第25話 寝床

 わたしはなんでレイクと一緒にいたいと思ったのだろう。

 すぐにでもふかふかなベッドに帰りたいと思っているのに。

 どうしたのだろう。

 思考が散乱している。

「まあ、でもベッドも用意したし。今日はもう寝るか」

 日も落ち、焚き火のそばには大量の葉っぱがあった。

「これがベッド?」

「ああ。城のものに比べてたら全然だが、地面で寝るよりはマシだろ?」

「わたしは地面でも大丈夫だったけどね」

「……貧民ジョークは笑えないな」

「そうかもね。レイクももっと勉強した方がいいよ」

「努力する」

 レイクは苦笑を浮かべて葉っぱのベッドに座る。

 肌触りはあんまり良くないが、レイクが頑張って集めたのだ。断る理由はない。

 わたしは寝床に腰を落ち着かせて、水を飲む。

 これもレイクが用意してくれたもの。

 ちゃんと二人ぶんのベッドがある。

「これだけ集めるの、大変だったでしょう?」

「それは、そうだけど……」

 素直だな。

「少しは着飾らないと王様としては失格だよ」

「ははは。そう言われると耳が痛いな」

 レイクはそう言って焚き火に木をくべる。

 この枯れ枝もレイクが集めてくれていたらしい。

 わたしと言えば、ちょっとしたことで突っかかって喧嘩して。

 食べ物くらいは用意したけど、他は全部レイクに任せてしまった。

「大丈夫だ。大丈夫。明日には迎えがくるさ」

「ははは。地獄への迎えじゃないといいね」

「……貧民ジョークは笑えん」

 レイクは真面目な顔をして、わたしのとってきた果実を囓る。

「歯磨きできないから、虫歯になるよ」

「いいや、こっちの葉っぱで磨く」

 笹のような葉っぱを見せるレイク。

 得意げだ。

「そっか……。じゃあわたしも」

「ああ。使え」

 何枚もある葉っぱの一枚を渡してくれるレイク。

 もしかして何泊もするのかな?

 ぎこちない笑みを浮かべ歯をこするわたし。

 そんなかわいくない顔を見せたくなくて向こうを見る。

「明日はもっと行動範囲を広げて魚やサソリをとらえるか」

「そうね。あと葉っぱも」

「そりゃいい」

 レイクは笑うとベッドの中で欠伸をする。

 疲れて眠いらしい。

 ずっとわたしを守ってくれていたのだろう。

 それが今、分かった。

 わたしを大切に思っているからこその行動だったのだ。

「ありがとう、レイク」

 すやすやと寝ているレイクにぼそっと呟くわたし。

 正面きっていえるほど強くない。

 わたしはもっと素直になるべきなのかもしれない。

「でも、抜けているなー」

 わたしが寝たら、焚き火はどうする。

 南国とはいえ、夜は冷える。

 それに火を嫌う獣は多い。

 わたしは起きていて、貢献しよう。

 そう思った。

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