3話『オカルトライターの小百合/ダンジョン時代のオカルト事情・前編』

「ふむ、成程…神隠しに、オカルトスポットに、幽霊の目撃情報か…」

「はい!今回こそ取材はバッチリですから!」

「成程、よく頑張ったな。全部ボツだ」


閑散とした編集部の中で、無情な声が告げられる

オカルト雑誌『ムーン』…そのライターが私の仕事だ


「な、なんでですか!?」

「何で、だと?そうだな、1個1個説明してやろう。まず神隠しだが、お前が持ってきた発生情報にはどれも共通点がある、分かるか?」

「え?いえ…」

「いずれの情報もダンジョンの入口からそう遠くない場所で発生しているということだ。つまる所、これらはただ偶然にもダンジョンの入口が発生し、それが定着せずにすぐに消えてしまっただけに過ぎん」

「で、でも…」

「第一、神隠しに遭ったヤツの証言がどれも『気づけばダンジョン内に…』なんて、それ以外考えられんだろうが」

「そ、それは………そう、かもですが」

「同様に、オカルトスポットはアンデッド系モンスターが発生する未発見のダンジョン、幽霊の目撃情報は大方精霊なり妖精なりを見間違えたんだろう。で、何か反論は?」

「あ、ありません…」


私が持ってきた目撃情報の数々を、編集長は一刀両断し、机の上に放り投げる。


「はぁ…君も分かっているだろう?今の時代、心霊的なオカルトは大抵ダンジョンか異世界関連のもので一蹴されて終わりなんだよ」

「そ、それは…そう…かもですが…」

「せめて宇宙人とか空飛ぶ円盤とか、そういう方面のオカルトならまだウケるんだけどねぇ…」

「す、すいません…」


編集長に指摘され、私は萎縮してしまう。

…とは言え、編集長が言っていることも最もだ。

霊的な存在や不思議な存在が現実にある事が定かになり、しかも彼らが自分たちの隣人となっているとなれば、それらはもうオカルトではなくなってしまうのだ。


「ま、寂しい事だとは思うけどね、これも時代だよ」

「そう、ですよね…」

「…とは、言え。とは言えだ」


編集長はそう言うと、ある一通の手紙をこちらに差し出す。


「編集長、これは…?」

「某県にある『朱霧村』という場所に住んでいる人から送られてきた手紙だ。ま、読んでみたまえ」

「は、はあ…」


しゅきり?あかむ?村から送られてきたというその手紙を開封すると、そこにあったのは古びた紙に書かれた手紙と一枚の写真だった。

中に書かれていた内容は、要約すると自分はこの村に住んでいる学生で、村の神社で行われている儀式について調べて欲しい、というものであった。

そして写真は、恐らくその神社であろう写真であった。


「あの、これは…」

「見れば分かるだろう?ま、ちょっとした怪しい噂だな」

「で、でもそういう噂は大抵ダンジョンか異世界絡みだって…」

「『大抵は』な。そうじゃないものも…中には存在するかもしれないだろう?私はそう思っている」

「それは…そうかもですけど」

「で、だ」


編集長は私の肩をポン、と叩くと


「君にはこの村に現地調査に行って欲しい」

「…え、あ、はい!?私がですか!?」

「他に誰が居るというのかね?ま、経費は会社で全部出す、ちょっとした旅行だと思って行きたまえ!」

「は、はいぃ~!」


…こうして私は、片田舎の怪しい村に赴くことになったのだ。

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ダンジョンライフ ~現代ダンジョン出現における文明の発展と弊害~ @yumebon

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