第29話 ふわふわドロン! おばけの正体は……⁉
ステラの同級生、セレーネの召喚獣で妖精型のランは、気恥ずかしそうにモジモジとしていた。
「実は、ここで幽霊の、おばけのフリをしていました」
「え、ええ⁉」
「な、なんだってー⁉」
驚くステラとブルーを前に、セレーネは首をかしげていた。どうしてランがおばけをしていたのかが、分からないからだ。そっと手を差し伸べたセレーネの手に、ランはゆっくりと座り込んだ。
「教えてくれる? どうしてそんな事をしていたのか」
「……はい」
ランは怒られるかと思い、身構えていた。しかしセレーネは怒るどころか、心配そうにランを覗き込んでいる。
一方、ブルーはいまだガタガタと震えながら、ステラにしがみついている。
「私とセレーネ様がここで、秘密の特訓をしていたのですが、それが皆さんにバレてしまわないようにしなければなりませんでした」
「それでおばけを?」
「いえ、おばけの噂は前からあったので、私はその噂を利用することにしたのです」
「誰も近づかせないため、だったのですね……」
「はい」
ランはしょんぼりとした黄色い鱗粉を発光させた。鱗粉はふわふわと風になびき、飛んでいく。
「しばらく人は誰も来ませんでした。でも、噂が広まると、面白がって夜に旧校舎に来る人が現れたのです」
「ステラやロジャーみたいなやつがいたんだな!」
ブルーは怖がっていて、面白がってなどいなかった。しかし、おばけに会いに行こうと決めたのはステラだった。ステラはランを見つめた。
「ごめんなさい。おばけさんにお会いして、困っていることを聞こうとしていたのです」
「あ、いえ。ステラさんたちは大丈夫なんです。旧校舎の中に入ってこようとする生徒さんたちが問題でした」
ランはそういうと、ふわりと飛び立った。
「私はセレーネ様との秘密の特訓がバレてしまわないかと思い、おばけのフリをすることにしました。でも、予想以上に多くの方々が旧校舎を見に来てしまって」
「それで?」
「ちゃんとおばけ役として、皆さんを驚かせなければいけないと思って、夜通しで旧校舎にいたのです」
「ええ⁉」
「ランってば、変に真面目なところあるから……」
「それで寝不足かよ……」
セレーネは苦笑いを浮かべながら、ランを手のひらに迎え入れた。
「じゃあ、本当に幽霊、おばけはランだったんだな」
「はい。驚かせてしまって、申し訳ありません」
「いや! いいんだ‼ むしろ、ホッとしてるんだぜ!」
「ねえ、ラン」
「はい、セレーネ様」
ランは緊張したのか、姿勢を正した。ステラはセレーネが怒ってしまうのかと思い、セレーネを見上げた。しかし、セレーネの表情は穏やかで、特に怒ってもいなかった。
「もう、おばけ役なんてしなくてもいいの。普段通りでいきましょう。特訓だって、バレてしまっても問題ありませんわ。だって、努力しているだけですもの」
「セレーネ様……‼」
「それに、ランが倒れてしまったら大変よ。おばけ役はおばけにしてもらうわ」
「ふふ、そうですね!」
一件落着かと思いきや、ブルーは背筋に視線を感じた。ゆっくりと振り返ると、窓の向こうに黒い影があり、そしてカーテンがゆらゆらと揺れていた。
「ラン、もうおばけの真似なんてしなくていいんだぜ!」
「はい!」
「それじゃあ、夕食を食べに行きましょうか。セレーネさんとランさんもご一緒にいかがですか?」
「そうね。そうするわ。ラン、いくわよ」
「はい! セレーネ様!」
なおも揺れるカーテンを見つめながら、ブルーもステラ達の後を追っていった。待ちに待った夕飯の時間だ。ブルーにとっては至福の時間である。ブルーは何を食べるかで頭がいっぱいになった。
カーテンはなおも、ゆらゆらと揺れ、もやもやとした光が瞬いては消えていった。
― 解決? してよかったね! おばけなんてないさ♪ ―
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