第20話 海水
「まずは海に入ってみないか?」
レイクがわたしの手を引く。
少し怖い。
「海水ってしょっぱいだよね?」
「そうだよ。なめてみるか?」
レイクが手で掬い差し出してくる。
ためらいを覚える。
でも好奇心の方が上回る。
ちろっとなめてみる。
「うわっ! しょっぱい……」
「塩水ですからね」
ペリーはモリを手に海に潜っていく。
「おっ! 今晩は魚か?」
ジオが嬉しそうにはしゃぐ。
「もしかしてペリーが魚をとるの?」
「ええ。ペリーは万能だから」
ジルがうんうんと頷く。
座学だけじゃないんだ。
意外なことを知った気がする。
「ほら」
レイクが海水をバシャッとかけてくる。
「なにを!」
やり返すわたし。
「ははは。それでいい!」
レイクは水を浴びせられているというのに嬉しそう。
まるでネコのじゃれあいだ。
「ボクからも行くよ」
ジルまで交じってきた。
じゃれあってくる。
海に入ると真夏の強い日差しが和らぐようで心地よい。
小気味良く揺れる波も適度な刺激を与える。
夏をすごすなら、海がいいかもしれない。
でも太ったからなー。
来年はもっと絞らないと。
マーヤは甘やかしてくるから、いけない。
みんなクッキーや砂糖たっぷりの紅茶を薦めてくるし。
わたしの体重を重くしたい人ばかりで困る。
お陰で今は38キロだ。
運動もしているから、重さの原因は筋肉かもしれないけど。
とにかく。
これ以上太りたくはないよ。
いいダイエット法ないかな~。
「さ。ボールの追加だ」
アレンはそう言いビーチボールをバレーのようにアタックしてくる。
かわしきれないわたしは顔面で受け止め、その勢いを殺しつつ、海に潜る。
「ア、アヤメ。大丈夫か?」
わたしは潜航しつつ、後ろに回り込む。
そして……。
「えい!」
その水着の紐を緩めてやった。
「ひゃん! 何するんだ!」
「それはこっちの台詞」
「ビーチボールって言うくらいだ。一般的だろう」
「そうなの?」
わたしは目を瞬く。
「いいから離れろ」
アレンが苛立った様子で紐を結び直す。
でも、
「膨らんでいる?」
「な、なんでもない!」
荒々しい足取りで沖の方に向かうアレン。
「アレン」
「分かっているよ。でもしょうがないだろ」
「あまり遠くに行くなよ」
アレンの気を遣うように話すレイク。
「俺は大丈夫だ。もう子供じゃない」
「分かったよ」
突き放すでも、肯定するでもない言葉、響きだ。
大人の扱いをしている。
ならわたしへの扱いは?
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