫ブン。時空から出没。
京極道真
第1話 12月に出現没!雪虫。
俺様は時空をさまよう虫様だ。
朝の登校風景。
なんだか、パーっとしない人間の少年が
2人いるぞ。
退屈だし、からかってやろう。
スーッと俺様は雪虫に紛れて
地上に降りた。
さっきの2人組。肩に止まった。
「あーあ、今年も雪が降ってきたな。」
「そうだな。」
「雪が降るとグランド使えなくなるな。」
「雪降るのやめないかな。」
カバンの横に体操着が見える。
今日は体育の授業でもあるのかな。
俺様は黙ってハルという少年の肩に止まった。
どうやら同じ中学のサッカー部のようだ。
俺様は黙って盗み聞き、することにした。
「なあータク。期末テストどうだった?」
「まあまあだった。」
「そうだな、タクは、僕とは違って頭、いいよな。」
「そっか?普通だ。ハル、お前ができなさすぎるんだ。」
「だって勉強嫌いだ。それに勉強する時間があるなら、ボール蹴っていたいよ。」
「ハルは、ほんとサッカー好きだよな。」
「まあーな。全力で否定はしない。それに僕の夢はもちろんJリーグだ。
そしてカンナちゃんに告白するんだ。」
「へえー、ハル。そこまでビジョンを描いてるとは。すごいな。」
「まあな。夢は口に出した方が叶いやすいっていうだろう。
それに正直、他の部員や先輩達より僕の方が上手い。だろう、タク。」
「そうだな。カンナちゃんに告白して成功するか、しないかは別として。ハルはサッカーが上手い。」
「それに、僕の次にタクも上手い。僕はタクを認めている。」
「そうか。それはどうも。」タクが茶化す。
が夏の中体連は2回戦完敗。
あっけなく終わった。
僕とタクは家も近く、いわゆる幼なじみだ。
お互い小さい頃から山を駆け回り育った。
小学校、中学と片道6キロの山道を2人で
登校した。
他の子供たちは親の車で送り迎え。僕らは元気過ぎて、体力は余り過ぎ。
中学に上がってからはサッカーのトレーニングも兼ねて半分ランニング状態で登校している。
しかし、今朝は雪だ。グランドが使えなくなる。登校の山道も少し時間がかかる。
それに寒い。
「なあ、タク。雪ってなんで降るんだ?」
「はあ?ハル。小学生みたいなこと聞くなよ。」
「寒いから降るんだろう。」
「はあ?タク。頭のいいタクの答えにしては、笑える。そんなの寒いからってさあ。」
「お前ら、バカじゃないの。」しまった。
「誰だ?」
「ハル、どうした?」
「タク、今声が聞こえなかったか?」
「声?」
「ハル、この山道、ハルと僕以外誰もいないぞ。
逆にこわいこと言うなよ。お化けでもいるのか?」
「嘘じゃない。声が聞こえたんだ。」
僕らは周りを見回した。誰もいない。
「校舎のてっぺんの白い壁が見えるぞ。もうすぐだ。ハル、行こう。気のせいだ。」
「そうだな。」僕らはいつもこの場所から車道に降りて登校している。
「ブーン」
タクが。「なんか、虫がいるぞ。」タクは神経質な性格だ。
「大丈夫かタク。」「あーあ、大丈夫だ。ただ虫が気になってさ。」
僕らは空を見上げた。小さな積もりそうな硬い雪が深々と降り始めている。
「雪虫か?」「たぶんな。」
「そうだ。俺様は雪虫のブンだ。」
「わあー!雪虫がしゃべった!」
「そんなに驚くな。さっきから俺様はハルの肩にずーっと乗ってここまで来たんだぞ。」
「そっか。」
「こら、タク、素直に納得するな。雪虫がしゃべれるはずがないんだぞ。」
「それも、そっか。」
俺様はしびれを切らして「俺様だ。俺様はここにいる。雪虫のブンだ。」
いつものように俺様は時間を止めた。
「はい。はい。やっと俺様の存在に気づいたか。のろまめ。」
ハルが「僕らは、のろまじゃないさ。僕らはサッカー部だ。足も速い。」
「へえー。それで。君たちはJリーグでも目指しているとか?」
ハルが「そう。そんなところさ。」
「で、2人ともJリーグ選手になりたいのか?」
ハルは張り切って「そうだ。でいれば今すぐに。」
雪虫のブンは「よし。分かった。今すぐJリーグ選手にさせてやるよ。ハル。
さあ。行きな!」
僕は「気づくとピンクのユニフォームでピッチに立っていた。味方がボールを奪う。
僕に長いロングパスが届く。
僕は大きくジャンプして胸でボールを受け取る。「ドーン。」相手チームのディフェンダーから激しいタックル。
相手の肘が、わざと僕の胸部にあたる。「いたっ!」一瞬、息ができない。
僕は空中戦で競り負け芝生に転げる。
と同時にホイッスルが響く。「ゲーム終了。」僕らのチームは負けた。
プロのJリーグの選手たち。今の僕では到底、力は及ばない。瞬発力。筋力。ジャンプ力。自分がとても小さく感じる。
負けた時の感情だ。僕は小さい。くそー、小さい。体力もない。ドリブルのテクニックもない。僕は芝生に転がり。気づくとカラダが芝生に隠れるくらの小さくなった。
雪虫のブンが今度はタクのところに飛んで行く。「タクはどこか行きたいところはあるのか?ハルと同じJリーグか?」
「いや違う。僕は先生になりたい。」
「先生?」
「あーあ、小学校の先生だ。」
たぶん、雪虫ブンの魔法だろう。
頭が良く、感のいいタクは思った。
時空移動だ。
「タク先生。この算数の問題教えてください。」
「いいですよ。」
僕は黒板で問題を解いた。簡単だ。
次の問題。難しすぎて解けない。タクは正直に、
「みんな、この問題は難しすぎて、先生には解けません。」
「えー!先生なのに解けないの?
先生、だめ、だめじゃん。」生徒たちが叫ぶ。
タクは落ち込んだ。「まだまだ勉強が足りない。」
2時間目体育の授業。
外は雪がかなり降って、積もっている。
「今日はかまくらをつくります!」
生徒達は大きなかまくらを作った。
中に入った生徒たちが「タク先生。先生も中へ。」
タクはかまくらの中に内った。
奥に雪虫の形をした置物が。
それを触ろーとした瞬間。
雪虫の置物は動きだした。
そして「ドスン。」
ハルとタクは気づくと歩くはずの山道からすべって中学の裏庭に落ちた。
「いたっ!」「なんだ!」
ハルは背中についた雪をはらいながら、立った。
遅れてタクもパンパンと雪をはたきながら立ち上がった。
「おーい。大丈夫か?お前らあの山のでっぱりから落ちて来たんだぞ。」
サッカーの顧問の先生が叫ぶ。
「大丈夫です。」
僕ら2人の記憶はバラバラだった。なぜあそこから落ちたかもわからない。
先生が「今度から気をつけろよ。雪の降り始めはいたずら好きの雪虫が
人間にちょっかいをだすらしい。
もしかしてお前ら、雪虫に会ってないだろうな。」
僕らはハモって「会ってません。」嘘をついた。
なぜ嘘をついたかもあまり覚えてない。
ただ、僕もタクもいたずら好きの雪虫に会ったことは間違いない。
そして、時間が進み。
あの時の雪虫ブンが「どうだ?ハルはJリーグ楽しいか?」
「あーあ、最高さ。」
「タクは小学校教師はどうだ?」
「もちろん。楽しいさ。」
2人とも時間が進み大きくなった。夢も叶った。
雪の降り始めのこの季節。2人は思い出す。時空をこえて僕らをからかいに来た。
あの雪虫ブンを。
雪虫ブン。時空から出没。 京極道真 @mmmmm11111
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