第5話
いつも通り、ピアノの鍵盤を叩いていく
さっきまでキャーキャー言っていた観客が、静かにおれの演奏を聴いている
まぁ、この瞬間、おれが実は男の子ということがバレたらキレたり襲いかかってきそうではあるが
演奏中は一切声を出すつもりはないので、少しは安心してできる
心を空っぽにして、何も考えなくなって、演奏に集中できる
まるで、この世の何事からも、縛られずに生きている鳥のように、開放的に演奏ができる
おれは、このピアノを、昔より、ずっとずーっと、上手になったピアノの演奏を見せたい同い年の女の子がいる
そこの子を探すために、何度も何度も心が折れそうだったが、続けてやってきている
ま、少しでも上手くなってビッグになりたいってあう気持ちもかなりあるんですがね
なので、キャラ作りを徹底していたのだが、こんな美少女系になるなんて……
これじゃ、あの子に正体を明かそうと思っても、明かせないよ……
は、恥ずかしすぎるっ……
こほんっ……
少しヘンなことを考えながら、なんとか1曲目の演奏を終えた
ちなみに、今日は合計3曲演奏をする
まぁ、準レギュラー枠となってしまったので、ここにいるやつらはみんな聞き飽きちゃったのかもしれないけどね
こっちとしては男っていうのがバレない
観客は比較的早く終わってくれるのでそろそろ飽きてきた退屈な時間を早く終わらせられる
どちらにとってもいいことなのである
きっと
おれ、あんまり上手くないから……
なんやかんや、いつも通り、演奏を終える
「きゃー!チーナちゃーん!」
「チーナたん!チーナたん!」
「俺とつきあってくれーっ!!」
ははは……おれのファン、変人しかいねぇのか?
まぁ、類は友を呼ぶって言うしな
「えへっ☆みんな、いつもありがとうっ♪次の演奏会も来てくれたら嬉しいなっ!」
女の子っぽく
バレないように……バレないように……
次の演奏会はまだ決まってないが、決まったら公式SNSに告知をする
不定期にライブを開催しておれのレア度を上げておきたいのだ
まぁ、おれは人気全然ないからここでオファーもらって演奏するだけありがたいっ!
って思わないとやっていけないんだけどね……
まぁ、周りからすればお遊び程度にしか見られてないだろうけど、おれは本気の本気のちょー本気でプロ目指してるし、ビッグになりたいし、世界一になりたい
だって、人生賭けてるからさ
こんなやつだけど、応援してくれるファンがいると、めっちゃ嬉しい
おれは、欠伸を控え室の中でした
「んく……むにゃ……」
どうやらおれは、控え室の中で爆睡してしまっていたらしい
最近、疲れていたのだろうか?
通知を確認すると、めっちゃ来ていた
例のVTuber、愛しの我が妹の他にも、レッスン教室から遅刻の連絡が1分おきにきていた
まず、めっちゃうるせぇレッスン教室に電話
「はい、白虎です、休みます、ん?なんでって?いいじゃないですか、はい、はい、口約束だし、金の関係ないし……はい、わかりました」
おれはピアノのレッスン教室にあくまで無償のボランティアとして、なんなら書類等での契約や約束事などをを一切していないので、はっきり言えばタダ働きである
まぁ、あの女の子の弟妹いるかもっていう下心丸出しだったから、いいや
引きこもりな俺、幼馴染VTuberの楽曲制作したらなんかスカウトきました うさみみ宇佐美 @usami-nano
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