世、妖(あやかし)おらず ー家顔面ー

銀満ノ錦平

家顔面


 家には顔がある。


 2階に窓が2つあり、一階にリビングだかキッチンだか風呂場だかの窓が一つあればもう顔に見えてしまう。


 パレイドリア現象というものだと思う。


 これは簡単に言うなら物体の形状が顔に見えてくる… まぁ2つの点や模様の下に一つ何かがついてればそれはもう顔と認識してしまうという人間というより生物の習性というか本能というか…である。


 私の住んでいる所は、田畑が広がり家が疎らにある為、一軒家が多く家の顔というものがよく見える。


 私は学校帰りはその家の顔を見て楽しんでいた。


 別に家の中を覗いているとかではないし住んでいる場所の日常の光景であるからなんか悪いことはしていないのでまじまじとはいかないまでもちょっとじっと見てしまう癖ができていた。


 勿論家は生きていない。


 そりゃ物によっては、木材で出来てる家もありそれはもとを辿れば木なのであるから生きていたものではあるが家になればそれは、生き物ではなく建物になる。


 たまに木材から芽が生えるなども聞いたことはあるがその木材の中に入っていた木の種等が入っていたりする事があったりした場合なのでその木材が行きていることはない。


 出来てしまえば家という人が住む建物になる。


 だから生きているわけがない。


 だからあれはあくまで顔のようなものである。


 瞼は動かない笑いもしない怒ったりもしない涙を流したりもしない…これは窓を水で洗えばそう見えるけど見えるだけである。


 だから眺めても表情なんか出てくるわけ無い。


 しかし見てしまう。


 確認してしまう。


 何度も何度も何度も何度も、同じ光景なのに。


 たまに取り壊される家も見る。


 それは表情が乱れて悲しんでるような嘆いているような顔になっている。


 これもなっているように見えるだけで実際はただ壊れてる建物なのである。


 こんな淡々としているがやはり見てて楽しい。


 表情がないのに表情があるように見える。


 田んぼ道を自転車で帰りながらみる家の表情もどきがどれも見てて飽きなかった。


 少し時が経ち、とある一軒家が出来ていた。


 2階建てで同じく上に2つの窓、下にも窓が1つありそれも顔に見えた。


 新しい新入り、文字通りのニューフェイスである。


 仲間が増えたと少し高揚しながらその家を見てみ

 た。


 庭は特に何もなく、一階の窓からは暗くてなにも見えなかった。


 時間は夕方なのに違和感があった。


 2階に目をやると窓に部屋の照明の光が映し出されていた。


 目に見えた。


 今までと違う、なんというか部屋の光が瞳の様に見えた。


 何故か怖くなりすぐその家から離れた。


 次の日からその家のある道を通るのをやめた。


 わざと遠回りして帰った。


 遠回りしたとこは、家がより少なく見ててもつまらないボロ家ばかりであった。


 しかしボロ家の周りにはツルが茂っておりより生物感が出ていて余計怖く感じてしまった。


 だがあの家の顔を見るとなにか不快な気持ちなり、怖くなってしまうので仕方なくこのボロ家の並ぶ道を通った。


 数ヶ月経ち、もうこのボロ家の並ぶ道を通るのが日常になり、家の顔なんて見ることも忘れていた。


 それは冬になった頃だった。


 陽が沈むのも早くなり6時近くには真っ暗になっていった。


 満月の夜だった。


 とても綺麗でつい満月を見ながら自転車を漕いでいた。


 ふと前を見たら、いつもの道ではなく前通っていた家の顔がチラつく道にはいってしまっていた。


 だがもうそんな家の顔などという目のお遊びの事などどうでも良くなってたのでこれを気にまたこの道に戻るかとため息つきながら道を通る。


 何も変わっていない。


 たった数ヶ月通らなかっただけだから別に変わろうがなんにも思わなかったわけだが。


 だがなんか家の様子がおかしく感じる。


 違和感はあるが何かはよくわからず気が付くとあの私が怖くなって逃げ出した家の前に付いていた。


 何も変わっていなかった…。


 これのせいで私は嫌な気持になったんだよなあとまじまじとその家を嫌そうに見つめる。


 家は真っ暗だった。


 人の気配もない。


 しかし何か視線を感じていた。


 上を見た。


 2回の窓が光っている。


 光が何故かこちらを見るように光っていた。


 明らかにおかしい。


 私は距離を取ろうと家から離れようとした。


 しかし窓の光はこちらを追っている。


 ゾッとした。


 見ている。


 家が私を見ている。


 私は恐怖心に駆られ、急いで自転車を走らせた。


 とても走った。


 走って走って走って走って走って…。


 気がついたら家についていた。


 安心したからか家の周りを見た。


 いつも通りの家がある。


 2回の窓が光っている。


 しかし下は全部真っ暗だった。


 周りの家は何処もそうなっていた。


 私は、困惑した。


 何故どの家も下が暗いんだ。


 この不気味な情景に恐ろしくなり私は、玄関に行く。


 すると玄関の前に何かが置かれてあった。


 宅配物かと思いそれを見た。


 何かの肉の塊だった。


 戦慄した。


 なんで玄関の前にこんなものがあるんだ!。


 しかも血も付いてる。


 吐き出したようにグチャっとなっている。


 私は余計に怖くなり玄関を開けようとした。


 開かない。


 何故か開かない。


 玄関の鍵を使っても開かなかった。


 そして私はリビングの窓から入ろうと裏に回り急いで入ろうとした。


 漆黒でリビングが見えなかったがそんなのお構い無しにリビングの窓を開け家に入った。


 その瞬間、私の目に入ったのはいつものリビングの光景ではなかった。


 部屋の天井と床の周りには白い立体物が唾液のようなものを垂れ流していた。


 まるで人の歯のように…。


 そして私は、察した。


 部屋の下にいたものがどうなったのか。


 いつから私達の家が入れ替わっていたのか。


 考えるまもなく、私は押しつぶされた。


 グシャグシャグシャグシャグシャグシャグシャ…
















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